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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【6】恋人
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『────ところで夜も遅いし、律花、自分の部屋で寝たかったら帰って寝てもいいよ』


私の心は、頼に支配されていて─────頼の言葉に、心が全部反応するんだ。


「・・・・っく」

緊張の糸が切られたみたいに、涙は止まらなくて。

涙を止める方法は、思い付かなかった。

「律花・・・・泣かないで」


こわれものを扱うみたいに、そっと─────頼が自分の腕の中に私を包み込んだ。すっぽりと頼の身体に包まれて、私は息をするのも忘れていた。


「俺・・・・なんか、嫌なこと言った?」

頼の声が、頼の胸の音と一緒に聴こえて。

ううん、と声を出すのも恥ずかしくて、ただ首を横にしか振れない私に頼が少し困ったように笑う。


「・・・そっか」


心臓がバクバクと激しく音をたてて苦しい・・・。

心臓が壊れてしまいそう。

なのに不思議と─────心地よくも感じていた。


「嫌なことあったら、話して。律花はいつも自分の中で解決しようとするから」


頼の言葉に胸が熱くなる。頼は────いつも優しい。


そっと顔を上げてすぐ目の前の頼を見上げると、頼がそっと私の頬に手を伸ばす。涙のあとをそっと拭いながら。


「・・嫌?」


小さくそう訊ねる頼に、私は答える代わりにそっと目を閉じた。

心臓が、ギュウッと甘く締め付けられる。


キス、される─────・・・・そう思って。


頼の吐息を口元に感じたその瞬間────。




「たっだいまぁ!・・・え・・・あら?」


元気よくリビングに姿を現したのは─────頼のママ、舞さん。

「舞さん、お、お久し振りです」

まだドキドキが鎮まらない心臓を押さえながら、とりあえず立ち上がって挨拶する。


「え、ちょ・・・うそ!?やっだー!?

律花ちゃん?こんなにキレイなお嬢さんになってぇ!」


久しぶりの再会に飛び上がるほど喜んだあと、舞さんが何かに気がついたように私の顔をまじまじと見つめる。


「・・・・って、何泣かせてんのバカ息子ー!」


「あ、」

違うんです舞さん・・・・という私の言葉は間に合わず、舞さんの鉄拳が頼の頭上に振り下ろされた。


「っってぇ!!!!」


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