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「……わ……私の……婚約……破棄宣言は……ま……間違い……でした」
「ちょっと……シークムンド様?」
シークムンドの心変わりに、アクセリナだけが信じられないと言った様子。
「漸くまともな判断となったか……それでも遅すぎるがな」
「どうしてよっ、カルロッテ様は次期王妃に相応しくありません。そうでしょ、シークムンド様だってそう言っていたじゃない。学園の皆だって、カルロッテ様には辟易していると。誰もカルロッテ様を支持していないのに、どうして急に意見を変えてしまったの?」
アクセリナから出てくる言葉に全員が追い詰められ『それ以上言葉にするな』と祈っていた。
「……君は……何も知らないのか?」
「なんのことですか?」
シークムンドはアクセリナを真正面か見つめ、何かを悟った。
「シークムンド、それが貴族と平民の違いだ」
「……はい」
諦めたように瞼を閉じるシークムンド。
「なんのことですか? シークムンド様、分かるように説明してください」
「そなたは何処までも教養がないようだな。教えてあげなさい」
「はい……『異世界人』は我が国にとって、とても貴重な存在なんだ。その者がいると国は大きく発展すると言われている。だが、異世界人は自身が異世界人であることを隠す傾向にある。己の知っている常識と我が国の常識の違いに困惑し、なかなか打ち明けることができないと話す。なので我々は異世界人と思しき人間が現れた時、丁重にもてなし保護する。我が国は、過去の異世界人の恩恵を多大に受けている」
「……そうなんだ……なら、早く言ってくれたらいいのに」
真剣に伝えるシークムンドとは対照的に笑みを向けるアクセリナ。
事の重大さを理解していない様子を見せる。
「アクセリナ?」
「シークムンド様にも黙っていましたが、私も異世界人よ」
アクセリナの発言に驚くことも忘れて、全員が言葉を失う。
「そなた、今なんと言った?」
「私も異世界人です。あちらでの名前は竹倉志乃って言います」
「……アクセリナ……もう、止めてくれ」
「シークムンド様? どうされたんですか? 私が異世界人で喜んでくれないんですか?」
真実を告げたのに、シークムンドが喜んでくれない事にアクセリナはいつものように怒った雰囲気を醸し出す。
「……アクセリナ嬢と言ったな」
「はい」
「そなたが異世界人と言うのは誠か?」
「はいっ」
真実を告げれば再び皆に崇拝されると確信しているアクセリナ。
返事からも自信に満ち溢れていた。
「そうか……異世界人は、様々な分野で活躍した。医療の発展から農業改革、気候や地形などの地理学、食事の改善に観光促進、芸術関連に精通している者もいた。中でも我が国を救ったのが、未来を予言する者だ。そなたにはどんな才能がある?」
「私の……才能……私は……」
過去の異世界人の功績を告げられ困惑するアクセリナ。
「今までそなたに目立った功績が無いのは、能力を隠していたのだろう? だが異世界人であると宣言した今、能力を隠す必要はない。一年間そなたに時間をやる。その間に自身の能力を発揮してほしい」
多くの証人がいる中、アクセリナは自身が異世界人であると宣言した。
この国の人間は、異世界人には特別な能力が備わっていると信じている。
なので、自ら異世界人と名乗るのであれば『能力を見せよ』という国王の言葉。
隠し続けた能力を発揮できなかった場合、王族に対して虚偽の発言をしたことにより処分が下されることになる。
アクセリナは自身の能力を発揮する為の一年間という時間が与えられた。