1.森の中の出会い
久しぶりに連載を開始しました。
なかなか更新できないと思いますが、どうぞよろしくお願いします。
ここはセリウス王国。セリウス王国は四方を豊かな森と輝く湖に囲まれた国である。東にはそびえるアルダ山脈、西には青い水晶のように澄んだオルデン湖が広がっている。
遥か昔、セリウス王国は魔法使いの祖セリウスによって建国されたという。そのため、この国には、魔法が日常に溶け込んでいる。人々は自然を敬い、魔法と共存する生活を何よりも大切にしており、王国の住人は皆、魔力をもっている。
私の名前は、リリアス・マルセラ。17歳。紫色の髪に淡い青い瞳をもつ。
私は、王国の辺境、アルダ山脈の麓にある小さな村「アルドナ村」で生まれ、ずっとここで家族と暮らしている。今まで一度たりともこの村から外に出たことはない。
父のエリオットは王国の魔法研究の第一人者だ。
この村が王国内でも魔力の影響を受けやすい土地だという理由で、父が若い時に移り住んだらしい。基礎的な魔法の知識はすべて父から学んできた。父は温厚で博識だけど、研究に没頭しがちなところが玉に瑕。
母のマリーネはこの村の出身で、魔法をいかして治療師をしている。
母の魔力は人一倍強く、治療師として優秀なため、母の治療を求めて王国中から患者がやってくるほどだ。母はとても優しくしっかり者だと私は思う。
王国の魔法騎士である3歳上の兄 ルカスは、国境警備が仕事であり、家族と一緒に暮らしながら、辺境にあるアルドナ村周辺を警備している。
◇◇◇
森は夕陽に照らされ、淡い橙色の光が木々の間を揺れていた。私はお気に入りの「エルヴェンの森」を訪れ、新しい魔法の練習に没頭していた。
「今度こそうまくいくはず!」
私は息を整え、手のひらに魔力を集中させた。微かな風が指先をなぞり、小さな光の粒が舞い上がる。だがその直後、魔力が暴走し、勢いよく吹き出た光が近くの枝に当たり、枯葉がぱらぱらと落ちてくる。
「もう! また失敗!」
額の汗を拭い、ため息をつく。そのとき、背後でガサッと何かが動く音がした。
「誰?」
警戒心を抱きながら振り返った。茂みから現れたのは一人の男。鎧は傷だらけで、肩から血が滲んでいる。銀色の髪は乱れ、鋭い瞳で私のことをまっすぐに捉えた。というか、睨んでいる。
「……ここはどこだ?」
低く響く声に、思わず身を固くする。
「あなたは誰? 何をしてるの?」
問いかけると、男は疲労に耐えるように木にもたれかかり、苦笑した。
「追ってきた魔物を倒したが、道に迷っただけだ。」
その言葉に少しだけ警戒を解いたが、彼の様子を見て眉をひそめた。
「その怪我……放っておいたら死んじゃうわよ!」
魔法で治癒しようと近づくが、男は手を振って制した。
「余計な世話だ。お前に何ができる?」
その言葉にカチンときた。
「できるかどうか試してみる? それともここで血まみれで死にたいの?」
私の勢いに押されたのか、男はしぶしぶ頷いた。
私は彼の腕に手を置き、静かに魔力を込める。私の手のひらから温かな光が広がり、傷口がゆっくりと癒えていく。男はそれを見て驚いたようだった。
「……意外とやるじゃないか。」
「失礼ね。私、これでも魔法使いなのよ!」
男は小さく笑ったが、すぐに真剣な表情に戻った。
「礼を言う。しかし、ここは安全ではない。さっき倒した魔物が仲間を呼んでくるかもしれない。」
「……仲間?」
その言葉に思わず顔が曇る。
すると、森の奥から低い唸り声が響いた。
「行くぞ」
男が剣を抜いたのを見て、私も慌てて魔法を準備する。
「行くって……私を置いていく気?」
「まさか、お前も戦え。」
私はそう返してくるとは思わず、一瞬面食らったが、すぐに口角を上げた。
「いいわね。それじゃ、私の力を見せてあげる!」
ありがとうございました。