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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【6】恋人
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『それ────やきもち、ですか?』

『デスネ。』


自覚はあったのに、────頼は知哉さんに嫉妬してるって。

「あの人のこと、気になるの?」


頼にそうポツリと言われて、私はハッとして反応する。


「ち、違うって。そんなんじゃないから」

「・・・“いろいろあった”って、言ってたじゃん」

「それは───私の口からは言えないけど・・・・」


だって、それは里桜の話だから。

私は当事者じゃないから、勝手に話すことは出来ない。 


だけど目の前の頼の表情が不安げに曇って、胸が締め付けられる。

暫くして、頼が俯いて静かに口を開いた。


「・・・・・昨日、」

「ん?」

「悠くんに会って、向こうで一緒にプール行ったことは聞いた」

「・・・そっか」

「俺は、律花の口からそんなこと何も聞いてない。」

「・・・・ごめん」

拗ねた口調の頼に、私は素直に謝る。


向こうにいる間、お兄ちゃんとの再会とか里桜の気持ちとか────本当にいっぱいいっぱいで。


「────律花のことは信じてるけどさ。だけど何も話してもらえないと不安になる。」

「うん。言いそびれてごめん。」

いつのまにか、頼との距離が近くて。頼の目を見れずに顔をそらしてしまった。


「試合・・・・残念だったね」

「うん」

「次は応援に行くよ・・・多分」

「多分てなんだよ」

少し元気を取り戻した頼が、笑った。


「だって迷惑じゃない?部外者が────」

「律花は部外者なんかじゃない。」


頼が真剣な眼差しで、私を見つめながら言った。 


「───俺の彼女だから」

その瞬間・・・・心臓が全部盗られた気がした。


(意識、しちゃダメなのに。頼のこと、男として意識しちゃう)


このままじゃ、気まずい。

頼は何もしないと言ってたけど“恋人”なんだし、二人きりだし。


これ以上ドキドキさせられたら、心臓がもたない!


とりあえず話題!

話題を探さないと!


「あ!明日、映画行くんだよね?」

「何か観たいのある?」

「こないだDVD借りてきた洋画の続編は?」

「良いね」

普通に会話できて、少し落ち着きを取り戻していた私に頼が言った。


「────ところで夜も遅いし、律花、自分の部屋で寝たかったら帰って寝てもいいよ」

「・・・え・・」

殴られたような、ショックが私を襲った。


「や、さっきはさ。あの悠くんの友達といるのが嫌でつい連れてきちゃったけど」

「・・・・・」

「別にあの人と同じ部屋で寝るわけでもないし、こっちで寝るのは律花も嫌でしょ?」


私も頼に会いたかったし、話したかった。

話せたから満足なはずなのに、“帰ってもいい”と言われた途端に、その言葉が突き刺さったみたいに。

───どうしようもなく寂しくなった。


「・・・じゃないよ」


(まだここに居たい・・・って、思うのは迷惑?)


「律花?」


────涙が溢れて、止まらなくて。


「え、ちょ・・・律花ちゃん?」


(私、どんどん我儘になっていく・・・・)

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