表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

プロローグ

 プシュゥーーー

 バスが気が抜けるような音を立てながら、出入り口を開く。

 このバスに乗っていた人たちは、我先へとバスから降りようとする。

 乗ってこようとする人は誰一人としていない。


 「……き、…にき」


 横から、声が聞こえる。どうやら誰かを呼んでいるようだ。


 「あにきぃぃーーー!!早くおきろぉぉーー!」

 「いってぇぇぇぇぇーーー!!耳がいてぇー。両耳が痛い!?」


 横(右側は窓になるため左側)から、耳を劈くような声が左耳を貫き、右側の耳まで被害を及ぼす。

 キーンという不快な音がしばらく続きそうだ。


 「なんだよ、そんなに大声出して叫ぶなよ。周りの人たちに迷惑がかかるだろうが」

 「もうバスからみんな降りたよ。残ってるのは僕達だけだよ」

 「ん?もう着いたのか。それならそうと早く言ってくれたらいいのに」

 「言ってたよ…それも、着く10分前くらいから」

 「そうか、そりゃあありがとな」


 感謝の気持ちを込めて、目の前のいもう……と、ではなく、弟の頭を撫でる。これが、妹であれば、さらに発展したところまでやっていたかもしれない。

 ……嘘だぞ?たぶん…


 目の前にいる弟は、長時間退屈なバスに乗っていたため、表面上は疲れたというような感じだが、きっとこの裏側は、喜びと楽しみそれから期待でいっぱいであるだろう。

 なんせ、これから俺達兄弟2人が楽しみでやまない、大手ゲーム会社、銀河社の最新ゲーム

《Adventurer of Another Earth Online》のオープンβが始まるからである。

 このゲームは、最新技術であるヴァーチャルリアリティーを取り入れたゲームである。

 日本では、大体10番目。世界的に見れば50~60番目ほどの、順番で開発されたものだ。

 かの、無料動画共有サイトヨーチューブや、テレビで発表されたコマーシャルで発表さてた動画では、美しい景色や華麗なスキルと呼ばれる技、リアリティーあふれるモンスターの数々。その他もろもろが、あった。それらをを見て、その世界に惚れこんだ弟が、このオープンβに駄目でもともとの覚悟で抽選に応募してみたところ、見事当てたのである。

 しかも、より多くの人に知ってもらうとの銀河社のコンセプトの元にあった、ペアチケットの抽選枠を見事引き当てたのだ。よって俺もここにいる。

 その報告を聞く際、大声で叫びながら走りながら近寄ってきたときは、一瞬「あいつは誰だ?」と疑ったほどだ。それほどうれしかったのだろう。

 ついでに言えばVR機は、最近はずいぶんと落ち着いたが、少し前まではかなりの高額で、中流の家庭に生まれてきた俺達でさえも、さらに言えば中流の家庭が2つ合わさっても、買うのを躊躇うほど高かった。そんな機械を躊躇無くかえて、みんなと一緒にやろうというお坊ちゃまやお嬢様が、普通の高校と中学に通っている俺達兄弟が出会えるはずが無く、初めてVRが搭載されたゲームが発売され、それを買ってくれと頼んだときは、人生の中で1,2位を争うほど必死だった。

 普段から、俺達は、特にわがままを言わなかったため、両親2人ともどうにかして叶えてあげたいと思っていたそうだが、その夢はこれまで叶った事は無い。

 別に死んだわけではなく、いまから、体験することができるからだ。


 2人でバスを降り、トランクに預けてあった自分達の手荷物を受け取り、目の前に聳え立つオープンβの会場へ歩く。

 声も出していないのに、不思議と出す足が重なる。それに気づいたみことが、かすかに吹き出す。


 「どうした?早く行こうぜ」

 「いや、なんでもないよ」


 返事と同時に、反対の色を帯びた足が再び同時に前に出される。気づいたのか定かではないが、またもや命が少し笑う。今回は、兄である優樹ゆうきが気づくことは無かった。

 


 ◆◇◆


 会場に入ると、すでにホールは人で埋め尽くされていた。まぁ、俺達が最後に降りたから、当たり前なんだけどな。

 どうやら、ここでは本人確認と、体の精密検査が行われているようだ。


 VRMO-RPGでは、もちろんのこと容姿を変えることもできる。だが、従来のMMO-RPGとは違い、性別を偽ることができない。俺は、元から偽る気など無かったが。

 理由としては、まずは、VRでは頭の中のα波とか、β波とか言う電気信号を機械で受け取り、それを元にゲーム内のプレイヤーが動くらしい。(そこまで医学に精通していないので、詳しくは分からない)そこで、現実いつもの体の骨格と、ゲーム内での骨格に違いがあると、ゲーム内でプレイヤーが思い通り動かなかったり、ゲーム内で動いても、現実で動かなくなったりする。

 男と女とでは、若干ながら骨格が違い、上記のことが起こる可能性があるため、性別を変えることができないらしい。

 しかも、人個人でも若干違うため、こうして一人一人しっかりと検査をする。めんどくさいと思わなくも無いが、動かなくなるのは勘弁なので、諦めてしっかりと検査してもらうこととする。


 ホールは、大きく2つに分かれている。もちろん男女でだ。

 俺達は、いさぎよく左側、男の人がいる方に入っていく。

 ……長いこと待った。

 このホールには、大体5000人ほどがいた。ほぼ全てがオープンβの参加者であろう。ここは、大阪府の会場だが、ほかにも、愛知県や福岡県、高知県、新潟県、北海道にも会場があるため、AAEOは最初は混雑するだろう。ちなみに、これらの会場の参加人数の合計で、20000人が参加するそうだ。

 そして、自分の番が来た。横目で、隣の所へ入っていくみことが見えた。出てくるのはほぼ同時になりそうだ。


 「ふぅぅーーやっと終わった」


 そこまで長い時間検査をしていたわけではないが、早くゲームがしたかったため、長く感じてしまったのだ。実際、CTスキャンのような機械に寝転んで、体全体を調べただけなのだ。


 「あ!兄貴も終わってたんだ」


 2人がでてきたのは予想通りほとんど同時だった。

 2人の手には、USBメモリーがあり、この中に体の骨格の情報が入っているのだと簡単に推測できる。ついでに、このメモリーは、VR機のキーにもなっている。これが無くては、何のためにここに来たのか分からなくなってしまう。

 

 「部屋に行こうか」


 命がそう言った。返事を待たずに、また、返事をせずに部屋へ向かった。


 ◆◇◆


 ここでは、1ヶ月間5000人の人たちと過ごすことになる。もちろんのことだが、そんな人数が一斉に動くと、混雑しかしないため、時間が大変かかる。そのため、各フロアごとにスケジュールが決められている。ご飯の時間とか。俺達は、2階の209号室に泊まることになっている。

 たぶんどの部屋も同じだと思うのだが、入るとすぐ右手にクローゼット。その近くに電灯のスイッチ。左手にはバスルームと、トイレが配置してあった。少し進み、少し部屋が広くなったところの左手にベットが2つ置いてあった。2段ベットではないらしい。右手には、PC2つが置いてあり、そのサイドに2つVR機が置いてある。

 普段は、ゲームしかしないが、かなり部屋は広いようだ。狭いよりは断然いいのでありがたい。

 俺達は、部屋に入ると、手に持っていた小物を入れたかばんをそれぞれが使うベッドの近くに置く。先に送っていた荷物はすでに置いてあるようだ。

 そして、PCを起動し自身の骨格のデータを保存する。そして、そこから見た目を弄る。

 俺としては、見た目なんぞどうでもいいが、命が少しくらいは弄っていたほうがいいというので、少しだけ変えることにする。

 目の色を金色にしようと思ったが、色が少し強い気がする。もう少し抑え目でっと。

 髪の毛は、薄い銀色でいいだろう。

 うん、これで完成だ。


 「よし、これでいいかな」

 「兄貴はやいな。僕は今から少し変えるとするよ。兄貴どんな風にした?」

 「こんな感じだな」


 今さっきまで操作していた画面を見せる。


 「なるほど、こんなのにしたのか。兄貴らしいな」


 画面を見て、命がらしいといってくれる。

 なんだか少しうれしい。


 「そうかぁ?」

 「うん、兄貴らしいよ。これと一緒の感じにしていい?」

 「おう、いいぞ」

 「ありがとう」


 同じような色にするみたいだ。

 そういう風に思っていると、命が画面を開いたみたいだ。


 「なんだこれはぁぁぁ!??」


 いきなり、命が声をあげ始めた。


 「どうした!?」

 「これ、これ見て……」


 指を指しながら、こちらを見てくる。

 指を指したほうを見てみると、そこには男の命が映っておらず、僅かに脹れた胸部、少し丸みを帯びた身体つきをした、の命が映っていた。


 「………」

 「なんか言ってくれよ!!」

 「んーー。このままで行ったら良くねぇ?」

 「良くないよ!!」

 「でも、機械でさえも、お前を女だと認知したんだぜ。これは諦めるべきだろ」

 「そうなのかなぁ~~」


 そう、命は実は美少女だったのだ!(※違います)

 目はクリッとしており、艶やかに濡れた唇。体はほっそりとしており、男の子独特のたくましさは微塵も感じられない。来週切りに行こうとしていた髪の毛は、オープンβが入ってきたしまったため、肩にかかるほど伸びている。

 逆に、検査をするときに、よく疑われなかったものだと感心していたのだが。


 「僕、ちょっと言って来る」

 「ちょっと待てぇー。もう夜も遅い、諦めるべきだ」

 「でも、これじゃあ……」

 「大丈夫だ。絶対()として通用する。自身を持て」

 

 え、そう……?と、上目遣いで確認をしてくる。

 お前は、美少女だ。機械も間違えるほどの容姿だ。大丈夫だ。自身を持て!

 そんなことで説得できるのか?と、自分自身でも疑問を持ちながら説得を試みる。


 ◇


 ピピピピピピピピ

 午前6時にセットしておいた目覚まし時計がなる。


 「ん、くぅぅぅぅ」


 一度背伸びをすると、周りがだんだんと見えてくる。

 横からも同じような声が聞こえることから、命も起きたようだ。


 「やっぱり兄貴は早起きだよなぁぁ」


 ご丁寧に、あくびをしながら、ほめてくれる。欠伸が無かったらもっと良かったのに。

 一度起きると、2度寝しないように、顔を洗う。そこで、昨日お風呂に入っていなかったことに気づく。


 (そういや、昨日は説得で疲れ果てたから、そのまま寝たんだっけ)


 「命~。お前、昨日風呂はいったかぁ~?」

 「うん、昨日は兄貴がすぐに寝たから、ゆっくりと入らせてもらったよ~」

 「そうかぁ~それじゃあ今から、風呂使うな~」

 「りょーかい~」


 ここの風呂は、なぜかいつも綺麗な温かいお湯が張られている。いまは、ありがたいことだが。

 ~30分後~

 

 「ふぅぅぅ。気持ちよかった!」

 「あれ?ずいぶんと早かったね。」

 「いや、早くねぇし。逆に俺にとっちゃ長かったくらいだ。」

 「へぇ~。僕は、普通に1時間は入るからねぇ。特に最近は。」

 「あぁ、髪の毛な。」


 それは、自分の所為だ。とは、口に出さなかったぞ。


 「そうそう。これの手入れに時間がかかるんだよ。慣れてないから」

 「まぁいいや。準備済ませたのか?」


 無視された……と、頬を膨らませて、若干すねる。丁寧に唇に指を添えて。

 か、かわいく……なんかないぞッ。これは、妹。もう、決定。発展はしないぞ?

 なんとか、落ち着かせる。


 「うん、今さっき終わったとこだよ」

 「そうか、んじゃあ俺も済ませるとしますか」


 自分が使うVR機に近づく。すると、ひとりでに開く。骨格の検査をしたときのような機械の中に入り寝転ぶ、右手の近くにある電源装置の近くにUSBメモリーを差込み、電源をonにする。

 すると、頭の中に声が響いてきた。


 『ようこそ、Adventurer of Another Earth Online の世界へ。この世界では、貴方達プレイヤーが、世界からのクエストである、大アルカナクエストと、小アルカナクエストをクリアしていきます。時には仲間達と一緒に戦い、時には苦渋を呑まされることになるでしょう。そんな困難を乗り越えた先には、今まで見たことのないような景色が貴方達を迎えることになるでしょう!』


 若い男の人の声のようだ。

 早くしたいと、体が訴えてくるが、なんせ9時からしか入ることができない。残りの2時間は、クローズβの攻略サイトをみて、少しでも早く進めることのできるようにしておきたい。

 VR機から出て、隣のPCを起動させる。


 ブゥン


 無機質な、起動音が広がる。

 すぐにサイトを見つけ、命と一緒にあーだこーだと言っていると、すぐに2時間など過ぎそうだ。


 「もう8時50分か、そろそろ入っておくか」

 「うん、そうだね」


 気づけば、本当にアッと言ううちに過ぎてしまいそうだった。危なかった。

 そして、再びVR機に入り、今度こそAdventurer of Another Earth Online の世界へ入り込んだ。



 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

感想等お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ