下準備
コユーア領に帰ってきた俺達は3日間の休養をとり、留守番だったタンクとダージーにディラファンの件を説明し、これからの事を話した。
「そうゆう訳でダージー、タンク、これから数年の間は修業と未開地の開発になると思うが付き合ってくれるか?」
『もちろんでございますキキ様!』
2人は一言の文句もなく了承してくれたので早速シルダを紹介する。
「キキの友達で、護衛で、剣の弟子になったシルダよ!アタシが一番弱いみたいだけど必ず追い付くからこれからよろしくお願いします!」
「おおー元気なお嬢さんだ。ワシはダージーだヨロシクな!」
「ヨロシク!アナタ熊みたいね!」
「……面白いお嬢さんだ。」
「ハッハッハ!ダージーさん言われてるよ!俺はタンクだ、キキ様の護衛兼、魔法の弟子でコロナの兄だ。将来が楽しみなかわい子ちゃんだな!ヨロシク!」
「へぇーコロナにお兄ちゃんいたんだ?なんかだらし無さそうね、コロナも大変なのね!」
「シルダ…分かってくれるか。ありがたい。」
「……ええー何か俺の扱い悪くねぇ…俺これでも元魔法師団長なんだけど…」
うむ、皆仲良くやって行けそうだな。とりあえず今日は昼まで自由にして昼に屋敷の正面門に集合するように命じた。
どうしてもやっておかなければならない事があるのだ。
「すまん皆、待たせたな。」
「いえいえ、あれ?シャイナも来たのか?」
「当たり前じゃないですかタンク、キキ様のする事行く所に全てに付き従うのが私の使命です。何か問題でも?」
「(うわぁマジかよ、じゃあ修業にも?)……いや、ノープロブレム。」
「キキ、早速皆で今から修業に行くの?」
「いや、今からこの6人でコユーアの街に買い物に行く。修業の前に揃えておかなければな。ところでワタシは初めての外出だ、そうだな髪と目はカツラで隠すとして……シャイナの妹として身を隠そう。」
そう言ってシャイナの手を繋ぐ。
「なっ……なんてご褒美っ!!きょっ、恐悦至極でございますっ!!」
シャイナは目を瞑り恍惚の表情で喜んでいるが、タンクが耳元で声をかけ現実に引き戻す。
「おーいシャイナ、街中でヨダレは垂らすなよ?」
「人がせっかく至福のひとときを噛み締めてるのに汚い声で耳が……。」
「(ねぇコロナ、タンクとシャイナさんていつもこうなの?)」
「(ええ、タンクの言葉は全て無視していいわ。)」
「おい!コロナ!聞こえてんだよっ!!」
「…チッ。」
そんなじゃれ合いをしながらも俺達は屋敷を出て街まで歩いて向かった。
屋敷から街までは歩いて15分くらいか、高級住宅街から街の中心まで伸びる広い石畳の道を進む。
だんだんと飲食店や販売店が見えはじめ、賑わいを増して行く。
「おお!コユーア領は中々に繁栄しているのだな。うむ、父上は名主のようだな。ダージー、良い武器屋を知っているか?」
「はっ!王国御用達の店があります、ちと値は張りますが」
「よい、ではそこに行こう。」
レンガ造りの上品な店構えをした武器屋が見え、その雰囲気によく似合う風体の男がダージーに挨拶をする。
ダージーは常連らしく片手を挙げて挨拶を返し扮装したキキとその一同を店に入れ武器を見て回る。
「ダージー、ワタシとコロナに細くて軽くて頑丈な刃渡70センチ程の双剣を。
この大陸で1番いい鉱石は極鉱石だったか?確か魔法とも相性がいいと書籍に書いてあったな。それを使った奴がいい。
それからシルダには130センチ程のソアラ流剣術にあった極鉱石をつかった剣を。
シャイナ、ダージー、タンクも自分にあった極鉱石の剣を見繕って買っておけ。それから予備に3本ほどな」
「キキ様のみならずわしらの分までのお心遣いには感謝してもしたりませぬが……それは無理にございますな。」
「……何故だ?」
「大変失礼ですが……タダでは物は買えませぬ。キキ様は屋敷から出られた事がない故、知らなくて無理もありませぬが」
「ダージーよ、主君に諫言する家臣は大事だ。顔は老けておるがまだ32歳。長生きしてワタシに尽くしてくれ。だがワタシもそこまで阿保ではないぞ?シャイナ!」
キキはニヤリと自慢気に笑ったつもりなのだろうが、家臣たちにはそれが堪らなかった。
極度の愛猫家が仔猫を見た時のそれに、更に有無を言わさぬ保護欲を足して混ぜたような気持ちになるのだ。
これも『テレスの再来』と言われるキキの力なのだろか。
そこでシャイナも何故か自慢気な顔で説明する。
「はい、キキ様に代わり説明させて頂きます。キキ様はコユーア領に帰って皆さんが3日間の休養をとっている間も綿密に動かれておいででした。
まず第一に当面の活動資金をお館様に借金なさりました。
コレはあくまで未開地開放までの資金として正式に借用書も書いております。
それからご自分も含め全員の戦闘スタイルを見直し修業にむけて計画なさっております。武器選びも厳選を重ねた結果です。」
「……なんと…ではワシとタンクの武器は何故……?」
「ダージー様とタンク…さまの武器は敢えてご自分で選ばせると。それは戦場にて培ってきた経験があるからその方がいいだろうと。」
「……なるほど。ワシは剣術以外のキキ様を知らなかったとはいえ侮りすぎていたようだ……しかし、極鉱石は最高級の品だが…キキ様はともかくワシらの分まで大丈夫なのか?寧ろキキ様の双剣よりシルダの剣の方が値がはるぞ?」
「全く問題ありません。予め私も心配して極鉱石の相場はお伝えしましたが
『かまわん。我が家臣の命に比べれば安いものだ、それに家臣の獲物の方が高くて何が悪い。自分にあった、使いやすいものを扱える者が使った方が効率がいい、それがワタシの獲物より高かった、それだけの事』
とおっしゃっておりました。私思わずヨダ…涙が溢れました」
「……ぐうの音も出ないとはこの事ですな。」
こうしてお互いの事を知り、仲を深めながらキキ達は新しい武器を手にいれたのであった。
ダージーとタンクは少し冷や汗とも油汗ともいえない汗をかいていたが、キキの姿からは想像できないような凄まじいものを感じていたからだ。
そしてそれは次第にキキに対する尊敬するへと変わっているのを手に取るよりも感じていた。
武器屋を出たキキ達は街を散策していた。
キキは初めて見るものばかりで大変興奮していたがシルダも同じ様にはしゃいでいた。
彼女はコユーアに来たのは初めてであるし今迄の鬱陶しいしがらみも消えて、コロナとキキという友達がいてシャイナというお姉さんもいるからだ
一方タンクとダージーは武器屋の件もあり少し落ち込んでいた。
「なぁタンクよ、キキ様ってなぁ言っちゃ悪いが化物だな?いや、見た目は天使なんだが……。」
「ダージーさんよ。キキ様は別格として考えなきゃ駄目だぜ?どうせすぐ目の当たりにするから言っとくが……キキ様は無詠唱魔法を使える。」
「なっ…!!!」
ダージーが驚くのも無理はない、何しろ世界の創造神たるテラス以外使えるものは歴史上存在せず、使えるものが現れたらそれは『テラスの再来』と伝わるからだ。
さらに金髪と黄金の瞳まで伝説通りである。
「なっ?別格だろ?」
「いや…別格というか、格の問題じゃなくね?」
キキとシルダはそんな大人達のヒソヒソ話など聞いているはずもなく、焼き鳥の屋台に目を輝かせてその屋台をみているのであった。
そして密かに焼き鳥が大好物のコロナも目を輝かせていた。




