書類審査(2)
僕は一次審査の合格を母さんに伝えた。「母さんはどういう顔をするだろう? どんな反応をするだろう?」。そう考えると少し緊張したが、何よりも「合格」という響きを早く伝えたいその一心で打ち明けたのだった。
「これ、いつの間に送ったの?」
母さんは驚いた様子でまずそれを聞いてきた。応募を内緒にしていた事に対して怒られるのかと思ったが、「夏休み中にちょっと新聞で読んで……」と僕が素直に打ち明けると、母さんは嬉しそうに言ってくれた。
「へぇー、良かったね」
反対されるわけも無く、深く追求されることも無く、母さんはただそう言って何度も感心した様子で「アンタがねぇ……」としきりに口にしたのだった。
それはその日のうちに父さんにも伝わったようだ。でも、取り立てて父さんからは何も言われなかった。
それから二週間が過ぎ、「最終書類選考合格」の通知が届いた。そしてそこにはオーディションの日時、時間などが書かれたプリントも同封されていたのだった。
「最終も合格したよ。今度はオーディションだって」
母さんにそれを話すとまた素直に喜んでくれた。そして今度は父さんや妹の雪菜も「おめでとう」と声をかけてくれた。さすがに家族みんなに言われると照れくさくて「まだ早いよ」と僕は謙遜したがどこかで少しばかり鼻が高くなっていた。
こんなに温かい家族が居ることで、僕はきっと甘えん坊に育ってしまったのだろう。そして幸せを幸せと感じ取れないからこそ、僕は僕なりに茨の道を探しているのかもしれない。茨の道を笑って過ごせる自分の居場所。自分だけしか認められない居場所を。
そう言えばその日の夕飯は、いつもよりちょっとご馳走だった気がする。それに気づいたのはもう何年も経ってからだった。