11 子爵夫妻との会話(その六)
初めてブックマーキングをしてもらいました。どなたか存じませんが、厚く御礼申し上げます。
「ただ、黒い稲妻が出っ張ってきてますから」
「エクレア・ノワール、オリヴィエ・デュプランティエだったな」
「よく、そんな舌を噛みそうな名前を憶えられていますな」
「まあな」
「何しに来ているのでしょう」
「分からんが、この襲撃と関係があるのなら、王国内の問題も絡んでいる可能性はあるな」
「ただ、襲撃は半年以上前ですからね」
「そうだが、その可能性も頭に入れておいたほうがよいな」
「つまり、シュヴァーベン公に他国の子爵家が絡んでいるだけでなく、王国の他の勢力もですか」
「単なる騎士には荷の重い話だな」
「そこなのです」
「爵位もやろう」
「…」
「どうした、いらんのか」
「身に余る光栄であります。ブルクハルト・フォン・ファーレンドルフ、全身全霊をもって御厚誼にお応え致します」
「よい、どうせ、通過点だからな」
「そう、そうなるわね」
「もちろん、授爵は辺境伯の裁可が必要だが、領地はグレンツァッハとホイドルフ、それに街道までの魔の森となるだろう」
「御厚恩…」
「分かった、分かった、その言葉は辺境伯から爵位を授けられるまで取っておけ」
「ありがとうございます」
「ただ、それまでは単なる騎士だから、シュヴァーベン公とスンゴウ子爵家への連絡は、こちらで渡りをつけよう」
「助かります」
「それより、あれを寄こせ」
「何でございましたか」
「酒だ」
「失礼いたしました。早速」
「恐ろしく芳醇な香りだな」
「とてもおいしそうですわ」
「かなりきつい酒ですが、奥様にもお出ししてよろしいでしょうか」
「もちろん、頼む」
「こちらは冷やしてないのね」
「冷やすのも一興だそうですが、普通は常温で舐めるように飲むものだそうです」
「はい?」
「奥様、はしたない言い方をして申し訳ございません。それぐらい少しずつという意味です」
「ああ、そういうことですね」
「とても強いお酒ですので、ご注意下さい」
「大丈夫だ、アウグステは儂より強い」
「それでもです。私など、この四十年の人生で、これほど強い酒は初めてです」
「それほどまでか。悪いが、先に少し飲ませてくれ」
「もちろんでございます」
「…」
「どうでございますか」
「これは凄いの。頭を後ろから叩かれたような気がする」
「何というお酒ですの」
「ブランデーと申しまして、ワインの水分をとって、長年月寝かしてつくるそうです」
「ファーレンドルフ家の秘密を聞いてばかりで申し訳ないのですが、ワインの水分って、どうやって取るのかしら」
「我が家の秘密など、こちらには存在しません」
「立場はすぐに逆転するだろうがな」
「いえ、子爵家を伯爵家、侯爵家にできるように、粉骨砕身の努力を致します」
「では、その第一歩として、ファーレンドルフ家の秘密の一つを明かしてもらってよいか」
「はい、その者は魔法で取り除いたそうですが、普通は蒸留すると申しておりました」
「蒸留、何だ、それは」
「はい、ワインを火にかけると、沸騰する前に、水以外の部分が蒸気になるのだそうですが、その部分を集めて冷やすのだそうです」
「すると、どうなるのです」
「アルコルと、その者は申しておりましたが、酒の主成分だそうです。これを冷やすと液体に戻るそうですが、それを樽に入れて寝かすのだそうです」
「寝かす」
「熟成させることだそうです」
「どれくらい」
「こちらは三十年ほど経つそうです」
「酢になってしまうではないか」
「ならないようにできるそうです」
「しかし、三十年か。儂などまだ七歳だぞ」
「私など、生まれてもいませんでしたわ」
「そ、そうだったね、グステ」
「同様に、ワインも熟成できるそうです」
「すると、どうなる」
「こちらです」と、甕を出す。
「あら、洒落た甕ね」
「本当はコルクというもので栓をするといいのだそうですが」
「コルク、聞いたことはないな」
「姫君達が王国の南部で取れると言っていました」
「そうか、そちらも飲みたいの」
「後で、何本か出しておきますので、こちらは奥様用ということで」
「そうか、それよりも第三の案件だな」
「お願いします。これが最重要ですので」
「グステ、儂はファーレンドルフと書斎にいる。誰も邪魔しないようにしておいてくれ」
「分かりましたわ」




