14 結婚の報告とお詫び
赤ん坊の姿に戻る。
「今、自分の右半身は異なる世界におりました。しかし、自分を抱いてくれている、えーっと、お名前は?アグネスさん、どうかよろしく。こちらのアグネスさんの体は消えていないはずです」
三々五々、家人が頷くのを見て、アグネスさんが安心したというように溜息を吐く。
「これは、あちらの世界に行ける者が、現在では、自分と娘だけだからで、アリエルさんですら行くことができません」
大精霊が行けない世界というのに、皆が驚く。大精霊というのは、神にも等しい存在であり、不可能ごとなどないと思われているのであろう。
「ただ、向こうの世界のものを持ってくることができませんので、これ以上の証明はできませんが、納得してもらえたでしょうか」
皆が頷くので、次に行くことにする。
「ありがとうございます。これが、昨夜、自分達がいなくなった原因ですが、あれほど遅くなり、自分が最後まで戻らなかった理由は別にあります」
そこいらへんを飛び回っているパル以外は、みんな、真剣な眼差しで聞いている。しかし、パルよ、虫と間違われて潰されないように気をつけろよ。
「実は、この子の母親と十五年ぶりに会って、結婚を申し込んでいたのです」
それはめでたいという表情と、理解が追い付かないという表情に分かれる。使用人のほとんどと父上は前者だが、母上と子供たちは後者だ。
「事情があって、この子が産まれたことを知らずにおり、昨日、久しぶりに会うことができたのです」
長女のフレデグントさんが「十五年も」と呟いたので、「外に出ることも、人と会うこともできなかったからです」と考えておいた答えを言う。
こう言っておけば、剣と魔法の世界だから、閉じ込められていたとでも思ってもらえると思ったからである。
ただ、それ以上追及されないように、すぐに「幸い、彼女は結婚を受け入れてくれました」と続ける。
どうやら、納得がいったような表情なので、「このため、できれば、この後、向こうの世界へ行って、会ってきたいと思っています」というと、当然だというような顔になる。
「娘も、行方不明になりかけたので、母親に会わせたかったというのもあります」
さっき以上に、なるほどという表情になった皆さんに謝る。
「皆さんに集まっていただいた理由の最初は、昨夜、自分達がいなくなった理由と、その謝罪のためです。そのことに気づかずに、父上、母上をはじめとする皆さんに迷惑をかけたことを深くお詫びします」
やがて、父上が、「レオンハルト、お前の詫びは聞き入れた。そちらの世界では、お前の妻になる人物が、そして、ブリュンヒルデの場合は母親である人物が待っている。不思議としか言いようのないことであるが、致し方のないことである。ただ、こちらにも父母や家族が待っていることを忘れず、配慮してもらえればよい」と、続けた。
深くお辞儀をして、「そのことは、自分もこの子の父親になりましたので、我が身に置き換えれば大変なことをしたという自覚はあります。また、そのようなことをしたにもかかわらず、寛大な言葉をいただき、厚く御礼申し上げます」と詫びると、両親が、ともに頷いた。
どうやら、謝罪は受け入れてもらえたようである。
本日もいくつか投稿しようと思っていますが、次の投稿は昼頃になると思います。




