「第5章:森の試練と、隠された力」
クルサとノイラは教室に戻った。
すでに全員の生徒が席についており、授業は再開されていた。
最初は何も違和感がなかった。
しかし、クルサは心の奥で何かがおかしいと感じていた。
(……何か違和感がある。だが、何だろう……。確かめてみよう)
彼は突然、大声で叫んだ。
「……ここ、実際どこですか!?」
フェンは淡々と答える。
「もちろん、ここは教室だよ」
「このクラスは20人のはずなのに、今21人いる気がします。それに、何かみんながいつもと違う……」
クルサは警戒しながら周囲を見渡す。
ノイラは首をかしげ、心の中で思う。
(……クルサ、どういう意味?私は別に変だと思わないけど、気をつけておこう)
その瞬間、フェンの目が黒く変化した。
空気が一変し、恐怖が教室を包む。
フェンの姿は漆黒に変わり、不気味さを増した。
「よく気づいたな。君はこの異変を感じられる」
漆黒の姿は続ける。
「君たちはもはや教室にはいない。ここは――私の美しき世界、霊界だ!」
帽子を落としながら、力強く宣言した。
クルサとノイラは恐怖に凍りつき、心の中で思う。
(どうすれば……!?)
二人は手を握り合い、教室から逃げ出した。
フェンの異形の姿は、悠然と彼らを追う。
白と黒の長い廊下、背後には何者かの目が光るような感覚――。
出口を見つけた二人は互いに目を合わせ、走る速度を上げる。
すると、体が徐々に軽くなる感覚に包まれた。
漆黒の存在は呟く。
「……これは……興味深い。まさに、運命のエネルギー……」
その目に映ったのは、二人を包む白い光と、互いに向けた純粋な笑顔だった。
やがて廊下を抜けた先に見えたのは、出口と思しき扉――
だが、そこは広大な森だった。
「ここは……どこ?」
クルサが驚いて呟く。
「わからないわ」
ノイラも答えた。
森を進むと、高く生い茂る樹々に囲まれ、ノイラが後ろでつまずき二人は転倒。
しかし、二人は笑い合った。
やがて川にたどり着き、茂みの陰で休息をとる。
水源近くで流れも緩やかだった。
クルサは持参の水筒から水を飲み、ノイラにも差し出す。
「ノイラ、水いる?」
ノイラは一瞬頬を赤らめるが、渇きには勝てず、
「も、もらってもいい?」
「もちろんだよ」
笑いながら二人は水を分け合った。
しかし、漆黒の存在は森の中を進み、低く響く声で叫ぶ。
「二人の子供たちは、どこだ――!」
二人は身を隠すため茂みに飛び込む。
着地の際、ノイラがうっかりクルサにぶつかり、唇が触れてしまう。
一瞬赤面する二人だったが、すぐに状況を思い出し、冷静さを取り戻す。
「……作戦を考えよう」
クルサが囁く。
「私、後ろから仕掛けるね!」
「了解。僕が前から行く!」
クルサは目を閉じ、音や気配から相手の位置を探る。
相手は川の西岸、二人は南岸に位置していた。
作戦開始。
ノイラは隠れながら走り、クルサはフェンの剣を取り、疾風のごとく前方に突進。
相手は気づかず、鋭い一撃を受ける。
「珍しい……新入生が俺を傷つけるとは」
漆黒の存在は嘲るように呟く。
黒い棘が四方から飛来するも、クルサは俊敏に避け、切り払い、再び構える。
数が増えても、クルサは落ち着いて剣を振り、あらゆる攻撃を一瞬で切り裂く。
漆黒の存在はその速さに驚嘆する。
隙を突いてクルサは相手の背後へ回り込む。
漆黒の存在は背後に立つクルサを目撃し、戦慄する。
クルサの体は闇に溶け、白い線だけが視界に残る。
赤く光る瞳と剣――それだけが浮かび上がる。
一閃――見えぬほどの速度で剣を振り、相手は二つに裂け、粉塵となった。
息を整え、クルサは地面に寝転がる。
ノイラは茂みから現れ、クルサの頭を膝に置き、微笑む。
「クルサ、何してるの?」
「ちょっと休憩してるだけ、ふふ」
ノイラはくすりと笑い、「私の膝で寝たい?」
クルサは真っ赤になって拒否するも、ノイラは無理やり寝かせる。
やがてクルサは深い眠りに落ち、ノイラは優しく髪を撫でる。
「クルサ、あなた本当に格好いいわ」
目覚めたクルサは元気を取り戻す。
(……ここに何か気配がある。怖いけど、立ち向かわねば。ノイラのためにも)
茂みを見ると、フェンが立っていた。
「ついに見つけたな!」
「え、え、え、いつからここに……?」
「ずっと見守っていたんだ。ここは君たちを試す場所でもある。能力が十分か、入学に値するかを見極めるためにな」
一瞬緊張が走るが、フェンは続けた。
「よし、君たち二人は正式に合格だ!」
喜ぶ二人は抱き合った。
「でもまだ終わりじゃない。今後1ヶ月間は試験が続くぞ」
クルサとノイラは自信満々だったが、クルサが思い出す。
「フェン先生、つまり僕たちをわざと教室から追い出して、この試練のために森に誘導した……?」
「半分正解だ。君たちを外に出させたのは試験のため。でも、追いかけてきた漆黒の存在は、私の使役霊だ」
ノイラが手を挙げて訊ねる。
「その霊はどうなったのですか?」
フェンは地面を指し、霊が現れる。
「君たちの力を見て、感嘆していたようだ。特にクルサの能力――女性のような外見に反して、恐るべき気配を持つ。君たちは将来、大いなる力を秘めている……」
霊は言いかけたが、フェンが口を押さえる。
「さあ、教室に戻ろう」
「どうやって?」
「簡単さ。僕たちは相性抜群だな」
指を鳴らすと、二人は教室に戻った。
次の疑問:
あの霊の正体とは?
そして、本当はクルサとノイラに何を伝えたかったのか?
――答えは、まだ未来に眠る。




