女たらし
ータンク視点ー
俺は自分に自信があった。
顔は彫りが深く、髪は明るい茶色、身長も高く、筋肉もスタイリッシュにほど良く付いている。
剣術も並より上だ。
そして魔術に関しては、子供の頃から神童と噂されるほどだった。
自他共に認める所謂50年に1人の天才だな。
家柄もそこそこだ。
コユーア家に代々仕え、魔術師指南長の大役を歴任している。
そして女にモテる。めちゃくちゃモテる。
貴族からは求婚に次ぐ求婚、平民庶民からは高嶺の花として羨望の眼差しで見られ、
主であるビージー様には娘が生まれたら婿入りせよと言わしめるほどモテる。
そのせいで、魔術師団の部下の子にちょっかいをかけまくってたら流石に首になったりもした。
まぁ、史上最年少で、22歳で魔術師団長になったという肩書きもできたし後はビージー様に仕えて、あわよくば婿入りして家督を継いで、悠々自適に老後を過ごそう。
当たり前のようにそう信じていた。
そんな時期が僕にもありました、と言わせてもらおう。
まさか、5歳に満たない子供に忠誠を誓って弟子入り。
あまつさえ同じテーブルで向かい合って紅茶を頂かせてもらい、遠い目をしながらこんな事を考えるとは夢にも思わなかった。
まあ、あんな人外な才能を見せられちゃ嫉妬すらできねぇ。
しかも、コンジキ姫と称えられる丸っきり女みたいな華奢な男の子ときたもんだ。
ありゃぁ神様に溺愛されてるとしかおもえねぇ。
「・・ンク!タンク!」
シャイナがジト目で俺を睨みつけていた。
このメイド、胸もでかいしスタイルも上々だがどうにも口説く気にならねぇな、キキ様以外興味なしって顔に書いてある。
「何だよシャイナでかい声だして、朝から俺みたいなイケメンを見て生理でも始まったか?」
そんな軽口を言うと、キキ様の後ろに控えていたコロナがスッとフライパンをシャイナに手渡していた。
シャイナも俺も、キキ様と同じテーブルでモーニングティーを飲ませて貰っているのに、こいつだけはいつもキキ様の後ろに控えている。
なんでも、頑なにキキ様の誘いを断わってそうしているらしい。
なんて頑固でアホなやつだ、こんな美味い紅茶は貴族でもそうそう飲めないと言うのに。
ちなみにコロナは俺の弟子でもあり、妹みたいな存在だ。
孤児だったこいつを俺が引き取りキキ様の護衛として生きれるよう、ビージー様に頼み込んでやった。
今はまだ子供だが大人になれば相当な美人になるだろうが、妹には女としての興味はねぇ。
だいたい俺が普通にスキンシップをはかっても虫を見る目で舌打ちをかましてくる。
嫌われてるのか?いや、ありえねぇな。
「冗談だよ!冗談!それより何だよメイドがでかい声だしやがって」
「キキ様が話しかけているというのにボーっとして気付かないでいたから呼んだのですよ!
妹であるコロナ様はこんなにも立派にキキ様に尽くしているというのに・・。
不忠です、自害なさい。」
おいおい。どんだけ俺に厳しいんだよこのメイド。
「やっ、これは失礼致しましたキキ様!まだまだ未熟なもので、少々失念しておりました!」
と、すぐさま椅子から降り、片膝をついて頭を下げてキキ様を恐る恐る見上げてみた。
「アッハッハッハッハ!!」
何が面白かったのか美しい顔を豪快にのけぞらせて笑っていた。
しかし、そんなそぶりにもまた気品があり色気さえ漂った。
シャイナは俺の手前、ポーカーフェイスを気取っているが口元からヨダレがしたたっている。
何はともあれキキ様にしては珍しく声をあげて笑ってくれたし、怒られずに済んで良かったぁ。
「無礼の程お許しください。」
「あー、笑った笑った。
タンク、気にするな。ワタシはお前とシャイナの掛け合いが毎日の楽しみなのです。飄々としたお前が好きだ。」
ぅわー。なんてハッキリ物を言うお人だ。
男でもいいから婿入りさせてくれないかな。
そんな事を思って、ほっこりとしている一瞬の間に
「タンク、ワタシが持つ黄金の瞳とはなんだ?
どう言った意味をもつ?」
唐突にそう聞かれた。
頭に直接声が響いたような錯覚に、思わず耳を触って確かめてしまった。
しかし、何という話術。
自然なのか計算なのか、剛腕の政治家のように老練なタイミングのよさ、それでいて聞きたい事を簡潔に真っ直ぐとぶつける。
やましい事がないのに背筋に冷や汗をかき、同時に、この方には絶対にウソをついてはならないと悟った。
「分かりました。では、説明致します。」
そういって俺達4人で黒板のある会議室に移った。
この屋敷はホントなんでもあるな。
会議室に移った俺はキキ様に知っている限りの情報を話した。
まず、長い歴史を持つこの世界の始まりに、1人の神がいた。
その神の名はテラス。
神は全知全能であり、今尚、この世界ただ1つの宗教である。
神は世界を作った後、自分の力を分け与えた5人の子供を作った。
それが五大国を建国した5人の王である。
その5人の王は皆、金色に近い髪と瞳をもっていて、第一子から順に純粋な金色をしていた。
金色に近いほど、神より授かった力は強いものとして現れ、
第一子のソアラ、第二子のジギリは特に力が強く才能溢れる王だったらしい。
無詠唱魔術もこの2人しか使えないものであった。
そして五大国の王家には何百年かに1人の割合で、金色に近い髪と瞳を持った者が稀に生まれる。
だが、いくら名門貴族で遠からず血の繋がりがあるコユーア家でも、分家でそういった事例は皆無であった。
そして、稀に王家で生まれた者も、金色に近いと言っても赤が混じっていたり青みがかっていたりと、キキ様のような完全なる金色は長い歴史の中初めてである。
ただ、キキ様の存在と実力や才能を、王家や他国に知られれば良からぬ事が起きるかも知れないと黙っていた。
2日後の剣術試合にも出場すると聞いて、慌ててビージー様を説得したが
「あんなに可愛い愛娘……いや、息子を自慢せずにどうするか。何かあるならばお前が守れば良い。」
との返事を聞いて諦めた。
そうやってキキ様の質問と事の顛末を説明すると。
「で、あるか。」
と真面目な顔のまま静かにそう呟いていた。
そんなこんなで久しぶりの休日を説明に使ってくれた礼だといって、見た事もないほど豪華な夕食を頂いて、1日が終わりを告げた。




