表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【6】恋人
122/140

116

まるで言葉を知らない子供みたいに───引き留める言葉も出てこなくて。


『────律花・・・じゃあ、な』


ただ呆然とその場から立ち去る兄の背中を────じっと見つめていた。 

「律花ちゃん!」


それが自分のことだと気づくまで少しかかった。

呼ばれた方に顔を向けるといつになく真面目な表情(かお)をした知哉さんが傍に立っていた。


(はるか)は?」

「あ、なんか・・・帰っちゃった」

自分の気持ちを見透かされないように笑ってみせると、なぜか知哉さんが少し表情を曇らせる。


「・・・そっか」

「それより知哉さん、頼と里桜は?一緒じゃなかったの?」

「あー、なんか二人連絡先交換とかしててさ。それより律花ちゃん独りの姿が見えたから気になって。」

「え・・・」

知哉さんのさらっと言った言葉が、胸に引っ掛かる。

 

連絡先・・・?

頼と里桜も小学生の時からの友達なんだし別にいいはずなのに────・・・もやもやする。


(心狭いなぁ、私。)


「・・電話してみます」

頼に電話をかけようと巾着からスマホを取り出す私に、知哉さんが言った。

「彼氏くんさぁ─────律花ちゃんのこと大好きだよな」

「は?な、なんですか急に」

「いや、俺にはない感覚だから新鮮だなぁって」

どこか遠くを眺めながら、知哉さんが笑う。


「知哉さんも、きっと現れますよ」

「え?」

「──“特別だ”って、思えるヒト」

今は“女はみんな同じだ”って思っているのかもしれないけど。

知哉さんだって、そういう存在に出逢えるはずなんだ。

・・・きっと。


「ありがとう」

知哉さんが嬉しそうに笑った。いつもみたいな作った感じではなくて───心からの笑顔で。

(そういう表情も、できるんじゃん・・・)


知哉さんにつられて笑顔になった、その時。

私の肩を誰かが後ろからつかんできて─────振り返る前に、それが頼だと分かった。


息を切らせてやって来た頼と、その後ろから下駄を鳴らして必死に追い掛けてくる里桜の姿。


「頼、里桜・・・」

「やっと見つけた!」

「律花ちゃん探したよぉ」

二人揃って息を整えてるのを見たら・・・少し───嫉妬した。


「じゃあ俺、悠のとこ行くわ」

「え?」

入れ違いにあっさり帰ろうとする知哉さんに拍子抜けしてしまう。

(あいつ)、今頃どっかで呑んでるだろうし」


(お兄ちゃん・・・・)


さっきの兄の言葉をまた思い出して、塞ぎこむ私の頭をぽんと撫でて知哉さんが言った。


「またね、律花ちゃん里桜ちゃん」

「あ、はい・・・」

軽く手を振る私の隣で、頼が不機嫌そうにぼそりと呟く。 


「俺のことは無視かよ・・・・」

「じゃあ、行こっか!」

気を取り直してそう明るく声をあげる私に、里桜がわざとらしく大きな声を出す。


「ああー!そうだ忘れてた!私、虎ちゃんと約束してたからそろそろ行かなきゃ!」

「「え?」」

「律花、また遊ぼうねぇ!赤下、感謝しなさいよね!」


頭がついていかなくて唖然としている間に、里桜もそそくさと居なくなってしまった。


(え、二人・・・・きり!?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ