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空色部活  作者: 空
1/1

~桜舞い、闇に散る~ プロローグ

――――月が出た。





しん・・・・・・と静まり返る住宅街に、一人の少女の足音が響く。

少女は携帯を片手に夜道を歩いていた。








彼は、暗闇に潜む。





彼は、明かりを嫌い、そして、





少女という存在自体を、嫌う。






少女は携帯の画面を見ながら、


「うわっ、あっちゃんたらまた彼氏とデートォ?やけちゃうんだか、ら、、、、、、」


何かに気がついたのか、立ち止まり、振り返る。


「誰?」


首をかしげながら、携帯を閉じる。

パタッ













――――月が、その道を照らしたときに、少女の姿はなかった。











☆~~~~~~~~☆~~~~~~~~☆




『・・・・・・・・・・・・・・連続誘拐犯は、未だ逮捕されてはおりません。

 夜道を歩く際には、くれぐれも――』


「っつってもさぁー、こんなあたしを誘拐しようなんて男いないわい」


最近話題になっているニュースを繰り返し放送するテレビに文句をつけつつ、あたしは食パンをたいらげていった。


ウルトラ古いマンションの一角。

江戸時代に建築されたとまでウワサされているこのマンション――壁はもはやダンボール並みに薄く、凍死した住民もいるという。『なに〇れ珍百景』にでものって金もらって建て直せッ!――に住み始めてから早6年。

家賃たったの3円で、アルバイトすらもできない少女にはうってつけの物件だったもので、何も考えずに済み始めてしまった。


今時珍しいアナログテレビに、エアコンなしの扇風機とうちわ対策。

おばあちゃんっ子で助かった~。(ちなみに冬は湯たんぽとヒートテックとラジオ体操で温まる)


そんな生活も来週からはオサラバすることになる。


母と父の遺産を使って『桜坂学園』に入学することになったのだ。

桜坂学園は超ハイパーエリートな学校で、幼稚園から大学までのエスカレート校。

ただし、進級するときに必ず『厳しい』試験を受けなければならないらしく、脱落者がそのときに半数以上出るらしい。

でもなぜか、入学は簡単で、試験は面接だけ。あとはマネーだけでOKというなんとも不思議な学校。

更に、全寮制で部外者・・・・・・もちろん、家族や親戚も含めるので、つまり、生徒以外はたとえどんな状況でも学園祭まで立ち入り禁止だとかなんとか。

それに、ホームページやカタログなど、学園に関するものには生徒が一人として写っておらず、学園の前でも生徒の姿を見るのは珍しい。


そんな不思議で謎めいている学園は最近人気急上昇で、テレビでも報道されたほどだ。



「そしてぇ?その学園に入ったら、少女漫画的展開になるってわけかい?」

「・・・・・・なりませんので、ご心配なさらずに大家さん」

「道ですれ違った、超!イッケッメッン❤最初はヤなやつ・・・・・・だけどだんだん!」

「好きになりませんからっ!てかそもそもそんな展開にさせるものかァァァァァ!!!」

「あら、ルイちゃん、ちょっとはそーいうのにあこがれているのかと。

 かなりの学園に入ったらイケメンはつき物よ。ベツマとかケータイ小説とか読みなさいよ」

「読むかぁそんなの!あたしはジャンプ一筋じゃいっ!」


いきなり会話に入ってきたのは、隣人でありここの大家でもある(キリ)さん。40代前半くらいで、母親代わりとなっている。


「なんか困ったことあったらすぐ桐に言いなさいよ、ルイちゃん!マッハで駆けつけるから!」

「ありがたいですけど、桐さんにマッハで来られたらビビるんでやめましょうね」

「そんなぁ~、桐頑張っちゃうのにっ」


・・・・・・んまぁ、ちょっと強烈なところはあるが、優しい人であるには変わりない。

と、


「小坂さぁ~ん、あんた、桜坂行くんだってェ?」

「あらやだっ、そーなのルイちゃん!」

「ほほー、それはそれは」


ダンボールごしから会話が駄々漏れだったのか、ボロマンションに住むご老人達がいっせいにやってきた。


「いやっ、あのぉ、えと、、、、、、」

「そーなの!イケメンいたら教えてねぇ!」

「あの、前朝ドラに出てたあの子!あの、爽やか系の・・・・・・」

「あぁー!松坂なんたらねぇ!」「あの子に似てる子いたら写真とるのよーっ!」


来週までの辛抱だ。


来週には、グッバイフォーエバー!!!ワォッ!


☆~~~~~~~~☆~~~~~~~~☆


「また出たらしいな、ヤツが」

「――――えぇ。新入生が入るこの時期に、まったく」

「そう怒るなよ、サキナ。で、目星はついているのか?『戦闘部員』に抜擢する生徒は」

「面接の時点で、面白そうだと思った子はいたわ」


窓を開けると、校庭に咲く桜の花びらが室内に入ってきた。

サキナと呼ばれた少女は、懐から生徒達の願書を出した。


「彼と、彼女」

「・・・・・・一見、役に立ちそーには見えないんだけど?」


願書を横からのぞき、ちょっと眉を下げる少年。


「リュウ、私の勘に不満があるのなら、(ヤク)でもなんでも調合して脳みそにぶちこめばいいわ。

 この、私のね」


ウッと、顔をしかめる、リュウという名の少年。


「別に、客観的な意見を述べたまでさ。サキナを疑ったわけじゃ・・・・・・」

「そう。勘違いして悪かったわ。

 さぁ、余談はここまでにして、仕事に取りかかるわよ。南校舎2階部分で『G』の目撃者多数。

 今の時間、陸上部は練習中じゃないわね?」

「あぁ。休憩時間の真っ最中」

「じゃあ、あいつを呼んで、『G』の確保。指令は私、『G』の追跡はあなたに任せる。あいつがハンターよ」

「了解。1分で来るよう頼むよ」

「あいつに伝言、



 

 しくじったら殺すって。よろしくね」



「・・・・・・りょ、りょーかい」


顔が青いまま、リュウは部室を出て行った。



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