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エリダヌスの昇天  作者: 血月 • 麗花


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3/9

「第3章:三分間の試練」

リリアナ先生とクルサの対決――

それは誰の目にも明らかなほど、異常で、そして壮絶なものになる予感がしていた。


クルサはフェン先生のほうを向き、静かに尋ねた。


「フェン先生。短剣や刀、もしくはそれに近い武器はありますか?」


「ちょうどいい。実はここに二振りの刀を持ってきていてね」


「……お借りしてもいいですか?」


「もちろんだ」


フェンはそう言って、二振りの刀をクルサに手渡した。


それを見て、リリアナが口を開く。


「準備はいい?」


「はい、リリアナ先生」


その声は、どこか楽しげだった。


生徒たちがざわめき、誰かが声を上げる。


「いち、に、さん……始めー!」


リリアナは静かに目を閉じ、深く息を吸った。

次の瞬間、彼女の周囲に複数の黒い魔力球が浮かび上がる。


「――これを避けられる?」


「……正直、やってみないと分かりません」


クルサは身体を低く構え、集中する。


「なら、受けてみなさい」


リリアナが指を振ると同時に、黒い魔力球が放たれた。


あまりにも速い。

視認すら困難な速度。


クルサは一瞬目を閉じ、次の瞬間、感覚だけを頼りに踏み出した。


わずかに前へ、右へ――

魔力球は、紙一重で彼の頬をかすめて通過する。


教室がどよめいた。


誰も軌道を見切れなかったはずの攻撃を、避けたのだ。


フェンも目を細める。


(……経験者でも難しいはずだ。しかも、入学初日だぞ)


歓声が上がる中、クルサの表情は変わらない。


――油断したほうが、負ける。


それを、彼も、リリアナも理解していた。


次の瞬間、リリアナは三つの魔力球を同時に放つ。


数で逃げ場を塞ぐ、単純だが強力な攻撃。


クルサは一振りの刀を両手で構え、後方へ引いた。


そして――

目にも留まらぬ速度で踏み込み、斬る。


一閃。


次の瞬間、三つの魔力球は細かく分断され、霧散した。


刀を鞘に収めながら、クルサは静かに立つ。


リリアナは驚きを隠さず、内心で舌を巻いた。


(……想像以上ね。この子)


「……少し、本気を出してもいいかしら?」


「構いません」


クルサは真剣な表情で答える。


「戦いでは、相手の全力なんて分かりません。だからこそ、侮ってはいけない」


リリアナは小さく笑い、背中から剣を抜いた。


次の瞬間――

彼女の姿が消える。


(――後ろ!)


嫌な予感に突き動かされ、クルサは振り向きざまに防御の構えを取る。


剣と剣が激突した。


衝撃で、クルサの身体が吹き飛ばされる。


床を滑りながらも、彼はすぐに立ち上がり、再び踏み込む。


今度は互角。


二人の剣は何度も打ち合わされ、徐々に速度を増していく。


高速の応酬の中、クルサは一瞬の判断で剣の角度をわずかに変えた。


――その一瞬が、勝負を分けた。


リリアナの剣が弾き飛ばされる。


「……なるほど」


リリアナは感心したように言う。


「ほんの少しの角度変更。危険だけど、よく踏み切ったわ」


「成功すると思ったので」


クルサは親指を立て、満面の笑みを浮かべた。


その瞬間――


「はい、そこまで」


リリアナが手を上げる。


「三分経過。あなたの勝ちよ」


「えっ……本当ですか!? やった!」


クルサは飛び跳ねて喜んだ。


フェンが小声で尋ねる。


「……本気だったのか?」


「まさか。ここで力を出したら、校舎が消し飛ぶわ」


「……では、どれくらい?」


「人間の五倍程度かしら」


リリアナは続ける。


「身体能力は低い。でも、技術と感覚はクラス随一。

さっきの速度……隕石の終端速度に近かったわ」


「将来が楽しみだな」


「ええ。本当に」


その頃、ノイラがクルサに駆け寄る。


「すごかったよ、クルサ!」


「……正直、リリアナ先生が本気じゃないのは分かってた」


「それでも、すごいよ」


「……うん」


クルサは照れくさそうに笑った。


授業はその後、通常通り始まった。


昼休み。


クルサとノイラは並んで食事をしていた。


「ノイラは何を食べてるの?」


「ラーメン。クルサは?」


「スパイス煮込み肉。美味しいよ、食べてみる?」


クルサが差し出すと、ノイラは頬を赤く染めながら口を開いた。


「……美味しい」


「じゃあ、今度はこっち」


ラーメンを一口。


「これも、すごく美味しい」


遠くから見ていたリリアナはため息をつく。


「……今日知り合ったばかりよね?」


こうして、奇妙な対決は幕を閉じた。


クルサは確かに、リリアナの攻撃を耐え切った。


その意味を知る者は、まだ少ない。


――次章、クルサの日常は、さらに動き出す。

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