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13 初顔合わせ

 少し明るくなった頃、ようやく朝の鐘が鳴った。朝食が始まったようで、家の中にかすかなざわめきが広がる。しばらくすると、準備が整ったらしく何人かがやってきた。そして、ラウラさんともう一人の小間使いらしい女性に抱かれて食堂に移る。ラウラさんに話しかけるのは自重した。天音さんはまだ寝ている。

 食堂には、一族がそろっていた。真ん中には厳めしい顔をした当主のブルクハルト、その横に母上のアーデルハイト、左右に若い男女三人が長机の向こうに座っている。その向こうには使用人らしい人が何人か立っている。

 椅子に座っているのは子供達だと思うが、思っていたより年をとっているのに驚く。自分達とそう変わらない幼児だろうと思っていたのだが、少年少女である。そして、明るいところで見る母親の顔が随分と幼いことに驚く。子供たちとあまり変わらない。同い年と言ったのは、天音さんと一緒という意味か。十五歳の母親と娘を同時に持つ三十四歳ということか。

 アリエルが、「左から長男のエーベルハルト、母上の向こうが長女のフレデグント、次男のベルンハルトね」と紹介してくれる。

 「初めまして、三男のレオンハルトです」

 子供達の顔が驚きに染まる。事前に聞いていても、脳内に直接響くというのは、経験のないことだからであろう。

 「自分は、別の世界に生まれて三十四年間生きてきましたが、なぜか、こちらの世界に生まれ変わりました。赤ん坊なのに、話すことができるのは、こちらにいるアリエルさんをはじめとする皆さんの協力があったからです」

 魔王のことを彼らに告げるのはどうだろうかと、事前にアリエルには相談した。そして、時期尚早であるということで一致した。人間にとって、魔王の存在は災いでしかない。したがって、魔王の名を出すことは、とんでもない疑惑を生み出すことになる。このため、自分が話せるのは、今、現在、家族や使用人の目に映っているアリエルや精霊の力によるものと、説明することにした。精霊の存在は尊ばれるからである。そして、「アリエルさんをはじめとする皆さん」というのは、嘘はつきたくないということから付け加えたものだ。

 「今、横で寝ているブリュンヒルデは、前の世界では私の娘で、十五歳になります」

 ラウラさんに抱かれた天音さんは、自分が注視されていることも気づかずに寝入っている。うん、寝る子は育つ。

 「そのことを語らずに生きていくことも考えましたが、いろいろと問題が生じます。たとえば、昨夜、自分達がいなくなった件です」

 誰もが一言も聞き漏らすまいという表情で聞き入っている。

 「その件については深くお詫びしますが、その前に、この世界に生まれ変わったのに、前の世界にまだ繋がりを持っていることを説明しておかねばなりません」

 そう言うと、口の中で「Open sesame」と唱え、出現した出入口に右手を入れる。朋香さんと同じなら、出入口はここの人たちに見えないので、右手が消えたように見えるはずである。しかし、反応がないと思って見ると、多くの人が呆然と見つめていた。

 やがて、「手が、手が消えた」と、ラウラさんが譫言(うわごと)のように呟く。また、倒れるのではないかとアリエルが急行したが、幸い、そこまではいかなかった。そして、それを合図にするようにざわめきが広がっていき、体の半分を隠したところで最高潮に達した。

 右目で家の廊下を眺め、左目で新しい家の人々を見ている自分の体は、右が三十四歳、左が生まれたばかりの赤ちゃんとなっている。そのことが、どちらに身を置いたらいいのか分からない自分の今の姿を示しているようであった。


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