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職業チェンジをした俺たちは、結果から言えば、かなり強くなった。
一応、初心者の草原で肩慣らしにモブと対峙したが、敵ではなかった。最初結構てこずったんだけどな。
節制の森では、最初のころは4,5回攻撃を与えなければ倒せなかったモブが、2回の攻撃で倒せることも多々あり、3回も攻撃を加えれば、ほぼ確実に倒せるようになった。
そして、俺たちは森の奥へと、どんどん進んでいった。
「ふぅ、かなり奥まできたな」
「うん、そうだね」
森の奥へと足を踏み入れた俺たちは、周りの他のプレイヤーの声すら聞こえない所まで進んでいた。
森に入った時間が夕方で、遅くだったのも災いして、すでに森の中は暗く、スキルの鷹の目で辛うじて周りの状況が把握できるくらいだ。
俺で辛うじてなのだから、命は大丈夫なのか?と、思ったが、曰く『目が慣れたし、大丈夫』らしい。プレイヤースキルがハンパネェよ。
ここで止まっていても何も変わらないので、進んでいく。最後の手段で、死に戻りという手があるから、大丈夫と判断し、奥へ進んでいく。デスペナルティーは痛いが、まだ序盤だ。取り返せる範囲だ。
さらに森の奥へ進むこと1時間。ポーチの中身が、モブからドロップしたアイテムしか残っていないころ、突然森の木々がなくなり、不意に視界が開けた。
目の前には、天にも届くかというくらい、高い塔が聳え立ち、その周りには、先ほどのジメッとした森では見ることのなかった、花畑があった。
「コレって…。あれか?」
少し不安になりながら、命に問いかける。
「たぶんそうだと思うよ。これ、隠しエリアだよ」
隠しエリア。特別な条件をクリアしていないと、見る事すら叶わない、エリア。それが目の前に広がっている。
一番最初に目に付くのは、やはり目の前にある、塔だろう。先ほども言ったが、天に届くのではないかというくらい高い塔だ。表面は、所々苔で覆われており、この建物が建ってから、ずいぶんと時間がたったのだろうと思わせた。その近くには、花畑が広がっており、幻想的な景色を醸し出している。先ほどは気づかなかったが、よくみれば向こう側にはテントらしきものがある。
近づいていけば、花畑だと思っていたのは、ポーションの材料である、薬草畑で、ちかくには池もあった。池の水は、水底が見えるくらい透き通っており、クリアなものだと思わせる。
塔の周りを一周してみれば、反対側に入り口らしきものがあった。道中に拾った薬草は、かなりの種類があり、すべて拾っていけば、ポーチの限界要領まであっという間になってしまうだろう。
もちろん、拾えるだけ拾いましたけど。
「すごいね、ここ」
命が感嘆したように言った。
「ああ、そうだな」
主に薬草の種類の多さと、数の多さに。
「でも、そろそろ戻らんとな…。命、帰るぞ」
「分かった。でも、スクショに残しておきたいから、ちょっと待って」
1分後、予告どおりすぐに帰ってきた命と、森へ出ようとする。だが……
「おい、出れねぇぞ。どうなってんだ。もしかしてバグか?」
「GMコールしたほうがいいかな?」
「……そうだな。したほうがいいか」
少し考えて、面倒になりそうだが、帰れないよりましだと思ってコールを促す。
「……」
「ん?どうした?」
なかなか命がコールをしないので、不思議に思い声をかける。
「…コールが、できない…」
な、なにぃいいいい!!?
俺もすぐに確認したが、言っていた通り、メニューにはアイテムや、ステータス、装備、ログアウトの文字は白くなっているのに、GMコールのところだけ、使用不可の灰色の文字になっている。
おいおい、ここでバグが発見されるまで居れと言うのか?さすがに無茶じゃないだろうか?
…でも、寝るのとか、疲れを気分的に取り除くだけだし、食事も腹が膨れるかの問題。はっきり言えば、気分の問題だ。トイレとかも、そこらへんでやれば…無理だな。俺はどうにかなっても、命の方が…いや、常に戦闘状態なら大丈夫!…塔の中にモブがいれば!!
「よし、塔の中に行くぞ!」
「え!?帰るんじゃないの?」
「GMコールがつながらないし、仕方がない。塔を俺たちで攻略するぞ!」
俺が、俺たちだけで攻略するといったとたん、元気になる命。
「うん!!僕たちだけで攻略しよう!!」
『僕たちだけで』のところが強調されていた気がするが、命もその気になったみたいだ。それならどうでもいいや。
ということで、遠目でみたときに見えたテントを、当分の拠点として、行きますか。そこでも、復帰点の設定ができたので、一応そこの設定をしておいた。
◇◆◇
早速、塔の中に入る。見た目とたいして違わず、中はどこから見ても古びた塔だった。だが、地面はしっかりとしているし、壁もいかにも崩れそうな見た目をしているが、試しに押してみても砂埃1つ落ちてこなかった。
ただ、ゲームだからなのかもしれない。
周りを確認しながら、慎重に進む。なんせ初めての場所だ。いままで誰にも発見されず、また、誰にも攻略をされていない、まさに未知のダンジョンだからだ。慎重すぎて損はない。
ガサガサ
ほんの小さな音。いつもなら聞き逃しているくらい、小さな音。それでも今の俺たちには、耳元で囁かれているくらい、はっきり聞き取れた。
「命、敵だ」
「うん、分かってる」
たぶん、モブだろうから、敵という表現はおかしいかもしれない。だが、命はしっかりと武器を取り出してあたりを警戒してる。俺は、クイックドロウがあるから、武器を構えたりしないが、いつでも取り出せるように、手を持っていく。
そして、出てきたモブは…!
ポヨ~ン
ダダダダダ
出てきたときのBGMは、きっとこんな感じなのだろう。
スライムだった。そう、ただのスライムだった。コレくらいなら楽勝だ。―――1匹なら。
ただの1匹なら、優樹1人でも十分対処できる。まぁ、時間はかかるが。
しかし、出てきたスライムは、ゆうに50を越す。
ドラゴン○エストというものをご存知だろうか?現実世界では、かなりの人気を誇る、大人から子供まで、知らぬ人はなかなかいないと(個人的に)思うRPGなのだ。
一応名前は伏せておくが、このゲームのあるモンスターは、ある一定以上の数が集まると、合体して、キング○ライムなるものになる。
ここまでで、大体この先が分かる者もいると思うが…
ポンポンポンポンポン
まさにこんな音を奏でながら、スライムが8匹ごとのグループを7つ作り、土台2匹、上に3匹、その上に2匹、一番上に1匹。(しかし、土台が2匹なのに、その上にどうやって3匹ものれるのだろうか?)最後の1匹が乗ると同時に、どこからか煙が出てきて、晴れるとそこには、冠をかぶった元のスライムの4回りは大きい、一体のモブが残っていた。
残りのグループも同じ手順で出現。
7体の巨体のモブに囲まれ、逃げる道など残っていない。
いくら合体したといっても、もとはただのスライム。簡単に倒してやるわ。
……なんて、思っている時期が俺にもありましたよ。えぇ、そうですとも。かのゲームでも、もとはスライムでも、合体をすると、結構強くなりますもんね。
……って、思っているときも確かにありましたよ。
実際は、
「こいつ異様に強いな」
「うん、なんか強いね。まるで、自分も弱くなってるみたい」
まさか。と思いながらも、ステータスを確認する余裕すらない状態。
自分の攻撃が、全然相手にとって痛手になっていない。実際、仮称キングスライムの上に表示される、HPゲージはあまり減っていない。というか、まったく減っていない。いっそ清々しいくらい減っていない。命が戦っているほうは、こちらより減っているが。
なのに、相手の攻撃はこちらにとって致命傷級。どこの無理ゲーだよ!!
一撃だけ食らってしまったが、掠っただけで、MAXのHPが、一気にレッドゾーンまで持ち込まれた。
命も、何とか盾や鎧で防いでいるで俺より食らうダメージは少ないようだが、それでもジワリジワリと減らされている。
……結果俺たちは、初めて敗北を経験した。
NAME YUKI
JOB 二丁拳銃士Lv1
スキル 銃 Lv22
錬金術 Lv10
調薬 Lv8
鷹の目 Lv23
鍛冶 Lv1
クイックドロウ Lv8
武器 初心者の銃×2 ※壊れません
防具 初心者のシャツ ※壊れません
初心者のズボン ※壊れません
初心者の靴 ※壊れません
ホルスター
持ち物 アイテムポーチ ※壊れません
NAME LIFE
JOB 騎士Lv1
スキル 槍 Lv25
盾 Lv22
鎧 Lv20
活檄 Lv20
攻撃力上昇 【中】
防御力上昇 【中】
武器 銅製の槍 耐久度20/100
防具 革のたて 耐久度10/100
革の鎧 耐久度20/100
革のズボン 耐久度50/100
革の籠手 耐久度30/100
革の靴 耐久度25/100
持ち物 アイテムポーチ ※壊れません
命の装備の耐久度がかなり低くなってきた。そろそろ壊れてしまうが、ここでは買い直しができないから、再び初期装備に戻ってしまうな。あの装備の命はキマってたんだが。
最後までお読みいただきありがとうございます
意外とキン○スライムは、強いんだよ!




