23 ゴブリン
なんか、ちょっとグロいです。戦いが嫌いなレオンではなく、ヘイルの場面なので、そうなりましたが、そういうのが駄目な人は飛ばしてください。
最初のうち、みんな、いろいろと聞いてきたが、「記憶を失くした」の一点張りで通したら、そのうちに、みんな、諦めた。ヘイルはヘイル。大きな灰色の猫獣人。それ以上でも、それ以下でもない。
それから、みんなでいろんなことをやった。
最初は、生きるための仕事だけだったが、そのうち、危険なこともやるようになった。たとえば、身の軽さを利用した高所作業だ。
このミドルブルクは、街道が街中を東西に通っており、比較的にぎやかだった。ただ、古い町なので、補修が必要な部分が多くあり、俺達のような高所作業ができる猫獣人は重宝されたのだ。
もっとも、猫獣人に対して街の人は優しくなかった。出された食事が傷んでいて、食中毒になったこともあるし、基礎工事が杜撰で、足場が崩れたこともある。もっとも、俺だけは、食中毒にもかからず、怪我もしなかったので、不死身のヘイルとして知られるようになったのだが。
そんな折、領主が狩りをするというので、俺達も駆り出された。場所は、ミドルブルクの南西に広がる広大な森だった。そこは、いろいろな魔物が住んでおり、中へ入ると戻ってこられないというヤバい場所だそうだ。
ただ、そこを縄張りにしている連中は、森から出てくることはほとんどないそうだが、今回は町との境辺りに魔猪が出たとのことであった。森の中での勢力バランスが崩れてきたからではないかということだった。何でも、南のほうにあるグレンツァッハとかいう村の付近で、オルクが勢力を持ってきたからではないかと言われている。迷惑な話である。
仕事は、勢子で、町の外に住んでいるハルトムートという奴の飼っている猟犬どもと組むことになった。もっとも、猫獣人と犬との相性は最悪なので、俺達が先行して魔猪を探すことになった。斥候である。
森の中は意外と明るかった。そして、いろいろな生き物の気配が充満していた。このため、慎重に探りを入れながら進んでいったはずなのに、気がついたらゴブリンの群れに囲まれていた。相手は五十匹ほどもいたが、こちらは五人。しかたなく、ヨハンの指示で、大きな岩を背にして迎え撃つことになった。
俺は真ん中で、ヘンリックとヨハンが左側、エッボとシーモンが右側を固めた。剣などという高尚なものを持たされていなかったので、ヨハンとエッボが、ナイフというよりは、包丁を持っていた以外は、そこいらへんで拾ってきた棒や石で武装していただけだった。
ヨハンの指示で前へ出る。大きな木が二本あったので、その前に立つ。俺の両脇をヨハンとシーモンが固め、ヘンリックとエッボが、木を回りこんでくる連中に対処することになった。もっとも、ゴブリンどもは頭がよくないのか、我先に先頭に立つ俺のもとに走ってきた。そこで、まず、棒を持って突っ込んできた奴の頭を蹴飛ばし、次の奴の顔に持っていた石で殴る。顔面が陥没したゴブリンがひっくり返り、その次に襲ってきた連中の頭の上に石を持った腕を振り下ろす。血やら肉やら脳漿やらが飛び散り、五匹目の時に振り上げた腕から石が滑って飛ぶ。
しまったと思った次の瞬間、そいつが持っていた棒を振り下ろした。それを腕で受けると、左右からヨハンとシーモンが脇腹を突き刺した。そして、様子を見て、ヘンリックとエッボが棒で加勢する。驚いたことに、腕に当たったゴブリンの一撃は痛くなかった。何だか、見えない壁があって、攻撃を跳ね返したようだった。
木を回りこんでくる奴がいなかったので、ヨハンとヘンリックが代わり、突っ込んでくるゴブリンをヘンリックが棒で突き飛ばす。ヨハンはいいタイミングで石を渡してくれるので、それで連中の頭を潰すことに専念する。もちろん、何十発と打撃を受けたが、痛くもかゆくもなかった。
それでも、最後のゴブリンを倒すと、疲れて後ろに倒れこんだ。他のみんなも倒れ込んだが、ヘンリックがヨハンから包丁を借りると、魔石の回収を始めた。心臓の代わりにゴブリンの体にはまっている親指の頭ほどの魔石は、金になるのだ。シーモンも、包丁を持って胸を切り開きに行った。
エッボが魔石を集めて、「五十三個ある」と言った。
それだけあれば、しばらくの間、うまいものが食える。
その時、「そうか、ご苦労さん」という声がした。
ハルトムートだった。猟犬の群れと何人かの兵隊を引き連れている。
そして、ゆっくりと右手を差し出して、「それを寄こせ」と言った。
その瞬間、ヘンリックがエッボの腕から魔石を奪って、思いっきり、反対側の森へ投げ捨てた。
「何をする。反抗する気か」と、ハルトムートが腕を差し出したまま叫ぶ。
後ろで、兵隊達が剣に手をやる。
「この森の狩猟権は領主様のもの」と、ハンスが切り出す。
「だから、どうだと言うのだ」
「俺達は襲われたから倒したのであって、密漁なんかじゃないですよ」
「そうか」
「だから、魔石など集めようと思っていませんぜ」
「証拠隠滅か」
「人聞きの悪いことを仰る」
「では、なぜ放り捨てた」
「ゴブリンを大地に還そうと思いましてな」
ミドルブルク篇第23話。小説の最後でなく、途中に割り込ませると、更新情報が皆さんに伝わらないように思う。何か、考えよう。
小説の最後に第23話を投下→本来の場所にも第23話を割り込み投下→小説の最後に載せた第23話を削除
どうも手間なだけのようです。




