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第二夜

同じマンションのガキ共に初見でオタッキーと評された私ですが、似合わないと知りつつこの前、映画「レ・ミゼラブル」を観て参りました。いや、ギャップ萌えを狙ったんです。虚空に向けて。

あんま書いてもアレなので一言。メチャクチャ面白かったです。ミュージカルの映画化のため皆が皆歌ってて、盛大な独り言を聞いてるみたいでそういう意味でも面白かったんですが、いや、ハンカチが手放せませんでした。是非、大切な人と観に行ってください。私は一人で観に行きました。

という訳で、登場人物が酷い目にあってたらその影響です。ご了承下さい。

深夜、というよりは、既に朝方と呼ぶにふさわしい時刻。その駐車場には、黒いプリウスが一台停まっていた。

と、車に近づく二つの人影。一人は茶色がかった黒のスーツを上下に着こんだ若者。もう一人は水色のTシャツに身を包んだ少女。

男がエンジンをかけた。エコカー故に、音はほとんどしない。

やがて車は走り出す。BGMを鳴り響かせながら。


===========


「『ゆっりゆっらっらっらっらゆる〇り大じ』…」

「本当に大事件だ!!!」

「うわっ。………なんだよ、うるさいなぁあなたも。突然叫び出して。情緒の方がもしかして不安定なの?」

「この音量でアニソン流してるドライバーなんざそりゃ情緒不安定だろうよ!法定速度を守る暴走車が存在する事を初めて知ったわ!」

「いや、あなたが言わなければ、アニソンどころか曲かどうかも定かでない読者も結構いたと思うんだけど」

「そのレベルのディープなアニソンを知っている小学生がいる。世も末だなオイ。あと、別の時空にいるやつらの事より、周りのドライバーの目を気にしようぜ」

「というかあなたも知ってるんだね」

「…………………………」

「引くわ」

「っせーな!仕事の合間の半端な時間に気まぐれでつけてみた深夜アニメが妙に面白くてついズルズル見ちゃうなんてのがざらにあるんだよ大人には!」

「まぁそういう事にしとこうか。ちなみに、好きなキャラは?」

「ゆい先輩」

「……即答だよ。一寸の迷いも無かったよ」

「………そろそろこの話止めにしないか?版権的にも俺の風評的にも」

「いたしかたないね」

「あと、音量下げない?」

「いたさないね」

「外道!」

「だってあなたも好きなんでしょ?ヲタに最も不要なのは羞恥心だよ」

「それもあるが、この時間にこの音量は普通に迷惑だから」

「うっ。……ヲタの最大の敵は常識なんだぜ…。あ、それでさ、わたし大変な事に気付いたんだけど」

「なんじゃい」

「わたし達前回名乗ってないね」

「大事件に次ぐ大事件じゃあねぇか!!!」

「どうしよ」

「え、というかマジで?」

「マジで。前回森進一と少年マンガの話しかしてないよ」

「折角思わせ振りな回想付けたんだからせめて俺の名だけでも言っとくべきだったぜ……。でも、正直二人しかいないと名指しで呼ばなくてもなんとかなるしなぁ」

「だよね。無理に名乗っても不自然だしね」

「ということで、」

「名前公開は、具体的な氏名が必要になった時で」

「……待てオイ」

「何かおかしいこと言った?」

「まるで新キャラが出るかのような台詞を吐くな」

「出るでしょ」

「やめてくれ!」

「出ないの?」

「出るっ…出ねぇよ!」

「なんでそんなに嫌がるの。もしかして、わたしと二人きりがいいのかな?」

「食費」

「……あっそ」

「あと、車が狭くなる」

「ところでさぁ」

「うお、急にどうし」

「ところでさぁ!」

「はい」

「前回言ってないといえば、服装以外の私達の容姿説明もしていないわけだけど」

「あぁ、そういやそだ。でもまぁ、キャラの容姿は絵師さん任せみたいな小説も結構あるし、そんくらいは良いん」

「お互いをさ!」

「……やっぱちょっと怒ってんのか…?」

「お互いの事を誉め合えば、自然に容姿を紹介できるじゃないかな」

「えぇぇ?」

「了解?分かった」

「『えぇ』じゃねぇよ」

「エエって言ったじゃん」

「Yesっつった訳じゃねぇって言ってんの!確かに分かりにくかったけどさ!」

「いいからもうとっとと誉めろよハゲ」

「ハゲてねぇよ!やめろよ、この会話の流れでそういう事言ったら本当に俺が禿げてるみたいになんだろうが!」

「男の癖にチャラチャラ髪伸ばしてる奴なんて禿げてんのと煩わしさじゃ変わんねぇんだよ。いやむしろ、ハゲには障害となる物が何一つ無い分、前髪がチャラチャラ視界を遮って本人も煩わしいロン毛の方が、より煩わしさのランクが高いんじゃないのかな」

「今一番傷ついてるのは俺じゃねぇ、リーブ21の利用者達だ!」

「女の私より長いってどういうこと?」

「いや、それはお前が好きでやってんだろ」

「は?ちがうよ!わたしだってロングにしてみたいよ!」

「え、そうなのか?」

「この世にはね、髪を伸ばせないように生まれてきた女子だっているの!具体的にはクセっ毛とかクセっ毛とかクセっ毛だよ馬鹿!」

「馬鹿って……」

「死ね!」

「死ね!?」

「いいからさぁ、もう、誉めろよ!誉めて!何、私そんなイイトコない!?」

「……もう必要ないだろ」

「何で!」

「上15行くらい見てみろ」

「……………あ」

「他に付け足す事あるか?」

「……………………………もういい」

「おう………ん?……………………おーい?…………また黙りですか………………………………ちょ、これ、森進一より全然ツラい……………………………………………………………『ゆっりゆっらっら……』……」

ちなみに私もゆい先輩派です。

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