真の目的
武器屋を出た6人はキキとシルダのはしゃぎっぷりに付き合わされてクタクタになっていた。
6人は外が一望できる喫茶店に入り、街を歩く人々を見ながらケーキや紅茶を味わっている。
「キキ様、そろそろ屋敷に帰りましょうか?武器も揃えましたしもう目的達成でしょう…なぁ?タンク」
「ああ、そうだなダージーさん。そろそろ帰らないと日も暮れてきたし……」
「ダージー様、タンク?もしかして『女子の買い物に付き合わされるのはウンザリだ』なんて思ってませんか?キキ様は男性ですよ?」
「「そ、そんな事思ってないぞ!!」」
「タンク、ダージー安心しろ、最後の目的を果たしたら帰る。」
「最後の目的ですか?スミマセンまだやらなければならない事があったとは…ワシらはまた考えが足りませんでした!して、最後の目的とは?」
「うむ、それは……猫だ!」
「「……ねこ?」」
「うむ、剣術大会の時にシルダの相手に獣族の猫娘がいたのだ。猫の耳や尻尾があっての、皆は本物だと言うが実際に自分で触って確かめてみたいのだ。」
「「……。」」
「キキ、えらく興味持ってたもんね!猫がいいの?獣族には犬もいるわよ?」
「いや、犬でもかまわん。エルフの長耳も触ってみたいがな。」
「…キキ様……それが最後の目的ですか?」
「うむ。真実を確かめねばならん。」
ダージーとタンクはキキのギャップに困惑していたが『こういう所は子供なんだな…』と引きつった顔で苦笑いしている。
シャイナはうんうんと頷いているし、コロナは無表情のままでシルダはキキと一緒に一生懸命街中を歩く獣族がいないか探している。
この2人は気があうみたいだ。
少し街中を眺めているとタンクが声をあげた。
「いたっ!が…あれは…死にかけだな」
「なにぃっ!?」
タンクが指さすほうに全員が目をやると、ボロ雑巾の様な布キレを着て足を引きずっている4、5歳の猫娘がいた。
その首には首輪が付いていて鎖がのびている。
その鎖の先にはデップリと太った商人らしき男がいて、獣族の猫娘を無理やり引きずっている。
「なんだアレは?医者に連れて行ってるのか?」
「いえ、アレは恐らく奴隷の獣族でしょう、そしてあの男は奴隷商人かと。あの娘は死にかけているのでこの後山に捨てられるか……もしくは殺して埋めるのでしょうな」
「なにそれ酷い!医者にくらい連れて行けばいいのに!足も折れてるじゃない!」
「……ダージー、あの娘は買えるのか?」
「タダ同然で買えるでしょうが…やめておきなされ、すぐに死ぬでしょう。いくら上級治癒魔法を使える魔術師でも骨を治すので2日はかかります。死に至る病気までは治せません…だろうタンク?」
「そうだなぁ2日つきっきりで外傷は治せるが……死に至る病気までは無理だな。キキ様やはりやめておいた方がよろしいかと。」
「ふぅ。タンク、ダージー。お前達は屋敷に帰っておいていいぞ」
「えっ?それはどういう……」
「ダージー様、タンク、キキ様を見くびり過ぎですよ?キキ様は剣術大会のときシルダ様のご友人の骨折を治されました。そうですね、5秒くらいでしょうか。」
「……5秒…」
「タンク、ダージー!分かったら屋敷まで連れて帰ってこい!怪我に響かぬように背負ってな!」
「かっ、畏まりました!!」
「シャイナ、あの娘にあう洋服でも買って帰るぞ。シルダ、コロナ、何か欲しいものはないか?」
「いえ、ありません。お気遣いありがとうございます。」
「なに言ってんのよコロナ、焼き鳥食べたいって呟いてたでしょ!買って帰ろうよ!いいでしょキキ?」
「ははっ、コロナは焼き鳥が好きだったか、よいよい。買って帰ろう、ダージー達はさっさと行け!」
「ははっ!」
少し機嫌を悪くしたキキとコロナ達はそうして先に帰っていってしまった。
「ダージーさんよぉ、やべぇよキキ様怒ってたぜ?」
「ああ、まずいなぁ。結構睨まれたもんなぁ…しかし、あの顔も美しくて悪くなかったなぁ…。」
「ダージーさんあんた……マゾかよ…」
そんな話をしている間に奴隷商人に追いついた2人はその男に話かける。
「おいオヤジ、その娘は奴隷か?いくらだ?」
「え?はぁ、商品ですがこいつは死にかけで使えませんぜ?まぁ、買ってもらえるなら一万くらいで大丈夫でさぁ」
「悪いなオヤジ、じゃあ貰っていくぞ。ほらお嬢ちゃん背中に乗りな」
「……はい、ご主人様…。」
そう言う奴隷の娘の目にはまるで生気がなく、この世の全てを諦めていた。
それもそうであろう、この娘は後10日やそこらで死ぬ運命にあるのだから。
ただそこにたまたまキキ達がいたのだ、この奴隷の娘は今後どうなるのかわからない。
ーーーーーーーーーー
屋敷に戻りシャイナのいれた紅茶を飲んでいると獣族の猫娘を抱えたダージーとタンクが帰ってきた。
「帰ったか。」
「はっ、お待たせいたしました!」
猫娘をベッドに寝かせ、怪我の具合をみてみる。
魔力を目に集中させて治癒魔法の1つの診察をつかう。これはまぁ上級とまではいかないが中級の魔術にあたるか。
右足の骨折に左手の小指の骨折、肋骨のヒビに打撲数カ所と肺の病か……肺は病気としてもこの外傷はあの商人による虐待によるものだな……酷い奴だ。
1番の問題はこの眼か…生きる事を諦めているな、まぁ無理もないか。
じきに死ぬ病に自身は奴隷で常日頃の虐待という境遇ではな…
「猫娘、ワタシはお前の主人のキキだ、お前名前はなんという。」
「…はいご主人様…名前はタラムレェインです。」
「タラムレェインか…長いが、いい名前だ。
では、タラムレェイン、お前は死にたいのか?まるで生きる気力が感じられないな。」
「…私には家族もいませんし奴隷として一生を終える運命です…それに、買ってもらったご主人様には申し訳ないのですが病気であと僅かの命なのです。自分でわかります。」
「では、もし病気が治ればどう生きる。」
「…それは…奴隷として生きるしかありません。私は奴隷としてご主人様に買われましたので。ただ…叶うなら美味しいご飯をたくさん食べてみたかった…」
なるほど、奴隷はご主人様の所有物って事か。
戦国の世にも実際に奴隷はいたし、上杉なんかも聖人面して裏では奴隷を捌いてたしな。
この猫娘は性根も悪くないし俺達と共に修業させて俺の家臣とするか、命を助けてやれば忠誠心も芽生えるだろう。
「そうか、タラムレェイン、好物は何だ?」
「…肉です。ただ病気で食欲もないので…。」
「問題ない。シャイナ、厨房に今日はバーベキューだと伝えよ。」
そういって俺は上級治癒魔術をタラムレェインにかける。
といっても、上級治癒魔術では病気は治せないから俺のオリジナル魔法だ。
前に風邪を引いた時に自分にかけてみたが治せた事がある。
上級治癒魔術に俺の黄金の魔力を掛け合わせて土魔術の育成を混ぜたものだ。
育成とは麦の苗などの成長を促進する簡単な低級魔法だ。
といっても弱った苗を元気に戻す程度のものだが、俺がためした時は10センチ程の小さな枯れ木が5メートルくらいの大木にまで成長したのだ。
どうやら俺の黄金の魔力と莫大な魔力量が関係しているようだ。
火の魔法を使えば炎の色が青くなる事から考えて俺のこの黄金の魔力は魔法そのものを超密度、元々より高度に変換して使えるようだ。
タラムレェインに手をあてて治癒を開始すると彼女は俺の黄金の魔力に包まれて金色に光っている。
ダージーとタンクは口をあんぐりとあけてその様を見ているがシルダとコロナは
「キレイだねコロナ!」
「ああ、さすがキキ様だ。近くにいる私達まで温かく癒されている。」
と嬉しそうにしている。
さすがに完治には5分程かかり、タラムレェインは自分の骨折や胸の痛みが消えた事に驚きが隠せないようだ。
「具合はどうだタラムレェイン?」
「まるで嘘みたいに何ともありません…ご主人様は神様だったんですね!ああ、なんとお礼をすればっ…」
「礼はいらん。お前はこれからワタシの護衛兼、弟子として雇い、もちろん給金も出す。
今日よりタラムレェインは奴隷ではなくワタシの家臣だ。皆もわかったな?」
「「「畏まりました!」」」
「このご恩は例え命が尽きても忘れません!この命はキキ様の為に!」
そしてタラムレェインを風呂に入れ、新しく買った服を着せてバーベキューを楽しんだ。
タラムレェインは常人の10倍程肉をがっついて食べて歓喜の涙を流していた。
そして最後に耳と尻尾を触らせてもらい、本物である事を確かめた俺は明日からの修業にむけて早めに寝たのであった。




