表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【1】律花と頼
10/140

10、休日

『大きくなったら、頼とは一緒にいられなくなるんだって』


砂場でおままごとをしながら、まだ幼い頃の私が言った。


『え、なんで?』

『分かんないけど、学校離れちゃうんだってお母さんが言ってた』

私の言葉に、頼は暫く手にしていたスコップを動かすことなく、何かを考え込んでいた。そして、ふと顔を上げると目を輝かせて、“いいこと考えた!”と言った。


『じゃあ僕、律花ちゃんと結婚する』


『え?』

『そしたらずっと一緒にいられるでしょ?』


“結婚”したら、ずっと一緒にいられる。

そう教えてくれたのは、お互いの母親だった。


(そっか。それがいい。)


『―――だめ?』

不安そうに上目遣いで見つめてくる頼に、私は笑顔で答えた。


『いいよ、結婚しよ』


そこで“誓いのキス”をした。

それが、私のファーストキス。


だけど、目を開けると目の前にいたのは幼い頼ではなく、高校生になった頼だった。


『だったら、嫌がらせする。』

(え?)


至近距離でそう言った頼が、私に意地悪な笑顔を向けたところで目が覚めた。




(なんて夢…―――)


寝起きの悪い私は、ボーッとしながら重い頭を起こし、片手で支える。


―――ずいぶん昔に、同じ会話をした気がする。


だけど、それが夢の中だったのか、過去の記憶だったのかまでは思い出せない。


―――確かなのは、夢の中の頼が途中までは私の好きだった幼馴染みの“頼”だったこと。


(とりあえず、今日が土曜日で良かった…)


―――休みなら、頼と関わることもない。


高校に入って頼と再会してから、私の頭の中は寝ても覚めても頼のことばかりだ。せめてこの土日ぐらいは、のんびりリフレッシュでもして、(あいつ)のことなんか考えないようにしてやる!


ようやく目が覚めて、そう思いながらベッドから足を下ろす。

だけどその瞬間ふと脳裏をよぎったのは、昨日の…頼の表情(かお)



『赤下くん。離して。』


――――わざと他人行儀に苗字で呼んだ私に、頼は傷付いた表情(かお)をした。


思い出すだけで、胸がぎゅっとなる。


(“あの時”と―――同じ…だった。)


『好きでもなんでもない。』


みんなの前で、頼が私に言い放った時。

あの時も、頼は傷付いた表情をしていた。



『“あの日”、なんで俺があんなこと言ったのか…とか、律花は一度も聞かなかった。』


頼は昨日、私にそう言った。まるで聞いて欲しかったという表情で。


(聞くわけないじゃん…)

心の中で悪態をつく。


『好きでもなんでもない。ただ、親同士仲が良いから一緒にいるだけで。』


――――そう言って、私たちの関係を終わらせたのは、他でもない頼だ。


頼はずっとそう思っていたんだと。

私はあの瞬間まで、それに気づかなかった。

独り善がりだったことに気付いたときの自分の愚かさは、二度と思い出したくない私の黒歴史だ。



(“なんであんなこと言ったのか”なんて聞いたところで、傷付くだけなんだから。聞きたくないに決まってんじゃん。)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ