書類審査(1)
新学期が始まった。相変わらず淡々と流れる生活を送っていたが、実は授業中も審査の事で頭がいっぱいだった。あれからというもの、学校から帰宅すると真っ先に郵便受けを開く作業を楽しみにしていたが、なかなか審査結果の通知は来なかった。
一ヶ月ほど経ち、願書を出したことも少し忘れかけてしまった頃、家に帰ると郵便受けの中から白い封筒らしき物がはみ出していた。特に気に留めることなく蓋を開けて取り出し、その大きな封筒の表紙に目をやると、差出人である社名が印字されていた。
「あ、きた!」
それは紛れも無く僕が願書を出した芸能プロダクション『フェイス・アクト』からの封筒だった。僕は慌てて封筒を真上にかざし、光にすかして中を確認した。間違いない。中に何かは入っている。……いや、もちろん空の封書など届く訳も無いわけで。ただ、そんな変な事が気になるほど僕はその時舞い上がってしまっていた。
僕は手紙の角度を変えて中に書かれているであろう文字を探ろうとするが、さすがに合否の結果までは分かるはずも無く……。僕は家の中に入ると靴も脱がず玄関先でその封筒を開け始めた。そして慎重に手を差し込み、中に入っている紙を取り出したのだ。
「おや?」
てっきり便箋か何かで届くと思っていたが、驚いた事に金縁の入った一見表彰状のような紙が入っていた。そしてそこには僕の名前である「奥村光弘殿」と書かれており、その横に「第一次書類審査に合格しました」という文が書かれていた。
「……う、受かった」
まだ一次の書類選考、それもオーディションを受けるための段階のもの。それでもその時の僕にとっては、どんな形であれ自分の存在を認められたという事が、嬉しくて仕方が無かったのだ。
その日の夜、僕は何度も何度もその文を読み返したのだった。