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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【6】恋人
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112、映画デート

夏休みの昼過ぎ、私は駅前にいた。

今日は頼が部活が午前で終わりだから、これから待ち合わせて映画を観に行くことになっている。


昨日の今日だから、本当はどんな顔をして会えばいいのか分からない。

結局引き留めようとしてくれた舞さんをなんとかかわして、自分の家に帰ったけど。


(あの────瞬間が、頭から離れないよ!!)


「律花?」

一人で思い出して悶えていると、いつのまにか頼が姿を現していた。

バスケ部指定のジャージ姿に、勝手に心臓が反応してしまう。


「お、お疲れさま・・・」

「うん。てかごめん、着替える時間なくて」

直視できない私に、頼がすまなそうな声で言った。


「なんで?別に気にしなくて良くない?」

「・・・・そ、ならいいけど。」


私の言葉に、少し拗ねた頼。

もしかして、初デートだからとか────気にした?


勝手にそんな事を考えて、赤くなる私はもう重症だ。


(な、なにを喋ろう・・・・)


「・・・・」

「・・・・」


ぎこちない空気に押し潰されそうな私に、突然頼が噴き出すように笑った。


「なによ?」

「いや、別に。」

照れ隠しに睨み付けると、笑いながら頼が答える。


「笑わないでよ!」

「だって可笑しくて。俺ら、緊張しすぎじゃん?」


(・・・え?(より)も、なの?)


意外なことに驚いて顔を上げると、赤くなった顔を手で隠す頼の、やさしい眼差しが私を見つめていた。


(───一緒・・・・だ。)


私だけじゃないって思ったら、私も少し緊張が溶けて。

口元が緩む。


────ずっとずっと・・・・この瞬間が続きますようにって、そうひそかに願った。





「あ、頼じゃん!」


────だけど、願った途端にそれは崩れた。


「ちょっと、シカトしないでよー」


可愛らしいミニスカート丈のワンピース姿の西野さんが、高いヒールの音をコツコツと鳴らして頼に近付いてきた。


(・・・・夏休みなのに、こんな偶然ある?)

西野さんにはもう・・・・ずっと会ってなかったし───正直、会いたくなかった。


だって頼と西野さんは─────付き合ってたから。


さっきまでの幸せな気持ちが一気に地の底まで沈んだ時、私を隠すように頼が前に立った。

「見てわかんねぇ?邪魔なんだけど」

今までの頼からは考えられないくらい、女の子に対して冷たい態度だった。


「頼ったらこわぁい。挨拶ぐらいしてくれてもいいのに───ね、律花ちゃん?」


西野さんはそう言うと頼の横をすり抜けて、その後ろにいた私のすぐ横で立ち止まる。 


そして頼に聞こえないくらいの小さな声で、───言った。


「いいよね、家が近いってだけで好きになってもらえて」

「そ、」

(そんな・・・・こと、ない)


「頼の隣に住めてたのが私だったら、今だって私と付き合っていたはずなのに」

苛立ちをぶつけるみたいにそう吐き捨てて、西野さんは立ち去った。


(そんなこと、ない・・・・)

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