15 秘密の共有
「そして、皆さんに集まってもらった第二の理由は、皆さんに自分の秘密を共有してもらい、守っていただきたかったからです」と、間をおいてから話し出す。
父上が、「お前の、いや、お前達の秘密は全員が守る」と、重々しく宣言する。まだ、何も言っていないのに、そんな宣言をしてもいいのかなと思うと同時に、会ったばかりだというのに、自分が信頼されていることに喜びを感じる。
「ありがとうございます。こちらも人目のある所では消えないようにしますが、万が一、このことを知らない人の前で消えたり、話したりすると、困ったことになると思います」と、ラウラのほうを見ると、皆が一斉に頷いた。
「このため、自分達が安心して向こうの世界に行ける場所として、今、使っているあの部屋を使いたいと思っております。したがって、あの部屋にいるはずなのに、自分や娘の姿が見えなくなったとしても、無暗に心配しないでほしいのです。もちろん、誘拐に遭った場合はその限りではないのですが」と、笑いを取ったつもりでいると、皆さん、その場合はどうしたらよいかと真剣に考えているようである。
「その場合は、さきほどのように、自力で異世界に脱出しますので大丈夫です」と言うと、一様に安心したような表情になる。
恐ろしく素朴な人々だから、下手な冗談はしないほうがよさそうである。
「ただ、そのような力は隠しておくほうが都合がいい場合も多いかと思います。これが、皆さんに私の秘密を共有してもらい、無暗に他に漏らさないようにしていただきたい理由です」
父上が、分かったと言い、周りを見渡す。誰もが一様に頷く。
「そして、赤ん坊の間は向こうで食事を摂りたいと思っています。と言うのは、この歳になって母乳をいただくのに抵抗があるからですし、向こうでの家族の団欒も楽しみたいからです」
母上が、明らかに安堵したという顔で頷いた。同い年や、その倍以上の年齢の者に自分の乳を吸われるのは、やはり抵抗があったのだろう。
「そして、第三の理由は、他にも皆さんの協力をお願いしたいことがあったからです」と言うと、何だろうという顔になる。実に素朴な人達である。
「自分達二人以外にも五人がこの世界に転生しています。自分の知らぬうちに巻き込まれた人達ですが、このような素晴らしい環境に転生した者ばかりではない…、いや、むしろ、自分達が幸運だったのだと思っておりますので、困っていたら、何とか手助けしたいと思っています」
「その者達はどこにいるのか分かっているのか」と、父上が聞く。
「はい、うち二人は、領都ミドルブルクに、一人はローダム鉱山に、もう一人はブライテン村に、そして、最後の一人がこの下の森へです」
この下の森という部分に、誰もが訝し気な表情になる。
「魔物しかいない森になぜと思われるのは当たり前でしょうが、この者はオルクに転生したのです」
「オルクですって!」と母上が、ひきつった表情で叫ぶ。それほど大きな声ではなかったが、それをきっかけに再びざわめきが広がる。




