表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/302

21 ヘイルって誰

 なぜか、ミドルブルク篇には第20話が二つあって、同じ内容が入っております。多分、操作ミスが原因なのでしょうが、修訂ついでに第21話をアップいたします。

 毎日、たくさんの方々にお越しいただいており、感謝以外の何ものもありません。厚く御礼申し上げます。

 

 「ヘイル、どこへ行っていたんだ」と、町の入口で白い猫獣人に声をかけられた。

 「ヘイル、心配してたのよ」と、茶白の女が、

 「ヘイル、どうしたんだ」と、(さび)色の取り分け薄汚れたのが、

 「大丈夫ですか」と、茶髪の女が声をかける。

 「おい、無視かよ」と、肩を掴まれる。

 振り返ると、虎毛の奴が怒ったような顔で肩を掴んでいる。

 「俺のことか」

 「俺のことかって、お前はヘイルじゃないのか」

 「ヘイルじゃない。俺は…」と言いかけて、自分の名前が思いだせないことに気づく。

 「その灰色の巨体がヘイルでなかったとしたら、誰なんだ」

 灰色の巨体だと、俺はそんな色じゃない。そう思って、腕を見る。なるほど、灰色だ。そういえば、視点が随分と高い。

 「何だか変だわ」と、さっき心配してくれた茶白の女が言う。

 「飲みすぎて、ついにおかしくなったか」と、最初に声をかけてきた白いのが言った。

 「頭でも打ったのかな」

 今まで黙っていた三毛が言う。


 「ファオ、これは無理ね」

 「でも、ゼーレは無事だから、こっちに入れちゃお」

 急に、西洋人の姉ちゃんの声を思い出した。


 「俺はヘイルなのか」

 「当たり前でしょ」と、茶白の女が答える。

 どうやら、あの姉ちゃんは医者か何かで、俺のゼーレを別の体に…。

 「ゼーレって、何だったけ」

 「魂がどうしたというんだ」と、三毛が答える。

 「おい、ヘイル、今度は宗教に走ったのか」と、虎毛が呆れたというように叫ぶ。

 「ヘイルが、ヘイルがおかしくなった」と、錆色が言う。

 そうか、魂か。

 多分、俺は、もう一度死んだのだと思う。

 そういや、日本にいた時、この木は堅いから折れやすいと、誰かが教えてくれたっけ。

 柔らかい木は曲がるけど折れないものだと。柿の木なんか、簡単に折れるからな。

 きっと、俺がつかんだあの木は、堅くて折れやすい木だったのだなと思う。

 そして、落ちたことにも気がつかずに命を失くしたんだろう。

 それを、あの姉ちゃんが魂をすくって、ヘイルとかいう人の体に入れてくれた。

 そういや、俺は、その前にも白い光を浴びて…。

 「何で、俺の魂だけが」

 「お前、本当にヘイルか」と、虎毛が聞いた。

 「多分、そうだな」

 「多分って、どういうことだ」と、虎毛がもう一度聞いた。

 「ちょっと、頭がふらつく」

 茶白の女が慌てて、「そこの木陰にでも横になったら」と言ってくれたので、ありがたく、そうさせてもらう。

 横になって考える。

 魂をすくって、別人の体に入れるって、人間には無理だ。ということは、あの姉ちゃんは神か何かだ。問題は、なぜ、俺が選ばれたかだ。

 最初に俺が死んだ時、俺の名前はなかった。生まれ変わった時もなかったように思う。だったら、何が、だったら、か知らないが、俺の名前はヘイルにしよう。

 問題が一つ片付いた。俺はヘイルだ。

 俺は何だ。猫獣人だ。二つ目の問題が片付いた。

 住みかは。ここだ。三つ目の問題も片付いた。凄いな。俺は天才か。

 問題は、なぜ、俺が選ばれたかだ。

 猫獣人なる前、俺は猫だった。それは、はっきりと覚えている。

 名前はなかった。白黒のチビ猫だった。

 親兄弟はいなかった。多分、産まれてすぐに捨てられたんだろうと思う。それが生き延びられたのは、近所の人間の女の子がミルクをくれたからだ。皿にミルクを入れてもらったが、飲めずにいるのを見て、別の女の子を連れてきた。そして、布切れにミルクをつけて飲ませてくれた。今考えると、人間の使うハンカチというものを使ったのではないかと思う。

 そのうちに、うるさい連中がやってきて、そこを追い出され、女の子たちとも別れさせられた。それから、何とか生きてきた。泥棒猫だとか言われながら。

 産まれて一年ぐらい経ったころ、俺は恋をした。いや、もう、奮いつきたくなるくらい立派なボディの持ち主で、流し目を俺にくれた途端に腰が抜けた。そのまま、ついていったら、白い光がして…。

 そうか、世界が白く輝いたんだ。あれが原因だ。

 あの後、俺は母親の胎内にいたと言ったが、その前に、俺は闇の中を漂っていた。一人じゃなかった、何か、いろんな色のボールと一緒だった。ボールは、数えてみると六つあって、うち二つが大きく、白く輝いていた他は、青、赤、緑、金色にほのかに光っていた。

 すると、白く輝いていた一つが急に向きを変えた。その先には、綺麗な赤色のもっと大きなボールがあったのだが、そこへ黒いボールが急接近してきた。白いのもスピードを上げて、結局、同じタイミングで二つとも赤いボールに吸い込まれて消えた。しかし、赤いボールに変化はなく、ただ、少しずつ逸れていって、やがて、見えなくなった。

 そのうちに、いろいろなボールが見え、青、金色の順番に吸い込まれて行って、コースを変えた。そして、緑のが、黒いボールへ吸い込まれようとして、弾き飛ばされた。白い光が飛んできて邪魔したのだ。何だが、自分が死んだ時の光に似ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ