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転異布武 〜信長の道〜  作者: コロナ
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決断




「さて……2通の手紙とも非常に深刻な内容だけど、キキ、どうしたもんかな?」





「父上、どうするとはどういう事でしょうか、ご決断なさるのは父上では?それにダルク親子はワタシを差し出せと言っていますしワタシは父上の処分を待つ身です。」





「ハハハ、父さんがキキを差し出す訳ないじゃないか!父さんと母さんはキキの味方だと言ったのを忘れたのかい?」





「それでこそ私の旦那様ですわアナタ!」






 心配そうに事の顛末を見守っていた母上が誇らしげに胸を張る。


 しかし、父上には悪いが予想外の答えだな。


 貴族の、いや、一族の当主たるもの家を護るためには子供の犠牲など覚悟の上かと思っていた。

 子供などまた産めばいいのだから。

 前世でも家康は俺の脅威から家を護るために嫡男を手に掛けていたのだ。



 一種の男気なのか、騎士道精神なのか、家族愛なのか…。


 当主としてはどうかと思うが、父親としては見上げた男である。





「それでねキキ、ほとんどディラファンの逆恨みからの暴走みたいだが君にも少し問題があるみたいだね。

 だから、この件はキキもどうするか考えて欲しい。すぐにとは言わないから。」





 なるほど、父上は俺の将来のために揉め事の処理を経験させたいのだろう。


 まぁ4歳の子供とはいえここは迅速かつ正確な判断をして、政治能力を見せて置く必要があるな。





「分かりました父上、猶予はいりません。

 ダルク家の方には謝罪の文と少し金を渡しておいて下さい。」





「ほう。謝罪と金を?」





 父上は俺の返答を興味深く面白そうに聞いている。

 そこで、放心状態だったシルダが涙を溜めた目で俺を睨みつけながら反論してくる。





「何であんな奴なんかに謝るのよ!!しかもお金までやるなんてどうかしてるわ!」






「シルダ、落ち着け。」





「落ち着いてなんからんないわよっ!あんなやつに頭を下げるなんて……!」





「シルダちゃん、君の気持ちも分かるが落ち着きなさい。

 シャイナ紅茶を皆に。いいかいシルダちゃん?

 まぁ家族をなくした君ほどじゃないにしろ、キキも腹は立ってるんだ。

 だがキキはそんな感情を押し殺して謝罪をするといっている。それは将来コユーアを背負う貴族として考えたからだろう。

 キキを差し出せという要求は飲んでいないがこれで戦争までは発展しないだろ。そう考えたんだねキキ?」





「……さすがでね父上。それとディラファンはともかく父親のドルギランは金が目的でしょうし。」






 やはり大貴族の当主である。

 このくらいの考えなど当たり前の様に察している。


 シルダは気にくわない顔をしながらも納得したようだ。



 だが、父上とシャイナ以外は本当に4歳の子供か?といいたげな顔だ。

 まぁそうだろう、俺は見た目はこうでも中身は戦国の風雲児と言われた織田信長だ。






「それから明日の決勝は辞退します。シルダ、君に勝っておいて申し訳ないが。」





「そんな……あの大会で優勝する事は物凄い名誉なのに…そこまでしなくちゃいけないの?」





「ああ。これ以上ワタシが活躍すればディラファンも気にくわないだろう。」






 父上も無言で頷いて納得しているが母上やシャイナ、コロナも残念そうに肩を落としている。


 だが俺はそんな名誉など、正直どうでもいい。





「ワタシはそんな名誉などに興味はない。それから家族がなくなり天涯孤独になったシルダはワタシの弟子とする。」





「…………えっ?」






「そして、護衛としても雇用する。よって我がコユーア領の屋敷にて生活し、コロナと共にワタシの護衛として励み側を離れないように命じる。父上も許可して頂けますか?」






「ああ……もちろんだよ。それにしてもキキ…君って子はどこまで……。」






 父上はそういって苦笑いしている。





「そ……そんな。アタシみたいな厄介な女を雇うなんて……いいの?」






「よい。コロナも協力してくれるな?シルダは元貴族だから慣れないだろう、だからお前が仕事を教えてやってほしい。」






「もちろんですキキ様。同じ天涯孤独の身、気持ちは分かりますので。」






「良かったね!シルダ姉さん!本当に良かった!」






「アナタ、キキったらこんなに立派になって…何て男らしい決断…さすが私達の息子ね!」






 部屋にいたメイドと執事がシャイナを筆頭にグスグス鼻を鳴らしながら拍手をしている。


 大袈裟な者たちだ。


 とりあえずディラファン親子の対策とシルダの処遇は、これで話は終わりでいいだろう。



 それにしても、俺としてもちょうど良かった。


 俺に命を尽くして仕えてくれる家臣が欲しかったのだ、しかし俺も含めてまだ力不足も事実だ。


 これからいっときの間は修業と経験、そして資金だな。



 ドルギランは金で抑えたとしてもディラファンはまたちょっかいを出してくるかもしれないし、有事に備える事は大事な事だ。





「父上、これからの事で相談があります。」





「うん?何かなキキ?」





「コユーア領内に荒地と岩山、森を含んだ未開地がありますね、あの地をワタシにください。

 いや、開発する許可と運営にあてる人員の補佐をして頂きたい、もちろん利益の何割かを父上に納めます。」





「……理由は?」





「有事に備えて、ですね。

活動としてはコロナ、シルダ、タンク、ワタシの4人の戦闘力を上げる修業、おもにワタシが指導し訓練します。

 そして、開発が進んでなかった原因である魔物の討伐ですね。

 開発して資金を集める理由はやはりそれも有事に備えてです。何が起こるかわかりませんので。」






「……わかった。許可しよう。開発できたとしても時間はかかるだろう、もしできたとしても成功から五年は税を徴収しないでおこう。」






「あなた……いくらキキとはいえ魔物討伐なんて危険すぎませんか?」





「心配ないさ、もちろんタンクとダージーもつける。彼らは元王国のお抱え戦士達だ。

しかし、タンクはキキの魔法指南長だろう?彼も戦力増強させるのか?」





「ああ、父上はまだ知りませんでしたか。

 実は先日タンクがワタシに弟子入りしたのですよ。

 その時に指南長の職を辞めてしまったのでコロナと同じく護衛にしました。

 シルダと同じ護衛兼弟子ですね、それにワタシはもう5属性の魔術教本にある全ての魔法を修得しているので、自己流の魔法を修業するしかないのです。

その間にタンクにワタシの魔法を教えるつもりです。」






「……はっ……はは。ね……母さん、心配ないだろう?」






「そ、そうね…あなた……。」





 実はその事をタンクとシャイナ以外は知らなかったみたいで、皆驚くというより呆れている。






「では、話はこれくらいにしてお食事にしましょう」





 母上の言葉でその場は夕食会に変わり、次の日エリーはリミール領に帰り、大会の仕事が残る父上以外の俺達はコユーア領に帰った。

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