微笑ましい修羅場
「マリー。おまえとは結婚しない!」
「どうしてですか、クロアさま?! 私のどこがわるかったのですか?!」
「おまえを妻にするわけにはいかないのだ! おまえを妻にしてしまったら、おれはハーレムが作れない!」
「はあれむですって?! ・・・クロアさま、はあれむってなんですの?」
「ハーレムはハーレムだ。アシュもサーシャもミリアムといっしょにいるには、ハーレムを作るしかない! おまえと結婚したらハーレムなんてゆるされない!」
「でも、クロアさまはアシュたちとは結婚できませんよ」
「結婚できなくても、いっしょにいられるのがハーレムだ」
「そうなの?」
「結婚のかわりにみんなといっしょにいられるのがハーレムだ」
「私もハーレムに入ることはできないの?」
「マリーはコウシャクレイジョウだ。ハーレムには入れない」
「なんで、コウシャクレイジョウはハーレムに入れないの?」
「マリーのちちうえは、おまえがハーレムに入ることはゆるさない。コウシャクレイジョウだからな」
「そんな! 私はクロアさまといっしょにいられないの?!」
微笑ましい二人の、微笑ましい修羅場を見守っていた王子の乳母が口を挟む。
「大丈夫ですよ。マリー様はクロア様とご一緒にいられるますので、ご安心ください」
「え?!」
「アシュもサーシャもミリアムも犬ですので、ハーレムは必要ではありません。殿下はマリー様とご結婚できますよ」
「「ああ~、よかった~」」
「ですが、クロア様はハーレムやマリー様と結婚できないなど、どなたにお聞きになられたのでしょうか?」
「「~~~!!」」
乳母の笑顔が怖すぎて、クロアとマリーは声にならない悲鳴を上げた。
その後、クロアとマリーの結婚を妨害する為に、犬たちと一緒にいる――モフモフハーレムを作る――にはマリーと結婚できないと吹き込んだ者が姿を消したという。
幼い王子に婚約破棄やハーレムを吹き込むような大人に当然の処遇だ。
王立動物園を作ったクロア王は動物好きと知られており、王子時代は小動物を何匹も飼っていた。
市民にも開放された王立動物園に視察に訪れるクロア王の隣りには、笑顔で微笑む王妃マリーの姿があったという。