初!魔物!
ーーーーーーシャイナ視点ーーーーーー
「魔攻剣の修業、今の所進んでるのは元々魔法が得意で剣は並のタンクと、剣も魔法も初めてだが身体能力が高く本能型のタラムレェインか。
そして1番進んでるのは意外にも万能型だったシャイナとわな。
ワシが1番遅れとるなぁ。」
「ダージー、こう魔力をボッと出してシューッと纏めてブンッと剣に移すイメージだにゃ。」
「…いやわかんねぇよ。」
「ダージーもアタシも魔法は苦手みたいね!でも絶対魔攻剣は使えるようになりたいわ!タラムレェインは実は魔法が得意なのかな?」
「いえ、シルダ様、獣族は元々人族より魔族に近い種族ですから獣族自体が魔力が高いのですよ。かといって魔法が得意な訳ではなく、自然と魔力を身体能力に変換しているらしいのです。」
「へぇー、そうだったんだ。自分でも知らなかったにゃあ。」
「……それにしてもタラムレェイン。その、にゃ、ってのは癖なの?キキ様と話す時はそんな喋り方じゃなかった気がするけど?」
「癖だにゃ。敬語を使うと出にゃいんだけど…キキ様に嫌われたくにゃいから。コロナはこの喋り方を気に入ってくれてるにゃ。にゃ?コロナ?」
「私はいいと思う。多分キキ様もお気に召すと思う。珍しいものが好きだから…。」
確かに私もそう思います。
しかし、タンクとキキ様は向こうの方で土壁なんて作って一体何をしているんでしょうか…。
キキ様が危ない魔法を使ってないか心配になります…。
タンク、何か不手際があれば承知しませんからね!
その時はこのフライパンでベコベコに…あ、魔攻剣みたいにフライパンにも魔力を通せないかしら?
でもさすがにタンクも死んじゃうわね。残念。
「シャイナ、そろそろ日が暮れてきたぜ?もうやがてタンク達を呼びに行って屋敷に帰った方がいいんじゃねぇのか。
ん?何か…夕日の色変が変だな?」
「本当だぁ金色だ…何かキキ様みたいな色だにゃ?」
「そうね!何かキキみたいな金色よね…あれ?…こっちに来るわ!凄いスピード…みんな警戒!かまえて!」
私達は剣をかまえて臨戦態勢をとり夕日のような光に向けて警戒心を露わにした。
空を飛んでくる魔物は総じて強い傾向にあると聞く…ロックドラゴンか、アンデッドデビル…もしくはドラキュラなのか…。
どれも上位の魔物にあたる。
もの凄いスピードで私達の上空まで来た光のソレは、何故か心に沁みるような声で高笑いをあげてゆっくりと目の前に降り立った。
キラキラと光る黄金の羽をヒラリヒラリと周りに散らしながら、心地の良いそよ風を私達に浴びせてその翼は動きをとめた…。
その姿はまさに神々しく、同じ空間で息を吸うだけで心が洗われていた。
私達は自然に何か分からない感度を憶えて泣きそうになっていた。
「どうだ!驚いたかお前達!俺は空を飛べたぞ!ハーッハッハッハ!」
「キ、キキ様…?」
「ハッハッハ!驚いてるな?その顔を見たくていきなり飛んで来たのだ!反応が予想以上で嬉しいぞ。」
キキ様はやっぱり天使だったのです。
光り輝く黄金の眼と髪とそして翼を持っていて空を飛んできたのです。
私は何も喋れずに小刻みに震えていた…そして上着はビチョビチョに濡れていたのだ。
タラムレェインには後で少し
うわぁ…
と、引かれてしまったみたいだけど仕方のないことなのです。
だってキキ様が天使になって現れたのだから、ヨダレくらい溢れるでしょう?
ーーーーーーーーーーーー
翌日。
「みんな聞いてくれ、今日は岩山の上に実態調査に行く。そこでワタシと共に岩山に行くメンバーを発表する。」
「岩山!?森を通って行くの?魔物を倒しながら辿り着けたとしても行って帰ってくるのに2週間くらいかかっちゃうわよ?危ないし…」
「シルダ、何のためにワタシが空を飛ぶ魔法を編み出したと思ってる?飛んで行くのだ。」
「でも、ワシらは空を飛べませんが…」
「問題ない。ワタシさえ飛べればあとは俺に掴まっていればいい、翼と風魔法で3、4人くらいまでなら上手く飛べるさ。」
「キキ様の体に掴まって……(ゴクリ…)
はい!私絶対に行きます!死んでも化けてでもついて行きます!」
「あ、ああ。シャイナは元からメンバーに入れているから連れて行くつもりだ…」
やる気はいいが…飛んでる時に頼むから俺にヨダレを付けてくれるなよ…
守りはシャイナで後は攻撃と経験だな。
「メンバーは守備にシャイナ、移動と攻撃にワタシ、先導とサブアタッカーに経験のあるタンク、サポート兼護衛にコロナだ。
残りのシルダ、タラムレェインは修業の続き、ダージーは2人の護衛兼、修業だ!」
『かしこまりましたっ!!』
そうして俺は翼を広げてタンク、シャイナ、を両腕に掴ませ、コロナをお姫様抱っこする形で飛びたった。
コロナは無口のまま顔を耳まで真っ赤にしながらも大人しくしていてくれた。
空を飛ぶ事になれていない3人は最初は怖がっていたが、次第に慣れてきた様子だったのでタンクに周囲索敵の魔法で警戒させてシャイナにいつでもシールドを張れる準備をさせていた。
空を飛んで行くと岩山まで10分程で着き3人を降ろして近くの石に印を付けておく。
辺りを見渡すと下に広がる森の向こうの草原にダージー達がいてこっちに向かって手を振っていた。
「おお、シルダ達があんなに小さく見えるぜ!空を飛ぶってスゲェなぁ。」
「素晴らしいですね、片道一週間を10分で着くんですから。」
「…タンク、お前の周囲索敵の範囲はどれくらいだ?」
「えっと、ざっと半径50メートルくらいですかね、まだ魔物の反応はありません。」
「ふむ、ならば50メートル先から放出系の攻撃をされたら反応できないというわけか。」
《ドッッガァアーーーンッ!!!》
「……なっ!?」
「敵は80メートル先から岩を投げてきているぞ。今、岩弾で撃ち落としたが、接近してきている。
さて…シャイナ!コロナ!初の対魔物戦だ、心してかかれ。」
「はっ!!」
「それからタンクは手を出すな、王国魔術師団長だったお前は魔物と戦った事があるんだろ?ヤバくなったらワタシが出る。」
「はっ、かしこまりました!(しかしキキ様も魔物は初めてなはずだが…?)」
シャイナが全員を囲える広いシールドを張り、コロナが双剣を抜いてかまえる。
まだ、シールドは薄いか…だがさっきの攻撃ならコレで充分だろう、コロナはまだ半分も魔攻剣をマスターできていないか…相手次第だな。
土煙りをあげながら現れた魔物は体長4メートル程のロックマウンテンだった。
全身が岩でできていて魔物の特長で目がすべて赤く、太い腕が4本も生えている、所謂ゴリラの化け物だな。
どうやら久しぶりに俺達餌を見つけたようで、岩のくせにヨダレをダラダラ垂らしている。
「はっはっは、シャイナ、あの岩ゴリラはお前とキャラが被ってないか?」
「なっ!キキ様それはあまりにも酷いです…私はあんなに硬そうですか?」
そこかよ…。
そんな冗談をいっているとロックマウンテンは近くに落ちている巨大な岩を持ち上げようとしている。
その隙をついてコロナがロックマウンテンの脇腹をめがけて剣を振り下ろす。
「おお、いいタイミングだコロナ。だが…」
ロックマウンテンに剣は当たったがやはり岩でできているらしく
《ギィインッ》
と音を立てて弾かれていた。奴はまるで気付いてもいない素振りで岩を持ち上げて、俺達に投げてくる。
「シャイナ、無理なら守ってやるぞ?(ニヤリ)」
「キキ様に守ってもらえるのも至上の喜びですが、今は大丈夫です。」
シャイナのシールドはビクともせずに岩を弾く事ができた。
ふむ、守備は大丈夫か…だが攻撃はまだ修業が必要だな。相手の属性とも相性が悪かったな、剣と岩ではな…。
ロックマウンテンは体重が重いのか動きが遅くコロナは5、6回程斬りかかるが少し傷が付く程度だった。
「コロナ、今のお前では勝てないようだ。相性も悪いな、良くやった、退がっていろ。」
「はっ…申し訳ありません…」
「なに、落ち込むこたぁねぇぜコロナ、あいつは中位くらいの魔物に分類されるんだ。8歳弱でそこまでやれりゃ上出来の上出来だぜ。」
「……兄さん…ありがとう…。」
「ではワタシが片付けるか。」
俺は右手の掌に10個のオリジナル岩弾を作って浮かべ、ロックマウンテンに放つ。
岩弾がロックマウンテンに当たり、そして当たった箇所で爆破をおこす。
俺は土魔法と火魔法、風邪魔法と雷魔法を組み合わせて、着弾するとともに傷口で爆破するように岩弾を改造していたのだ。
改良は日本人の真骨頂だ。元だけど。
ロックマウンテンは跡形も無く砕け散り、1つの鉄鉱石が落ちていた。
「すっ…すごい…」
「…さすがでございますねキキ様。」
「私も早く強くならねば…」
「だからキキ様は例外だってコロナ、お前は充分強いんだからよ。」
「コロナも次は倒せるよう頑張れ。初めての魔物に臆する事無く挑んだのは良かったぞ?
ん…なんだコレは??」
「ああ、岩系の魔物は鉱石や金や銀、ダイヤなんかを媒体にして生きてるらしくて、倒すと鉱石が手に入るんですよ。上級の魔物になるにつれて高価なものが手に入ります。
ロックドラゴンなんかは大量の金塊やダイヤが手に入るらしいですけど伝説的な強さで誰も挑みませんけどね。」
「ほう…では魔物を狩って生計を立てれるな。」
「実際にそんな奴らは多くいますよ。
冒険者として冒険者ギルドに登録してチームを組んで魔物を狩ります。
冒険者ギルドは常に魔物を狩る依頼を出してますから依頼の魔物を狩ったら報酬が貰えるし魔物の出した鉱石等も買い取ってもらえます。」
「では、明日は冒険者ギルドに行くことにするか、今日は引き続き周囲を警戒しながら夕暮れまで岩山の調査を続行する!気を抜くなよ。」
そうして俺達の初めての魔物との戦いは幕を閉じた。




