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3日目その2 テスト平和条約

俺は机の上にある裏向きのテストとにらめっこしていた。

テストのルールは学校と同じ。

全員が静かに座り、先生が「始め」と言ったら

テストを表にする。

他の席は死神の男の子たちでうまり、

後ろは四人の監視、前にはあの女の子と、

そいつに監視されているひつじかいる。

協力者は、ただ1個。

机の中に隠した100円王。

時計の針が予告タイムを知らせる。

女の子が言う。

「始め」

一斉にテストをめくる音。鉛筆をもつ音。

「名前を書きなさい」

名前欄のところに鉛筆をすべらせる。

長崎ではなく カンニング様。

ーーよし テストの問題を解くか。

テストの内容はこうだった。死神の歴史。

俺の体から汗と絶望がにじみ出てきた。

これはわなだ。

人間の俺が、死神の歴史なんて分かるはずがない。

こいつらは始めから大統領を殺す気だ。

周りの子供たちはどんどんと解答用紙に

文字を打ち込んでいく。目は子供ながら

娯楽に満ち、腕はテストの上で躍動していた。

手が止まった。心拍数が大きくなる。

ーー俺、この問題 分からない。

そんな中、すぐ後ろの男の子が俺のくびをしめようと、

ゆっくりと近づいていた。


次の瞬間すぐ後ろで机に頭をぶつける

ような、大きな音がした。

「きゃ!」

「落ち着いてください カンニング様 狙われてますよ」

円々姫が机の中から小さな声で言う。

「一つ後ろの席の子供か、カンニング様のくびをしめようとしていました。

まあ、ひつじが気絶させましたけど」

俺は ひつじを見る。手から煙が出ていた。

監視の女の子はちらっとひつじを見ただけで、前を向いた。

このテストの中、俺を殺そうとしているちびっこどもがいる。

早くテストを終らせ逃げたい。

「やっぱり、カンニングしかない」

カンニングをするには、一時的にこいつらの殺意を止め、

一点に集中してもらわないといけない。

横の人のテストをちらっとカンニングをしてもいいが、監視に、ばれる。

鉛筆が机から落ちると周りの人間は音で鉛筆だと認識する。

意識がふれた瞬間といえるだろう。

鉛筆よりも注目を浴びて、意識を変えるものはなんだ。

ーーー欲の一つ もちろん、金だ。

「円円姫、お前自身が必要だ」

「自由に使え」

俺は100円玉を手に持つ。

ばれないように机の下に腕を移動する。

ここからが演技だ。これからやろうとしていることが

俺だとばれたら、終わる。

だから、無関心をつらぬく。

俺は100円玉を床になげつけた。

「チャリン チャリンチャリリン!チャンチャン」

ーーそれ 自分で言うのか。

そのばかげた音と同時に、死神たちが床を向いた。

死神も金の音を認識できるのだ。

俺はまだ、無関心をつらぬく。

先生役の女の子が100円玉を拾う。

「ここに金をもってきたのは誰だ。校則違反だぞ」

死神たちが女の子の方に集中した。

俺は動く。 体を左にかたむけ、隣のやつ

テストを見る。

ーーこれがああなって、こうなって、そうなるのか。

テストと向き直る。俺は暗記した答えを書く。

これを何十回かくり返す。

よし、テストは終了、後は円々姫を回収するだけ。

「この金は私があすかっておく」

おい待て! 100円玉が俺から離れていく。

「円円姫ーッ!」

「カンニング様ーッ!」

だめだ、ここで席を立ったら反則になる。

どうすればいいのだ。

「その金を返してくれないか」

女の子に近づいたのは、ひつじだった。

「返しません」

ひつじが一歩前に出る。女の子が一歩下がる。

死神と言っても、相手は子供だ。

~このまま追い込んで、金を奪回してくれ !

ひつじが前に出る。仮面からは言い寄れぬ暗雲が出ていた。

「やめろ」

女の子が下がる。それでも、ひつじは追い詰める。

女の子の肩が壁にぶつかる。

「やめて!」

ひつじは 手を出した。

そして、壁に手をドンとした。

「・・・え」

暗雲が一気にピンク色へと変わった。

女の子の顔が 徐々に赤くなっていく。

「金、返してくれないか」

「いや いやいやいやいや!」

女の子が顔を横にぶんぶん振る。

ひつじの顔でそんな興奮するのか?

「なら、これではどうだ?」

ひつじが仮面に手を添え、それを脱いだ。

仮面の下から現れたのは、本当に美しい顔だった。

高い鼻、サラサラな髪、

意思が吸い込まれるような、奥のある目。

ひつじというか、ただのイケメンだろ。

「返してくれるかな?」

「あの・・・、その!いえ、いや・・・はい!」

女の子が差し出した手をイケメンは優しくにぎりしめた。

「ありがとう」

遠くで見ていた俺は、心でもちをやいた。

「テスト、終了」


俺は手を組んで待つ。

男の子たちが

地獄が天国かの分かれ道という

テストの結果の場へと歩いていく。

そこにはテストを持った女の子がいる。

「カンニング」

「はい!」

俺は席から立ち、短い道を歩く。

途中で、仮面を付け直したひつじと女の円々姫に出会う。

二人とも、俺をにらんでいた。

俺は、女の子の正面に立つ。

俺の顔は緊張と警戒を示すように目が細く

女の子は無表情だった。

女の子が一枚の紙を俺に差し出す。

「どうぞ」

俺はテストを受け取り、すぐ表し結果を見る。

結果は

「え」

10点。

おいおい おい、待ってくれ!あっ!

俺は、横を通りすぎようとするカンニング

をさせてもらった男の子の肩をつかむ。

「ねえ、ねえ、お前何点だ!」

男の子はテストを見せて言った。

「10点だよ」

俺は女の子と正面に向き直り叫んだ。

「俺の周りのやつ ばかしかいないじゃないか!」

テストは90点以下、これでは

「俺の父が殺される!」

俺が殺したかった!

「父は殺さない。」

「え、なんで」

なぜか、女の子は恥かしそうな顔をした。

「今、なぜか我の心拍数が上がっている。

これでは、正当な命令ができない気がする。

だから、我は病院にいってくる。」

そして、女の子は去っていた。

皆が呆然としている中、俺は無言でひつじに近づいた。

「お前、やってくれたな」

「カンニング君の失敗を予想したまでだ。結局

人間も死神も顔しか見ていないんだよ」

「いや、俺ができないことをやってくれたなという

意味だよ」

初めの女の子の数は13だった。

でも今は、12。

自己肯定感は低がっているが、中途半端さが

なくなって、初めよりは子供らしくなった気がする。

武器なしで、数を変えるなんて俺にはできない。

「俺は二人に聞こえないように、小声で言う。

「捜査部って、ボスを探すだけじゃないんだな」

だけど、この小声を円々姫は拾った。

「そうですよ。私たちは優しいのです」

「そうか」

まあ、父は殺されないのだからいいか。

ーーー父か・・・

そういえば、なぜ俺は大統領が、父だと信じる?

根拠は女の子の言葉だけなのに。

ーーー天使と悪魔が行方不明になった。

これは、過去のひつじの言葉だ。

ーーー父は、行方不明になった。

俺の過去。

ーーー学校に来たあなた

そして、テストの裏に書いてあった、

天使と悪魔の秘密の情報。・・・待てよ

これらの情報から、大統領が父ということを

示すどころか、父が天使と悪魔のどちらかの

ボスだという疑念が出てきた。

そして、父と交流したであろう人物は、つるき。

「ひつじ、俺をつるきと会わせてくれ」

「なら、同時に、つるきの口をわってくれ」

「われなかったのか、ひつじ」

「うむ」

やっぱり、顔だけでは解決しないことのほうが多いのだ!


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