表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/302

18 性別について

 「全員、もれなく」と、未練たらしく聞いてみる。

 「精霊教会がすることですから、私達も協力しますわ」

 何でも、あらゆる町や村にまで実施日を連絡しに行くそうだ。一大イヴェントである。

 「パスはできないのでしょうか」

 「領主の息子だったら余計に無理だな」と、魔王がのたまう。

 「病気だとか」

 「その時だけ、さっきの腕輪を持っていけばよい」

 「こんな闇の魔力をって言われそうじゃない」と、アリエルが指を振る。

 「そう言うなら、アリエルの魔力を封じ込めればいい」

 「こんな聖なる力を持つなんて…」と、両手を空中に解き放った姿勢で陶然とした様子のアリエルが言う。

 どうやら、芝居好きらしい。さすがは、シェークスピアだ。

 しかし、そんな聖なる力を持っていたら、そのまま教会に取り込まれて一生を終えそうな気がして、「魔力ゼロでいきます」と言う。

 「その時には、アリエルが魔力を提供するので、問題ないと言えばいい」

 何だか、それも教会に取り込まれそうな気がする。

 「そういえば、アリエルさんが一緒に来てくれるという話はどうなりました」

 「陛下の許可をいただきましたわ」

 「オベロンもタイタニアも賭けに勝ちたい一心じゃの」

 「どちらにしろ、ありがたいことです。よろしくお願いします」

 「アリエルも、惚れられた弱みがあるし」

 「ええ、ご一緒させてもらいます」と、アリエルは魔王の言葉を無視する。心なしか、顔が赤い。

 しかし、前の世界ならセクシャル・ハラスメントで訴えられるのではと思っていると、セクシャル・ハラスメントという言葉を咀嚼したのか、「パワー・ハラスメントのほうだろうな」と、魔王が言った。

 「なぜですか」

 「精霊に男女の区別はない」

 「はい?」

 そういえば、観音は性別がないそうだし、如来も男性である釈迦がモデルなのに、同様であった。

 「そもそも性器がない」

 魔王が衝撃的な言葉を吐く。

 アリエルは当然じゃないという顔をしている。

 「精霊王夫妻には子がいないのですか」

 「あの二人は好きで一緒にいるだけだし、必要があれば生殖器ぐらい作るだろう」

 第六色欲天か。

 「はぁ」

 「ちなみに、余の場合は両方あるが、見たいか?」

 「いや、いいです」

 速攻で断ったが、そんなふうになっていたとは知らなかった。

 「それにしても、お前との会話は楽しい」

 本当だろうか。アリエルやオベロン王、タイタニアと話しているほうが楽しそうに見えたが、こんなコミュニケーション障碍と話しても仕方ないだろう。

 「いや、本当だ」と魔王が言う。

 「特にお前の宇宙論はおもしろい」

 「自分が考えたものではありませんが」

 「それでもおもしろい。この世界では、タイタニアが随分と賢いが、もっと感覚に頼っている」

 たしかに、あの女傑は、宇宙論などより、もっと現実的なものにしか興味を持たないであろう。

 「タイタニアですらそうなのだから、パラレル・ワールドなどという言葉に反応するものはいない」

 「神の子もですか」

 「興味はないであろうな。だから、神が人間の想像でしかないというのも非常に興味がある」

 もしかすると、魔王は創造主である神の子を恨んでいるだけでなく、馬鹿にしているのかもしれない。さっきからの、「あやつ」呼ばわりといい、神の子に聞かれたらまずいのではないかと思う。異端審査とかあるのかな。

 「それはない」

 神の子が作った世界なのに、異端審査がないなんてことがあるのだろうか。中世と言えば魔女狩りではないのか。

 「神の子が、人間の作った物語を参考にして作ったからだ」

 そうか、信仰より趣味のほうが大切だったのか。だから、自らを崇め奉る宗教で縛らずに、魔王や精霊の住む世界にしたということか。もしかすると、この神の子って、戦闘狂か。クリスチャンではないのは確かだが。

 「自分で戦うようなことはしないがな」

 アリエルが聞いたらどう思うかなと考えたが、話に飽きたのか、途中から姿を消している。

 「当然、神の子がつくった我々というのは、人間とどういう関係にあるのかとなる」

 「この世界にも人間はいるんですよね」

 人間の想像をもとにこの世界を作ったのだったら、その想像の源を手元に置きたいはずである。

 「いる。ファーレンドルフは人間だし、辺境伯の治める一帯も人間の国だ。ついでに言うと、我らのような者もいるし、さっき言ったように獣人もいる」

 「エルフも、ドワーフもいるのですか」

 「神の子の趣味だから、いるに決まっている」

 食い付き気味の質問に苦笑したかのように、魔王が答える。

 「しかし、その人間で、お前のような知識を持っている者がいないのだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ