18 目的は
「目的は、そのオルクに会って、困っているのなら救うことです。しかし、そのためには、話を聞き、可能ならここへ来てもらうことが必要ですが、それには皆さんの理解が必要です」
誰もが困惑の表情を浮かべる。そりゃそうだ、急にオルクと話したいと言われても困る。それが分かっていたから、これを最後にしたのだが、思ったよりも嫌悪感が少ないような気もする。
「そのためには、相手の動向を知る必要があります。このため、精霊様には引き続き報告をお願いしていますし、その結果を聞いてから行動しようと思っています」
今すぐではないということに、多少、緊張感が解けた感じがする。
「それでは、皆さん、長時間ありがとうございました。御礼に、あちらの世界の料理を提供しますので、よろしければ召し上がって下さい」と言って、食卓に貯蔵庫から出した空揚げを並べる。
もちろん、揚げ立てを保存したものなので、湯気を立てている。
「本来、ご一緒させてもらうべきでしょうが、赤子の体では無理ですので、申し訳ありませんが、あちらの世界へ行って食事をとらしてもらいます」
その食事という言葉を聞いた途端、天音さんが目を覚ます。
「もう、ご飯なの?」
「そうだね、朋香さんが待っているだろう」
「うん」と言うと、すぐに出入口を開けて、姿を消す。
突然、腕の中の赤ん坊分の体重が消えたラウラさんは、後ろに倒れそうになったが、踏みとどまった。
「皆さん、すみませんが、自分も消えさせてもらいますが、今日は戻ってくるのが遅くなるかもしれません」
「かまわぬ、結婚したばかりなのだから、いろいろとすることがあるだろうから、ゆっくりしてきなさい」
「ありがとうございます。では、アグネスさん、すいませんが、部屋まで運んでいただけますか」
「分かりました」
「では、失礼します」と言って食堂を出る。
「しかし、レオンハルト様はきちんとされていますね」と、アグネスが言う。
こちらの言葉は分からないので、念話である。幸い、こちらの人達は魔力があるので、チャンネルを一度開くと、念話が可能なのである。もっとも、この念話という魔法は、今まで知られていなかったらしい。
「三十四歳ともなると、多少は落ち着きますよ」
「先ほどでも、娘さんの後を追って姿を消されても、どなたも文句は言われないと思いますが」
「いや、自分が言った直後に、それを裏切ってはいけないと思って自重しました」
「そういうのを、きちんとされていると言うのではないでしょうか」と、アグネスさんは自分達の寝室のドアを開け、ベッドの中に赤ん坊の体を置いた。
そして、持ってきてもらった天音さんの紫色の腕輪も、ベッドの上に置いてもらう。このままでは、天音さんが戻ってくると、食堂、それもラウラの腕のあった場所に現れると思ったからである。落下を防ぐためにも、こうすべきだと思ったのだ。もっとも、精霊王の加護を受けているので、そうなってもケガなどしないとは思うが、念のためである。
「ありがとう、では、異世界の食事を楽しんでみて下さい」
「はい、ありがとうございます。では、せっかくですので楽しませてもらいます」と言うと、アグネスさんは部屋を出て行った。




