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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【5】兄妹
111/140

106@頼視点

『ちょっと、いろいろあって』

律花の沈む声が、ずっと頭から離れなかった。

 

(───“いろいろ”って?) 


気になってるくせに言葉を濁した律花に、────意気地無しの俺は聞けなかった。

部活帰り律花の家の前に差し掛かると、青島家の門を入っていく人が目にとまって思わず立ち止まる。


(────あれって、もしかして・・・・ )


見覚えのある後ろ姿、だけど雰囲気が違う気がして・・・・俺は半信半疑で声をかけた。


 「─────悠くん?」


振り返ったその人が、俺を見て一瞬怪訝そうにする。


「────ああ、頼か?誰か分からなかった」

そう言って笑う悠くんは、俺の知ってる悠くんとはどこか違う気がした。


高校生の時は、短髪だったからか?

あんなに爽やかだったのに、今の悠くんは無精髭に長い髪。

正直、似合わない風貌だった。


「背、伸びたんだな。チビだったのに」

「チビって言うなよ」


俺に近づいて背丈を比べながら悠くんが言った。

悠くんに背が追い付いたことが分かって、嬉しくなる。


────悠くんは、俺の目標だったから。


「律花ちゃんなら、いま留守だよ」

「知ってる、向こうで会ったからな」

「え?」


(会った?“向こう”って────まさか。)


「・・・笹野の別荘で?」

「そう里桜ちゃんのね。驚いたよ、まさか遭うなんて思ってなかったから」

悠くんが、複雑な笑顔を浮かべる。


「そう、なんだ・・・・」


まるで頭を殴られたようなショックで、クラリとした。



『いろいろあって』の色々は、悠くんに会ったこと?

それなら、なんで話してくれなかったんだろう?

俺だって悠くんのことは昔から知ってるのに。

なんでも、話して欲しいのに。



「律花と付き合ってるんだって?」

「あ、」 

悠くんの言葉に、ドキッとした。


聞いたんだ?

身内にバレるって、なんだか気恥ずかしいな。

まぁ、悠くんは俺の気持ち知ってたから今さらだろうけど。


「順調?」

「さぁ、どうだろ」

照れ隠しにそっけなく返すと、悠くんが笑った。

「は、なんだそれ」


「まぁ、良かったじゃん」


そう言って、俺の頭をぐしゃっと撫でる。昔したみたいに。


「ガキ扱いすんな」

「ガキだろ?まだまだ」

俺が頭の手を払い除けると、悠くんが真剣な声で言った。


「律花泣かせたら、マジ許さないからな」


(そこは変わってないんだな・・・・やっぱり)


悠くんは、ずっと離れてても小さい妹の律花のことが大切で。

律花は昔から、そんな優しい悠くんのことが大好きで。



俺はそれを、少し寂しい気持ちで眺めてた。

律花も、悠くんも、俺と仲良くしてくれていたけど。

兄弟みたいにいつも一緒にいたけど。


やっぱり血の繋がりには勝てなくて────二人の間には、入りきれない絆があった。


「うん。大切にする」


律花にも悠くんにも絶対言わないけど、俺の理想像は悠くんだ。


俺は悠くんみたいな、完璧な高校生になりたかったんだ。

律花の憧れてる、悠くんみたいに。

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