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24 朋香さんの事務処理能力

 食後、「庭の車ですが」と、朋香さんが切り出した。

 「屎尿回収の車ですね。あれ、どうしましょうか」

 乗っていた人達は、異世界に行ってしまったと言っても、信じてもらえそうにない。

 「引き取ってもらいました」

 「はい」と、思わず疑問形になった。

 人がいなくなっているのだから、普通は事件だ。行方不明で警察ぐらいは来るだろうから、対応を考えておかねばとは思っていたが、言い訳を思いつかなかった。

 「会社に電話をして、いつの間にかおられなくなってと言いましたら、今朝から、菓子折りを持って引き取りにこられました」

 「はい」と、二回目の疑問形。

 「どうも、こられた方が、仕事を放棄していなくなっても不思議のないような方だったらしく、社長さんだと思いますが、しきりと頭を下げておられました」

 「はい」と、三回目の疑問形を出しかけて、それでは愚鈍の極みだと気づいて、「そうなんですか」と言ったが、あまり変わっていないように思う。

 「そういえば、怖そうな感じの人だった」

 「年配の人のほうが、そうだと言っていましたね」

 「ええ、短気な男なものでと社長さんが言いかけて、口をつぐんでいましたから、多分、そうなのでしょう」

 「若い子のほうは」

 「それが不思議なことに、話に出てこないので、聞いてみたんですが、そのような者は知らないということで」

 「それは、また、面妖な」

 「そうしたら、ついてきた人が、最近、子分を連れ回していたとか言い出したのですが、名前も何も分からないようでした」

 「つまり、その若い人については捜索願が出るかもしれないということでしょうか」

 高校生の年代だとしたら、その可能性は充分にある。

 「そうですが、うちに来られても分からないと言うしかないでしょう」

 「そうですね、それでお願いします。もし、その人の転生先に行けたら、聞いてみます」


 「最初の家政婦さんは週二回だったのね」と、天音さんが聞いてきた。

 「それが、祖父が引っ越してきて、三日になった」

 「毎日になったのは」

 「祖父の死ぬ一年前、儂の茶飲み友達がいると言われてです」

 「つまり、私はあなたのお祖父さんの茶飲み友達として雇われたわけですね」と、朋香さんが答える。

 「いや、曾孫のほうかもしれない」と、洗い物をしている天音さんを見やる。

 天音さんは、振り返ると「じゃ、お祖父さんが亡くなられても雇って貰たのは」

 「遺言でしたから」

 「では、お祖父さんに感謝しなくちゃ」と、天音さんが言う。

 

 新しく、三人は家族になったが、向こうの親を悲しませるわけにもいかないので、話し合ってローテーションを決めた。

 というのは、天音さんと自分しか、この家と向こうの世界を往復できないからである。このため、午前中は天音さんが、午後は自分が家にいて、三食は、こちらで会合を兼ねてとることにした。

 ただ、朋香さんは、「そんなにひどい環境なんですか」と、不安げに聞いてくる。

 天音さんの母親としては、当然のことである。ただ、向こうの両親にとっても、大切な娘であることに間違いはないので、行かせないという選択肢はないということで、三人の意見が一致している。

 「中世ヨーロッパだから、衛生の「え」の字もないが、天音さんや自分には、精霊王の加護があるから怪我も病気もしないよ」

 「そうなの」と、天音さんが驚いたように言う。

 それって、前にアリエルが話していたよね。もしかして、記憶力がないのか。

 「だとしたら、こちらのほうが危ないかもしれませんね」

 「そうかもしれないね。特に朋香さんは、そういう加護などないからね」

 「それでも、危険な魔物もいるのでしょう」

 「剣と魔法のファンタジー・ワールドだから危険なことは多いだろうけれど、精霊王の加護というのは強力だろうから、何とかなると思う」

 もっとも、ドラゴンを相手にしても大丈夫かどうかは知らないが、それを指摘しても仕方がない。大地震や、大津波のような天災を相手にするようなものだからである。


 何か、現代に戻ってくると、うまくまとまらないです。

 次回から、レオンハルトの話になります。

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