第一夜
放置癖アリの私です。どうやら、すぐに結果が出ないと我慢ならないタチのようです。
これじゃいかんと思い、久しぶりに放置小説共を開いてみたら、当時やりたかった事が既にもうやりたい事ではないときた。というか、痛すぎて書く気にならなかった。
こんな私なので、少しでも面白いと感じたらコメント下さい。私も、なるべく書く努力がしたいです。
深夜、というよりは、既に朝方と呼ぶにふさわしい時刻。その駐車場には、黒いプリウスが一台停まっていた。
と、車に近づく二つの人影。一人は茶色がかった黒のスーツを上下に着こんだ若者。もう一人は白のワンピースに身を包んだ少女。
男がエンジンをかけた。エコカー故に、音はほとんどしない。
やがて車は走り出す。BGMを鳴り響かせながら。
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「幼女誘拐。……さて、いやさてというか、何、あなたの選曲。森進一って。伝わらないよ。何年10歳やってると思ってんの」
「最高でも一年だろうよ。……いやちょっとおい待て。待って。いらない。いらないよ冒頭の四文字。事情知らない読者が勘違いすんだろ」
「…『「幼女誘』?」
「国語の試験問題みたいな抜き出し方すんな」
「いいじゃないのよ。誰が聞いてる訳でもないし」
「聞いてっから言ってんだよ」
「え?」
「ん?や、うん」
「幻覚見てんの?」
「いや、訳分かんねぇ事言ったのは認めっけど、別にクスリはやってねぇよ?」
「作者の文章に観客がいるわけないじゃん」
「それこそ幻聴として処理したいレベルの悪口雑言だなオイ!!……んだよやる気なくなっちゃったよ、もう無言でドライブするぞチクショウ」
「待って無言はやめて、森進一が響くから」
「…いや何もそこまで忌避することないだろ」
「忌避するんだよ。あれだね、あなたには10歳児にとって演歌がどれだけ恐ろしいものか分かっていないね。お祖母ちゃん家で観ることを余儀なくされる演歌番組が、果てしなく退屈なのに立ち去るのもなんか気が引けるあの時間が、どれだけ肩をガッチガチにするか分かっていないんだね!」
「お前くらいの歳には既に好きだったから分かんないなぁ」
「ジェネレーションギャップ!」
「11歳差でギャップもクソもないだろう」
「ぃや、やっぱ10なん年ってのは侮れない数字なんだよコレが。まぁこの場合、あなたの趣味が40年分ギャップにつっかえ棒してるのもあるけどね」
「ほっとけよ」
「約10年…って言ったら、アカデミーの落ちこぼれが風遁螺旋手〇剣使い始めるからね」
「あー……。そうだな、強くなったよなぁあの子も。いち早く背中から手を生やし始めた友人にはどうしてもインパクトで負けるけどな」
「犬を蹴られて叫び出すお坊ちゃんが、髪パツキンにして黄金体験し始めるからね」
「人代わってってるから。もう五代目だからな、それ?」
「あれ?10年後なら、もう性転換した頃かな?」
「六代目なだけだから」
「『父親がぁ、やってるんでぇ』とかあやふやな動機で、故郷の島を飛び出した不自然な髪型の少年が、」
「なんか険あるなぁ!」
「……大して変わってないねぇ巻数とか」
「それは言わない約束だろう!!!てか、いろいろやったよ彼も!大きくなったり妙に増毛したりしただろうよ!」
「ストーリーが面白いからこそ、許せない事というのもある」
「代弁だ……」
「とまぁ、11年というのが割りと長い期間というのを、理解してくれたかね?」
「そうだなぁ。芸能界で11歳差つったら、十分年の差婚報道されちまうしなぁ」
「……いや、それは違くない?」
「え?いやいや、歳の差婚だろ。いなかったけなぁ、某XILEで……」
「愛があれば乗り越えられるレベルだよ。11歳なんて差の内に含まれないよ」
「言ってる事が全然違う!」
「つまらん事をガタガタ抜かすマスコミも法律も全部死ねばいいんだ!!」
「急に口、悪!特番の悪魔が取りついた人みたいになってる!祓魔師を呼べ!」
「ほくろ眼鏡ーー!!!」
「……というか、法律は関係無くないか?」
「なんで16歳以下はだめなんだ!」
「口悪いっつうか単なる社会悪みたいな事言い出した!!!」
「くっそう…。愛さえあればやっていけるんだよ!」
「……こいつ酔っ払ってんのか…?」
「愛さえあればヤッてイケるんだよ!」
「過激な発言は慎めぇ!!!」
「そう思うよね!?あなたも!!!」
「やめろ!ここで話を振ったら俺まで危険人物仲間みたいになるだろうが!」
「平成のルパン三世が何を今更」
「いや俺も泥棒やって長いけど、ルパン師匠に並べたとかそんなおこがましい事は考えてないぞ」
「真面目な応対は求めてないよ」
「お姫様の心を盗んだ事もないしなぁ」
「…………………」
「ん?」
「……さっきの質問」
「あ、何。それこそ真面目に聞いてたの?………そうさなぁ、危険な発言になるけど、まぁ確かに、好きなら幼稚園児だろうが明治人だろうが付き合ってもいいんじゃないか?両想いでさえあればな」
「…………………」
「………あれ、どうしたい黙って。……………おーい?寝て……ないみたいだな、なぁ?………もしもーし?………………なんか喋れよ………なぁおい……………ちょ、マジで頼む………………なんか話してくれぇ!森進一が響くよぉ!!!」
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家は燃えていた。……いや、屋敷というべきか。
少女は泣いていた。……いや、それは涙の脱け殻で、その顔には、既に何一つとして浮かんでいなかった。
そして青年は戸惑っていた。そろそろ財布が涼しくなってきた所に、たまたま羽振りの良さそうな金づるが建っていて、ちょいと全財産を失敬しようとしていただけのはずだった。
気付くと、青年は愛車のエンジンを掛けていた。つい一時間前には空だった後部座席には、仕事の成果。現金と、価値の理解できない壺と、年端もいかない少女。
黒いプリウスは、無音で夜の路を滑る。