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第四夜

私をロリコンと勘違いする頭のネジが抜けてるというかそもそも刺さってないような輩が周りで跡を絶ちませんが、違います。

私の守備範囲はゆりかごから墓場までです。

球場全体を覆っています。

牽制球も捕る勢いです。

さすがに隣の球場(やおい)まではカバーできませんがね。

というわけで、私の彼女になりたい方はフリーダイアル××××‐×××‐×××、50・80悦んでまで。こぞってご応募下さい。

空はとうに白くなり、太陽がその顔を見せつつある頃。黒のプリウスは、エコカー失格のような音をたてながら、アスファルトで塗り固められた道を疾駆していた。

車内には、茶を帯びた黒いスーツの青年と、『赤信号』と書かれたシャツを着た少女。

流れているのは、どうやら先刻までとは違う音のようだ。


=============


「というわけで、今回は少し趣向を変えて、カーナビでDVDを観ることにしましたー」

「いや、それはいいんだけどよ………」

「ん?何か不満?」

「………流れているのがマトリックスなのは、銃弾を避けられなかった俺への当て付けなのか?」

「いやいやいや、違うよ」

「だよな!いやスマン、流石に被害妄想が過ぎた」

「私はただ蜂の巣にされるマウスが見たいだけだよ」

「なんて陰湿な楽しみ方!あのシーン、幼い作者のトラウマになってアイツ5年近くこの名作を観れなかったんだぞ!」

「へぇ、わりと繊細に出来てるねあの人」

「そのわりに下ネタしか言わないけどな」

「しかしそんな彼も、今ではこの映像作品を今世紀最大の名作と公言してはばからない訳だ。いやぁ、時の経つのは早いね」

「11歳の台詞じゃねえなソレ」

「うるさいよ。………さて、前回のひき通り、今回はその闇医者のトコに着くまで喋り続けないといけないわけだけど」

「うー…ん。俺の出血抜きにしても、もうお前の沈黙オチは避けたほうがいいだろうな。絶対アレ、二回目にしてもうネタギレかと思われたよ」

「いやもうあなたの出血、抜きにできる状況じゃないから。抜き差しならない状況だから。青白くなってるから」

「『お分かりいただけただろうか………画面の左端、車のミラーに、信じがたいものが写りこんでしまっているのを……』」

「あなたの顔だよ」

「ああいう夏の特番って、語り部の声がやたら怖いんだよな」

「あぁ分かる。それで実際の映像やら写真やらは、なんかそうでもなくて拍子抜けするの」

「逆に、明らかに作り物って分かるものでも、突然出てこられるとメチャクチャびっくりする時がある」

「要は演出次第なんだけど……考えてみたら、」

「うん?」

「脅かすの下手な幽霊見たことないね」

「………あー」

「もともと生者なんだから、一人くらいそういう人がいてもおかしくないのにね」

「………それは、多分こういう事なんじゃないか」

「え?」

「『ベロベロバァ!』

『……うっわしょうもないもん撮れた』

『………え?』

『無いわー。折角廃病院まできたのにこれは無いわー』

『えっあっ、す、すいません』

『あーどうしよっかなー。こんなんでもいちを投稿してみよっかなー』

『あ、あの、そんなに駄目だったですか僕?』

『駄目にも程があった。今時胎児でも驚かないよコレ』

『せめて産まれさせて下さい』

『もし採用されたら、この恥辱VTRが全国放送されちゃう訳だけどぉ』

『えっ!?ちょ、そんなっ』

『もしかしたら、アンタの子孫が観ちゃうかもね~』

『かっ勘弁して下さい……!』

『あ、これは独り言だけど、三丁目に呪い殺して欲しい奴が―』」

「なにその怖い話。いや怖い話でいいんだけど……そんな寒気は求めてねぇよ」

「多分式神ってみんなこんな作り方だったんだと思う………」

「安倍晴明じゃなくても誰でもできそうなほど現実的なやり方だね」

「安倍氏はヤミ金でも十分成功してたんだろうぜ」

「幽霊を揺するとか………」

「とんだポルターガイストだな」

「アレは幽霊『が』揺すってんでしょ」

「いやまぁそれも、それこそお化けビデオ並みに信憑性の無い話で、99%は気のせいとか寝惚けとか、建築材の膨張収縮とかで説明されちまうんだろうけどな」

「ふーん。意外だね。1%は本物だって信じてるんだ」

「残りはラリってんだよ」

「ロリってるのはあなたでしょ」

「誰がそんな事を言った」

「私の魅力に取り憑かれているというわけだね」

「結構上手いこと言ってるけど………笑わねぇよ?」

「おっと、危ない危ない」

「何が?」

「この流れのままで話してると、また私のだんまりで終わっちゃうとこだったよ」

「え、何でだ?」

「経験則」

「ふーん。法則があんのか」

「まぁね」

「おせーて!おせーてくれよォ!」

「どこのワゴンだよ………駄目。自分で気付いて」

「え~」


「できれば、早めにね」





「ん?」

「……………………………………………今の、章の切りドコロだったんだけど」

「そりゃ今回は、病院着くまで続くからな」

「ヤバい………すっげぇ恥ずかしい」

「というか、着くまで続くのくだりはそもそもお前が言い出したことだろうよ」

「いや、私が話を締めた段階で自動的に着くもんだと……………………あれ?そうじゃダメな理由がさっぱり思いつかない。やっぱさっき終わって良かったじゃん!字数足んないってんなら、またどうでもいい回想挿れてかさましすれば良かったじゃん!」

「どうでもいいって自分で言っちゃったよ!あと、メタ発言の乱用は読者に引かれるから止めろ!」

「だってどうでもいいでしょ。あんなのね、スピーディーにギャグを楽しみたい読者の方には無用の長物なの!せっかく盛り上がってるバトルの隙間で、単行本複数巻にも及ぶ過去編見せられて、イラッときたことあなたにもあるでしょ!?」

「俺、ワンピの過去編なら愛せるんだけどなぁ」

「それは私も好き」

「どっちだよ!」

「ただ、一言言わせてもらえるなら、みんなチョッパーの話をワンピ史上最も泣けるとか言ってるけど、私的にはノーランドとカルガラの話の方が好きなんだよね。やっぱ、漢の友情って感じで、」

「ふーん。こう言ったら差別表現になるかもしれないが、意外だな」

「興奮する」

「意外過ぎだ」

「♂の友情と訂正してみようかな」

「どんだけ要らないキャラ立てる気だお前」

「なんだよ、人を変態みたいに……じゃああなたはどのシーンを愛しちゃってるわけ?」

「ナミの過去話」

「およ」

「というより、そこから『助けて』までの一連の流れが涙なしには語れないな。どうも、女の涙には弱いみたいでな」

「……………………………………

興奮する」

「あたかも俺が言ったかのように沈黙を挟むな(ぎぞうするな)!」

「涙フェチなの?」

「人に怪しげな属性を付け加えんなよ……いや、なんか、弱いんだよ」

「なんか私関係無さげな話だなぁ。知っても得しないっていうか……」

「ちなみにお前を助けたのは、涙にくらっときたというのもある」

「えいっ」

「目突き!!!?」

「ぎゃああああああ!!!!目がァ!MEGAAaaaaa!!!!!」

「ば、馬っ鹿、なにやってんだ!………え、いやホントになにやってんの!?」

「あたたたたた…………く、くらっときた?」

「ぞわっときたわ!ぁあったく、ちょっと待ってろ!もうすぐ病院着くから!」

「………え?」

「だから、あと一キロちょいで着くから、」

「なにその見計らったようなタイミング」

「え」

「やっぱさっき着いたって良かったんじゃん!!!!」

「おわぁああぁぁ!!!!??ちょ、そんな暴れんな、」

「わざわざ延長してちょっとしか書いてねぇじゃねえか!名言が滑ったみたいな感じの空気に私を貶めたくせに、『これはお前に殺されたアイツの分だぁ!』的パンチをおもくそ外したみたいな雰囲気にしたクセに、1000字ちょいしか書いてねぇじゃねえかああぁぁ!!!!!!」

「安心しろこの小説にしちゃ書いた方だ!だから暴れないで!ハンドルが、ハンドルがッ!ぶつかる!」

「この際永眠(ちんもく)オチでいいよ!」

「シャレになってねぇから!」


===============


それからほどなくして、黒いプリウスは目的地に到着した。


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