表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/19

3日目その1 家族の秘密

玄関のチャイムの音で目が覚めた。

デジタル時計は、朝の9時を示していた。

俺は、机の上にある100円玉に呼びかけた。

「円々姫、出てくれないか」

「私はいやです ぐー」

今日は平日だと言うのに、学校は休みだ。

昨日の爆発事故がテロだと判断され、

学校が厳重警戒されている。

まあ、そこらの生徒が、体育祭・文化祭はやら

せろと文句は言っているが。

「面倒くさいな。借りは、してもらう。」

俺は扉を開けた。そこには、俺らのボス、ひつじがいた。

明るい朝に暗いひつじの仮面とは、シュールだ。

「いや、カンニング 君」

「それが、俺の本名か?」

「そうですよね」

「正解だ」


昨夜の百金で、俺は6割がカリスマになったらしい。

俺を本名で呼ぶやつは、ほぼいない。

「カンニング様、ひつじが来たのですか」

いつの間にか、女性の姿の円々姫が俺の横にいた。

こんなくそ人間と価値ある金にひつじはどんな用だ。

「お前たち、テストを受ける気はないか」

「は?」なんで、こんな朝からテスト。

今日、会議室に匿名でこんな手紙が届いた。


「ーーー今日の午前11時、学校でお前たちがほしそうな情報をやろう。

代金としてテストを受けてもらう。

ーーやってくれるな」

神は、どれだけ、俺らの学校が好きなのだ。

「やっていいが、俺が、いつの間にか戦争に巻き込まれているのだか」

「良く分かったな」


「そういえば、0点男はどこにいる?」

円々姫がひつじに尋ねた。

たしかに、ようきはどこに?

「0点男は、休暇中だ」

ーーえ、ずる

「だから、今日のバディーは私だ。」

ーーえ、まじ

「もちろん、お前たちには、休みはない」

・ ・ ・

誰もいない学校 屋根が崩壊した学校

真夏の光が悲しく鉄骨を照らす学校

そんな学校で唯一生き残った2階の

「1-A」の教室の前に俺たちは、いた。

俺は着なれないスーツのネクタイをしめる。

「なんで、スーツ」

「今回は、フォーマルな仕事だからだ」

「俺の教室だぞ」

「カンニング様、似合ってますよ」

そんなことを言う円々姫は、スーツのおかげで

額の100が輝いて見える。

数分後、俺らを呼ぶ声が扉の向こうから聞こえた。

「どうぞ」

声が低い。全く明るさがない。

俺は、それを合図に扉を開けた。

先に視界に入ったのは、黒いマントに身を包んだ子供たちだった。子供にしては、目に色はなく、人間にしては感情を感じない。

真ん中にいるのは女子か?髪が長いのと顔で判断した。

勘が鋭い俺だからこそ分かった。こいつらは、

死神だ。

円々姫もひつじも気付いているのだろう。少し

あせっている。

「お前らが手紙の主か」

ひつじが尋ねた。

口を開いたのは、あの女の子だった。

「そうだ」

女の声だが、子供じゃない。すべてを下に

見るような声だ。

「我々はSIROとKUROと違い、争いを好まないテロ組織である」

SIROとKUROの名を出すということは、昨日の

捜査部の行動を知っているようだ。

「その目的は、この争いの要因の一つであるセ国の

大統領を消すことだ」

その後、沈黙が流れた。

「え、これで終わりか」

もちろん、これを言ったのは俺だ。確かに、組織の

情報は重要だ。しかし、俺たちがほしいのは、ボス

の行方だ。これでは、テストを受ける必要もない。

「ここからが、お前のことだ」

と、女の子が俺を指した。

「え、俺」

ほしそうな情報は、捜査部にとって、ではなく

俺にとってだったのか!でも、俺がほしい情報はなんだ。

カリスマ的存在になるための裏道とか。

「大統領の息子が、お前らしいな」

「え」

「大統領本人から聞いた。記者に変装して、    聞いたのだ。『あなたは子供いますか?』と。

そうしたら、『いたよ。長崎由というかわいい男の子が』と」

俺は驚異した顔をしていだう。だけど、感情を

隠しきることはできなかった。うそだろ。母が帰らぬ人になってから行方不明になった父は大統領になっていたのか。

だから、なんだ。

今さら会って、「よ、生きていたか。」とあいさつをする気がない。

さらに、女の子はこうつけ足した。

「それに、大統領はお前の母を殺したらしいな」

女の子が放った言葉の意味を理解するのに少し時間がかかった。意味を理解した俺の瞳に狂気のような光が灯る間にも、女の子ははつらつとしゃべっていた。

「大統領をむやみに殺すのは良くないと思い、

そこでお前がテストで悪い点を取ったことを理由に

殺そうと思うのだ。テストを受けてくれるな」

「受けるかよ!」

無意識に俺はこう叫び、右手を銃の形にした。そしてネクタイをほどき、銃型の右手をそれで包み込んだ。

手を銃に見せる作戦だった。

銃口を死神に向ける。(人差し指と中指のこと)

「口をつぐめ。殺されたくなかったら、俺を大統領と会わせろ!」

「カンニング様!」「カンニング君!」とやりとりを後ろで見守っていた二人が取り乱す一方で、女の子はまゆ一つも動かさなかった。

「我に殺してほしいと言うのか」

俺がその問いに答える前に、ひつじが割に入ってきた。

「なんだよ、ひつじ。どけよ!」

ひつじもまゆ一つ動かさなかった。いや、仮面だから動かない。

「今の君は君らくしない」

「俺らしいって、なんだよ」

「君は勝ち目のない戦いには負けて、勝ち目の

ある戦いに勝つ。そういうやつだ」

言われてみれば、そうだ。騎馬戦や鬼とのじゃんけんは勝ち目があったから勝てた。死神と戦うより、テストの方が勝ち目がある。

「…確かにそうだな」

「思い出してくれて嬉しいよ」

俺はネクタイをしめ直し、右手を挙にした。

決意した俺は、もう一度女の子と対面する。

「決まったか」

「決まった。俺はテストで100点を取ってやる」

「ひどい父を守るという選択か」

「いや、父を殺すのは俺ということだ」

ーー復讐は俺がやる。


父の死をかけたテストが今始まる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ