-12- オーディション(8)
僕の『告白』が轟いたその時、隣のテーブルに居た坂野先生がチラッとこちらを見た気がした。目視はしていないが、雰囲気でその目が全く笑っていないと感じ取れた。するとどうだ、周りのライバル達も此方を伺っている事が、背中越しに伝わってくるではないか。そして、それらの眼差しも、坂野先生と同じく「失笑」という言葉が相応しい視線だった。もちろん、目視はしていないが。
僕は途端に「やってしまった」と心で呟いた。気付けばテンションはガタ落ち。そのクセ周りの反応はいたって冷静に受け止められた。おかげで目が泳いでいる事に自分でも気付いていたくらいだ。そして僕は改めて感じ取った。これは間違いなく大失敗だ……。
「はい、奥村さん結構ですよ……。ではこの採点表を受付に渡してから帰ってくださいね。お疲れ様でした」
川島先生は少し笑みを浮かべながら僕に採点表を差し出した。僕は特に気にも留めずに「ハイ」と応えて受け取ると、一目散に部屋の出口へと向かっていた。
「まてよ……おかしいじゃないか」
ふと、部屋を見渡した僕は、ズラリと勢ぞろいした先生方を今一度見渡す。僕が審査を受けた先生はわずか三人。しかし、どう考えても三人で審査が終了とは思えない先生の数だ。そして、この理由が何を意味するのか思いつくまでに、そう時間はかからなかった。
「つまり、『お前なんか審査するまでもない』って事か……」
僕は力なく受付で採点表を渡すと、そのまま玄関先のロビーへ向かい肩を落とし歩いていく。冷たい廊下の中、背中越しに冷たい視線を感じながら……。
「やっぱ『結婚』は違うよな……せめて『付き合って』だよなぁ……」
今更悔やんでも仕方が無いのに、後悔の数が冷たい視線と同じように僕の脳裏に突き刺さる。払っても、払っても、それは一向に止む気配が無い。
やがてビルの玄関が見えてくる。僕の目の前に太陽の光射す現実の世界が口を広げて待っていたのだった。