ドレスの2人
ーーーーシルダ視点ーーーー
2日目の大会後、エリーと私はキキの屋敷の夕食に招かれていた。
今は夕食の準備が整うまで屋敷の一室でエリーと2人で休憩しながら話などをしてくつろいでいた。
「それにしても立派な屋敷ね、うちとは大違い。」
「キキの実家はお金持ちですねぇ、その上魔法も凄くて剣術まで…あ……ごめんなさいシルダ姉さん!」
「いいわよエリー。実際あんなに圧倒的だと悔しさよりも尊敬しちゃうわ!それに、ビックリするぐらい美人なんだもん。あの顔で微笑まれたら恨みなんか持てないわ!」
「だよねぇ。私初めて会った時女の子だと思って『女神様みたい』って言っちゃったし…」
正直、持って生まれた物が違いすぎる。
天は二物を与えずなんてことを言う奴にキキを見せたら何て言うのだろう。
コンジキ姫の名に恥じない美しさ。
圧倒的な剣技。
そして目の当たりにした黄金の魔力。
魔術などはまだ見た事はないが弱いはずがない。
更に、4大貴族の跡取り息子。
こんな、子供がつく嘘みたいなスペックを持った人間はおとぎ話か、テラス神か五大国の初代くらいなものしか聞いた事がない。
今日の私との試合でも圧倒的だった。
いつでも倒せたのにワザと攻めさせているくらいは私にでもわかった。
王国の軍の偉い人だという父にも剣の才があるといわれ、女であっても必死に修業してきたし周りにアタシより強い子供はいなかった。
生まれて初めて、上には上がいると知らされた相手がキキなら納得がいく。
彼はいったいどんな人を結婚相手に選ぶのだろうか?想像もつかない。
王女くらいしか釣り合わないのじゃないか。
私なんかは天地がひっくり返っても無理だろう。
エマル家の長女とはいえ私の母は妾で、父や兄達とは数えるほどしか会った事もなく、屋敷も別々でエマル領地の端っこ。
そのおかげで近くに屋敷のあるエリーと仲良くなれたのは唯一幸いだった。
父に認めて欲しくて剣術を必死に練習したが、キキに負けてしまい大会優勝も逃してしまった。
父は教えてくれる師など用意してはくれないし、大会規定の10歳にはあと1度チャンスはあるがキキがいる。
きっと私は終わった。
後は父の政略結婚の駒として使われ、つまらない人生を歩まなければいけない。
冒険者になり、強い人に勝って英雄になって、ドラゴンを狩って伝説になる。
そんな小さな夢も、無くなったんだと思うとフッと笑みのようなため息が漏れた。
「シルダ姉さん……」
エリーが心配そうに見ているが私は別に落ち込んではいない。
まだ何も決まったわけではないのだから。
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「シャイナ、夕食までまだ時間はあるがエリーとシルダを呼んできてくれないか?紅茶でも飲みながら話をしたい。」
「かしこまりました。キキ様が楽しそうでなによりです。」
そういったシャイナは嬉しそうだった。
どうやら俺に友達ができたのが嬉しいらしい。
「い、いいから早く呼んできてくれ。」
「かしこまりました。」
そういうと2人を呼びに行き、暫くすると綺麗なドレスを着たエリーとシルダと共に戻ってきた。
「よく似合ってますよ2人共。」
実は今日の朝2人と仲直りした後、夕食に誘った事もありメイドに2人のドレスを買っておくように命じておいたのだ。
「ありがとう。でも、本当にいいの?こんな高そうなドレスまで頂いて……。」
「かまいません。それは先日あなた達に見苦しい所を見せてしまったお詫びです。それより1人で紅茶を飲むのは寂しいので一緒にどうですか?」
「ふふ、ありがとう。それなら頂くわ!」
シルダとエリーは元気よくそう答えて席についた。
「……ところでシルダ、その…聞きにくいんですが」
「キキ、アタシ達は友達なんだから敬語は禁止よ。なんかヨソヨソしくて肩がこっちゃうわ。それから試合の事は気にしてないわ、勝負だしね!」
「そうか、ならそうしよう。エリーもそれでいいかな?」
「ええ。その方がいいです。あ、私は癖なんで気にしないで下さいね」
「わかった。聞きたい事は試合のことじゃない、それからコロナ、お前も座って話に加わるんだ。コレは命令だ。」
「……命令であれば。では失礼します。」
「で、何を聞きたいの?」
「うむ……シルダの準々決勝の相手、猫だったろう?」
「え、ええ。猫っていうか獣族の子だったわね、それがどうかしたの?」
「まさかキキ様……惚れたのですか?」
『ええっ!?』
コロナの突拍子もない質問に2人は声を揃えて驚き青い顔をしている。
「そんな訳あるか……コロナの冗談はキツイな、もう少し勉強しておくように。」
「……申し訳ありません。うけると思ったのですが…。」
本当に冗談だったのかよ…。分かりにくい。
「それで、あの猫娘の耳とか尻尾は本物だったか?」
「……。」
「……当たり前でしょ?だって獣族だもん。」
「…そうか。本物か。シルダは確かマエル領主の長女だったと思うが、マエル領にも猫娘はいるのか?」
「あなた……外出た事ないの?」
「この大会が初めてだな。」
そう言うと2人はシャイナを見るがシャイナはコクリと頷いて仕草で肯定する。
「父上から外出はしないよう禁じられていた。まだ幼いのと多分、この金髪と目のせいだろう。」
「なるほどね。納得だわ。確かにその姿だとよからぬ事を考える奴がいるでしょうし王国側も騒ぎ出すかもだしね。
獣族は世界中にいるわよ、あとエルフ族も。炭鉱族もチラホラ見るけど大多数は洞窟とか地下にいるって聞くわね。魔族や魔人も世界中の森や未開地にいるらしいわよ、見た事ないけど。」
「なるほど、エルフとはどんな姿をしているんだ?」
「そうね。皆あなた程じゃないけど綺麗ね。寿命は長いけど成人してからは外見は歳をとらないみたいね。あとは、耳が長いくらいだと思うけどよくは知らないわね。」
「なるほど。何故耳が長いのだろうか……。エルフや獣族はたくさんいるのか?」
「……すごい質問の数ね。人間に比べると少ないわね。なんか大昔の戦争が関係してるらしいわ。」
シルダやシャイナの話によると、大昔に人族とエルフと炭鉱族の連合軍と魔人率いる魔族と獣族の大戦争があったらしい。
結果は人族側の勝利で魔人率いる魔族は今でも敵対しているが獣族とは和解し共存しているらしい。
そのせいで獣族の立場は弱く、奴隷にも多いいらしい。
大会が終わったらコユーアの街を見に行こう。
そんな事を話していると父上が帰ってきたが、どうも表情が硬い。
「おかえりなさい父上。お疲れ様でした。」
『お邪魔しております。シルダです。こちらがエリーです。』
「お初にお目にかかりますエリーです。」
「ああ、話には聞いてるよシルダ、エリー。キキと仲良くしてくれてありがとうね。それで、キキと君達に話があるのだがいいかな?」
父上は優しく挨拶を交わし真面目な顔をしてそういうと、懐から2通の手紙を取り出しテーブルの上に置いた。
そこにはダルクの名字のディラファンという文字が見えた。
俺達5人は物凄く嫌な予感がしていた。




