1日目その1 始まりのずる
ここに、セ中高等学校には一人の神がいた。
「こちら、ようき」
神は教室の中で、机に座っていた。
同じような状況にいる人は周りに何人もいた。
ただ、この神だけが別に何かをしようとしていた。
「目標、発見。僕は観察を続けます」
先生がみんなの前に立つ。
「始めてください」
生徒が一斉に紙をめくる音が室内に響く。
これは受験本番ではなく高校で行われる
1年の高校生たちの定期テスト。
俺はそんな緊張感で満ちる生徒の前で立つ。
俺は先生でもある。
そしてカンニング防止をするのが仕事。
俺は生徒の間を堂々と歩く。
生徒一つの動きを見逃さないため、
生徒の観察をくり返す。
生徒からのぞくは解答用紙
「はぁ~」
ーーなんだ。この解答は
これはきっと間違いだ。
俺は一歩前に進む。
次の瞬間、教室の空気ががらりと変わった。
きた、レイの席。
真ん中の左側の一番奥に座る少年、
レイはこのクラスの優等問題児だ。
身なりは悪く、頭は良い。
めがね。
こいつの周りの空気には、全く緊張感がない。
あるとしたり、「あおり」だ。
俺はレイの横を歩く。
空気が一層「あおり」を増した気がした。
俺はちらりとレイの問題用紙と解答用紙を見る。
メモ書きが施された
問題用紙と答えが書かれた解答用紙
ーー期待できそうだ
踵を返し、俺は前の席へもどる。
途中、もう一度後ろを振り向いた。
レイのとなりの席が空席だった。
俺はそんな席に向かって笑ってみせた。
その後、俺はカンニング防止をくり返した。
テスト終了のチャイムが鳴った。
同時に生徒全員が 筆記用具を机に置いた。
「あ、先生は職員室に用事があるから、先に出るな。
解答用紙と問題用紙は自分たちで回収するように。
分かったな。」
「はい」
俺は生徒のあいさつを背後に教室を出た。
延々と続く廊下を歩き、俺は目的の場所に着いた。
用具 器具庫
真っ黒闇の器具庫に入った途端、
ずっとこらえていた「笑い」が爆発した。
「あいつら、本当にばかだな!
俺を本当の先生だと思って!」
足元にはロープに縛られた男性が寝転がっていた。
そいつは俺と同じ顔をしていた。
胸元についていた「つるき先生」という名札も同じだった。
「ふっふっふ」
俺は自分の顔に手を当て 変装をめくる。
変装の下から制服を着た、男性生徒の顔が現われる。
そう我こそが、レイのとなりの空席の人物、
長崎由ながさきゆうだ!
制服から一枚のメモを出す。
そこには、ぎっしりと数や文字が書かれていた。
それは、さっきまで俺が見てきた、
頭の良さに期待できる生徒の答えを書き映した物だ。
俺はもう二枚、紙を出す。
それは、俺の名前が記入された解答用紙と問題用紙だった。ここにさっきの生徒の答えを書き映すだけだ。
「今回もテストは、90点以上だ! 」
先生の変装をして、
生徒の周りを堂々と歩き、
答えをちらっと見て
それを自分の解答用紙に書く。
まさに完璧な作戦だ。
俺は集めた解答用紙の中に自分の解答用紙を入れる。