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25 意識を乗っ取る

 アリエルが、「レオンは意識を乗っ取ることができるはずだ」と言い出した。

 「意識を乗っ取るって、憑依ですか」と聞くと、そうだと言う。

 赤ん坊の体は、実に不自由である。もっとも、こちらの世界のものも、あちらの世界のものも相互に持ち込むことはできないが、服は自分の一部となっているのか、その世界で最後に着ていたものに自動で変化する。

 あと、栄養分も持っていけるようで、あちらの世界で食事をしなくても成長に問題はないようである。睡眠も、どちらの世界でとってもよいようであった。そして、アリエルや、家族、それに使用人の方々がしょっちゅう出入りをして話しかけてくれるので、退屈はしない。

 しかし、体が動かない。自力では移動も困難である。だのに、早く転生した他の者達と会いたかった。特に、下の森にいるオルクに転生した人に会いたかった。アリエルによると、こちらより数ヶ月早く産まれており、元気に森の中を駆け回っているそうだ。どうしたら、早く会えるのだろうかと相談すると、レオンは意識を乗っ取ることができると言い出したのだ。

 魔王の腕輪の中に入っていないかと言うので、調べてみると確かにある。ただ、人族には使えないし、対象は一つだけである。

 何でも、こちらの世界には人族以外には魂がない。そして、魂のないものは憑依が可能だと、アリエルが言うのである。もっとも、それは闇魔法だから、私には使えないけれどと付け足すのは忘れずにはいたが。

 いずれ、魔力は枯渇する。その前に森に行きたいが、赤ん坊のままでは、難しい。もし、意識だけでも森に送れるのなら好都合である。

 その時、憑依する対象として考えたのは鳥である。飛行機事故で家族を失っているので、空を飛ぶのは二の足を踏まないわけでもない。ただ、ネットでドローンの映像などを見るのは好きだから、意識だけなら試してみたいと思ったのである。

 さっそく、アグネスさんに外を見られる場所がありませんかと聞くと、隣の部屋に連れて行ってもらえた。そこには比較的大きな窓があり、外がよく見える。鉄格子が嵌っているが、ガラスも牛の膀胱もなく、素通しである。夜は、鎧戸を閉めるという。

 しばらく眺めていると、上の方に白っぽい灰色の、鳩ほどの大きさの鳥が見えた。鎌形の羽に、後ろに長く伸びた尾羽、小鷹である。

 その鷹に思念を送ると反応があった。その鷹の意識を乗っ取ると、森が見えた。鷹の見ているものが脳裏に浮かぶのである。

 木の上に灰色の何かが見えた。次の瞬間、それに焦点があったと思うと、急速に拡大された。見えたのはリスであった。木の上で、団栗を囓っている。時々、齧るのをやめてあたりを見渡しているが、こちらには気づいていないようである。

 鷹の眼は望遠鏡のようになっており、八百メートル先のトンボまで見えるという話を聞いたことはあるが、ここまでのものであるとは知らなかった。異様に焦点合わせが早い望遠鏡である。しかも、高いところから俯瞰ができるし、近づくことができる。

 ただし、人間の眼とは色合いが違う。人間は三原色で見ているが、鳥はそれに紫外線を加えた四原色で見ているからである。しかし、紫外線は殺菌灯にも利用されるぐらい有害な光である。このため、トナカイや蝙蝠の一部等を除くと、ほとんどの哺乳類では網膜保護の目的でカットされる。

 目が痛くはなってこないので、おそらくは自分の網膜ではなく、意識で見ているのだと思うが、リスのいる木の葉の一枚一枚までが、コントラストがくっきりして、細かなところまで見える。

 もっとも、リスが気の毒なので、攻撃は中断してもらって、こちらに来てもらう。突然、体が動いたので何かと思ったら、アグネスさんが、窓に停まった鷹を見て、後ずさりしたのだった。

 「あの鷹は、自分がコントロールしているから大丈夫ですよ」と伝えると、本当かと言うように覗き込まれた。

 窓にとまった鷹の眼から見た室内には、アグネスさんと彼女に抱かれた自分、それにアリエルがいるのだが、自分で自分を見るというのは、不思議な感覚であった。

 もちろん、鏡を見ているのと変わらないのだが、もっと広い空間が見えており、しかも、それが異様にクリアなのである。なんだか、どこにも焦点が合っている画像を見ているような気がするのである。その画像の中に階段を上がってきた次兄が見えた。

 「ベルンハルト兄さん」

 「何、レオン、ベルンでいいよ」

 「窓に鷹がいるでしょう」

 「えっ、本当だ。凄い」と、ベルンが言うと、息を潜めて見ている。

 「あれ、自分」

 「えっ」と言って、アグネスさんに抱かれた自分の方を見る。

 鷹の眼だけでなく、自分の眼も使えるので、ベルンの正面の顔と横向きの顔が同時に見える。ピカソかと思いつつ、これは慣れるのに時間がかかりそうだなと思う。

 「ベルン、鷹に近づいてもらっていいかい」

 「大丈夫かな」と言いながら、足音を潜めてベルンが鷹に近づく。

 窓際に来てもらって、寄せてもらった肩に乗る。

 「凄い」と、ベルンが笑顔になる。

 そのまま、鷹を下へ連れて行ってもらう。


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