「第2章:能力試験」
クルサは、先ほど道を尋ねた男性が自分の教師だったことに、強い衝撃を受けていた。
「フェン先生……まさかこんな形で再会するなんて、予想外ですね」
驚いた様子でそう言うと、フェンは軽く笑った。
「私もだよ。正直、ここまでとは思っていなかった」
そう言ってから、フェンは教壇に戻り、クラス全体に向かって声を張り上げる。
「さて、今日は君たち一人ひとりの能力を見せてもらおう。ここに魔力測定用の魔法球がある」
そう言って、紫色に淡く光る魔法球を机の上に置いた。
「この魔法球は、肉体能力と精神能力を測定し、それを一般的な人間の平均と比較するものだ。
精神能力は、魔法を形成するために不可欠な要素であり、数値が高いほど魔法の素質も高い」
さらにフェンは説明を続ける。
「総合能力は、肉体と精神の倍率を掛け合わせて算出する。
例えば、精神が平均の2倍、肉体が3倍なら、総合で6倍というわけだ」
測定が始まった。
2倍、5倍、平均並み……中には、人間の平均の130倍という数値を叩き出す生徒もいた。
ノイラの測定結果は、
肉体能力が1.25倍、精神能力が1.75倍。
総合能力は、およそ2.18倍だった。
そして、次はいよいよクルサの番である。
フェンは彼に落ち着くよう促し、静かに手を魔法球の上に置かせた。
その瞬間、フェンは微かな違和感を覚える。
――振動……?
しかし、通常の測定で地面が揺れることなどあり得ない。
やがて結果が表示された。
肉体能力:0.5倍。
つまり、一般人よりも半分の力しかない。
一方で、精神能力は2.14倍。
総合能力は、1.07倍。
数値を見たクルサは、どこか満足そうに微笑んだ。
だが、彼はフェンにこう告げる。
「先生……この教室、合計で22人いる気がします。でも、生徒は20人で、先生が1人……ですよね?」
フェンは一瞬驚いたように目を見開き、すぐに笑った。
「……気づいたか」
そして、教室の奥へ向かって声を上げる。
「リリアナ先生、もう姿を現してもいいでしょう」
その瞬間、教室最後列の席から、一匹の黒猫が姿を現した。
次の瞬間、猫は人の姿へと変わる。
その人物は、教壇の前まで歩み出て、静かに言った。
「まさか、私の存在に気づく生徒がいるとはね」
教室中が騒然となった。
なぜなら、その人物は――。
リリアナ・ティニャード。
世界でも屈指の強者と名高い魔導士だった。
噂によれば、彼女の能力は、一般人の約一千四百万倍。
まさに、桁違いの存在である。
フェンが紹介する。
「みんな、こちらはリリアナ・ティニャード先生だ。
その恐るべき魔法から、“闇の魔女”とも呼ばれている」
生徒たちは一斉に拍手した。
リリアナはその中で、じっとクルサを見つめる。
(……やっぱり。この子……今、どこまで成長しているのかしら)
彼女はクルサに声をかけた。
「ねえ、あなた。名前は?」
「クルサ・ヴェイラルです。クルサと呼んでください」
クルサは丁寧に頭を下げた。
「クルサ、ね……
ちょっと私と“遊んで”みない?」
「……遊び、ですか?」
「一対一のゲームよ」
クルサは目を見開いた。
「もう少し、詳しく教えていただけますか?」
「簡単よ。
私の攻撃を、三分間耐えるだけ」
リリアナは楽しそうに微笑む。
「……正直、自信はありませんが……やってみます」
黒い魔導衣に長いスカート。
リリアナは眼鏡の位置を直しながら言った。
「じゃあ、始めましょう」
――こうして始まる、異常な対決。
クルサ vs リリアナ。
果たして、クルサは三分間、生き残ることができるのか。
その答えは、次章で明かされる。




