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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【5】兄妹
108/140

103(後)、@里桜視点

────()ってしまえば、全てが終わるから。


この不毛な想いも、今までの関係も。


全てが終わるから。


だから言えないままだったのかも、しれない。




「好きです、悠さん」

私の気持ちを聞いて、目の前の悠さんが目を丸くした。


(うん。当然の反応、だよね・・・・。)


妹の友達だとしか思ってもない子に突然そんなこと言われて驚かないわけないもん。しかも、8年ぐらい会ってもなかったのに。


(無謀で不毛────。)


だけど、私の気持ちを知らないまま悠さんが放つ言葉の一つ一つが、たまらなく辛かったから。




────どうしても、言わずにはいられなかった。


「え・・・・里桜?どうしたっ?」


私の涙に気づいてくれた律花が、駆け寄って私の肩に手を置くと悠さんを睨み付ける。


「ちょっとお兄ちゃん、里桜泣かせないで!」

「律花、違う────」

「え?でも・・」

「違うの、ちょっと目にゴミが入って」 


そんな言い訳の定番に、苦笑してしまう。

どこまで醜態を晒すんだろう私・・・今すぐ消えてしまいたい。


「律花、里桜ちゃん借りるわ」

「は?」

律花の不機嫌そうな声とほぼ同時に、私は悠さんに手を引かれた。


「は、悠さん?」

「────少し、話そうか」

こちらを向いた悠さんが優しい瞳で私を見下ろしていた。

こんなときまで、私の心臓はいちいち動悸を早める。


(重症だわ)


悠さんに連れられて少し歩くと、キャンプ場のベンチがあった。

悠さんがそこにゆっくり座り、私はその隣に少し離れて座る。


「───ごめん、さっきのって本気・・・・なんだよね?」


「意味わかんないですよね、すみません」

「謝ることないよ。まぁ、正直思いもよらなくて驚いたけど」

足の上で手を組んだ悠さんが、照れたように少し笑った。 悠さんの笑顔が、私の心臓をぎゅっと掴む。


「私、小学生の頃からずっと悠さんが好きで─── 」

伝えたい想いは儚くて、声が震えた。


「うん、ありがとう」

悠さんが微笑んで私の声にそう被せた。私はそれを察して口を閉じる。

「ありがとう、こんな美少女に告白されるなんて光栄だよ本当」

「・・・・・ 」


ダメなんだって、思い知らされる。

────私の気持ちは伝えることすら許されないんだって。


「私じゃ、付き合って貰えないですか」


悠さんを困らせてみたくて────少しでも反応して欲しくて。

この期に及んで悪あがきする私は本当に性格が悪い。


(もう、結果はわかってるくせにね・・・・)


「俺なんかより、里桜ちゃんには相応しい男がたくさんいるよ」


そうやって大人の対応で私の告白を流そうとする悠さんが、嫌だった。


私の想いは、そんな子供なモノじゃないんだよ?

伝わってますか?


───私の本気、伝わってますか?


「悠さんがいいです・・・・」

隣に視線を向けて、悠さんを見つめると困った表情で悠さんが笑う。 


「────悠さんが、好きなの・・・・」

「何処が?」

「え?」

「俺の何処が好きなの?」


笑顔のままなのに、少し声色が冷たく感じた。


「・・・・優しいところ、です」

責められてるみたいに感じて、私の声は小さくなる。 


「は、悠さんはいつも優しくて───」

「そんなの、」

悠さんが、乾いた笑い声と共に言葉を繋いだ。


「里桜ちゃんが、俺の妹(律花)の大切な友達だからだよ」


ショックで言葉を失った私に、悠さんは微笑む。残酷にも、私が好きな笑顔で悠さんは続けた。 


「俺は君に、本当の自分を見せたことなんて一度もないから。だから本当の俺を知ったら君は、俺を軽蔑するよきっと」

「軽蔑なんかしません!私本気です。本気で────」

必死な私の声は、また悠さんに妨げられる。

「俺は、誰とでも寝るよ?里桜ちゃんなら意味わかるよね?」

「・・・・」


ソンナコト、イワナイデ。


「彼女は作らないけど、それはただ束縛とかがめんどくさいからで。女はヤれたらいつでも誰でもどうでもいいし」


─────イワナイデ。


「だけど君にはそういう感情すら持つことはないから。だから俺なんかにそんな勿体ない台詞(ことば)吐くの止めて、もっと良い男探しな?」

黙って涙を流す私の目元を優しく拭うと悠さんは、

「ね、軽蔑したろ?」と笑う。

 

・・・・悠さん、分かってないよ。

やっぱり私の気持ち、全然届いてないじゃない。

この涙は、軽蔑の涙じゃないのに。


なんで彼女作らないのか分かるから。

悠さんの気持ちが、分かるから。


(だって私の知ってる悠さんは─────そんな表情(かお)しないもん。)


でも、違う一面が見れて少し嬉しかったなんて言ったら───悠さんまた困るよね。

だからせめて、これだけは言わせてください。

 

「───それでもやっぱり悠さんが好き」

「里桜ちゃん・・・・」

参ったなぁと苦笑する悠さんに、私は目元の涙を全部自分の手で払う。


「大丈夫ですよ、もう付き合ってなんて言いません。」


笑おう。

涙なんて、やめよう。


明るく、笑顔で─────笑顔の私を悠さんに覚えててもらいたいから。


「律花のところに戻りましょう?心配してますよ」


だから、笑うんだ。


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