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貴方の街へ

羽はもう無いから動けない。


変わりにこの足で・・・


歩いてみようと思った。


歩ければすこしでも貴方に近づけると思って。


私は歩く練習から始めた。


私はいままで翼に頼りすぎて歩くことを知らなかったから。


一歩一歩貴方を目指して歩いていく。


何日も歩いた。


私は『ヒト』じゃないから食べ物なんて食べなくても平気。


だから私は自分の命を歩くことにだけ使った。


たった一人、愛する貴方を目指して。私は何日も何ヶ月も歩いた。


貴方のことを考えて歩いた。


あと少し。あと少し歩けば貴方に会える。


そう考えていればなにも苦痛なんて無かった。



どのくらいの時が経ったのだろう。


私は『ヒト』じゃないから時間は関係ないけれど・・・


『ヒト』は?『ヒト』には限られた時間しかない。


もしかしたら貴方はもう居ないんじゃないか、


そんなことを不安に思い始めた頃・・・





貴方の街にやっとついた。


私は迷うことなく足を進めた。


貴方の家に。




そして昔どおりに私は貴方の家の屋根に登る。


翼が無いから登るのは大変だった。


「よいっしょっと・・・」


やっと登りきった私の目に入ったのは・・・


空と、貴方だった。


「!?」


すこし年を取った貴方が驚いた顔で私を見る。


「私のこと・・・覚えてますか?」


無言で首を縦に振る貴方。


「遅く・・・なっちゃいました。 ・・・・・・!?」


気付いたら私は貴方の腕の中に居た。


久しぶりに触れた貴方の温もり。


「・・・あったかい・・・」


『ヒト』はこんなに温かい生き物だっただろうか。





・・・・・・違う。貴方だから温かいんだね。


ずっとこの温かさを求めていたのかな。


だから歩き続けられたのかな。





「もう、私は翼が無いから空に上がれません。


 だから・・・ここに居ても・・・いいですか・・・?」


「っ・・・」


返事の変わりにギュっと強く抱きしめられた。


なくしたはずの、居場所が・・・私に出来た気がした。


ううん。私の居場所はずっと決まってたんだ。


私の・・・大好きな、愛してる貴方の居る場所が・・・


私の居場所なんだ・・・。





貴方の耳元に口を寄せて、ずっと言いたかった言葉を言う。


私の想いを、伝える。





      大好き。愛してます。



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