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4 形態変化

 「それでも、自分と友達となってもらえますか」

 「お前は、俺を殺せるではないか」

 「だから、どうしたというのでしょうか。自分は、ファーヴニルさん、あなたと友達になりたいだけで、殺してどうかしたいと思っている訳ではないのです」

 「…本当か」

 「そうですよ。自分はドラゴンが好きで好きでたまらないのに、殺してどうするんです」

 「そうか」

 「何より、自分はあなたと友達になりたいのです」

 「そうか、殺したりしないのか」

 「誰が、友達になりたい相手を殺すのですか」

 「そうか、そうか、では友達になってやろう」

 殺されないと分かって安心したのか、急に尊大な調子になる。

 「ありがとうございます」

 こちらも、殺されるのではないかと脅えきっているドラゴンなど意味がないので、調子を合わせる。

 「それよりも、ご飯ですよ。みんなで食事をしましょうよ。父上、よろしいですよね」と声をかける。

 「おお、歓迎するとも」と、少し間が開いてから父上が答えられた。

 どうやら、ファーヴニルの魔力調整はうまくいっているようである。

 「ここは狭いのでは、そこではどうだ」と、父上がファーヴニルにいる岬のほうへ手をやる。

 たしかに断崖からせり出した新しい土地は、黒い森を見渡せて、景観がよい。それに、下から吹き上がってくる風が心地よい。半壊の屋敷と、新しい屋敷は、ともに埃だらけなので、そういうものから逃れられるだけでも意味のある選択である。

 早速、使用人が屋敷からテーブルやら、椅子やらを運び出してきて、しつらえる。ブランデーを飲んでいるファーヴニルには悪いが、ビールを人数分出す。

 姫君達やフェルナンを紹介すると、ファーヴニルは、「オルクもいるとはな」と、驚いている。どうやら、さっき、フェルナンが上ってきたことに気づいていないのだろう。

 「ということは、ドラゴンやドワーフがおられるというのもいいということですよね」と言うと、「おお、そうか、そういうことだな」と、納得してくれたので、父上に乾杯の挨拶を頼む。

 「オルクの皆さんが来られた時も驚きましたが、ドラゴンまで来られたのにはさらに驚きました。互いに敵対するしかないと思っていたからです。しかし、大精霊様のお話では、オルクも、ドワーフも、人間も、皆、魂を持つ者だそうです。屋敷が壊されたのには驚きましたが、幸い、怪我をした者もいませんでしたし、新しい屋敷まで造ってもらえました。感謝申し上げます」 

 そこで、父上が頭を下げると、ファーヴニルも、いいってことよという感じで頭を下げた。あの調子だと、屋敷を壊したことは記憶から消え去っているのだろう。

 「これからも、皆様と協力し合ってよりよい世界を作り上げましょう」と、父上が言うと、ビールのつがれた角のコップを持ち上げた。

 全員が、「乾杯」と、唱和すると、食事会が始まった。

 「これは、これで、なかなかいけるな」と、嬉しそうにファーヴニルが言う。

 もっとも、こっちは赤ん坊の体だからお酒はもちろん、何も飲み食いできない。

 すると、「我が友よ、何故、飲み食いしないのか」と聞いてきた。

 「この体ですので」と答えると、「形態変化させればいいではないか」と不思議そうに聞いてきた。

 「そんな、ファーヴニル殿のような素晴らしい力を持っているわけがないですか」

 「我が友に、ファーヴニルなどと他人行儀な言い方は必要はない」

 「では、何とお呼びすれば」

 「ファヴでよい」

 「では、ファヴ殿」

 「ファヴでよい」

 「はい、ファヴ。ならば、自分のこともレオンと」

 「分かった。しかし、レオンは形態変化ができないのか」

 「そもそも、魔力がありません」

 「さっき、重力変化を使っていたが」

 たしかに、家の床を着地させるのに使った。

 「あれは、精霊王様からいただいた腕輪の力です」

 「そうか」と言いながら、ドワーフは魔王から貰った腕輪のほうを見ている。

 「ヨアヒムから貰ったのか」と言うと、ファーヴニルは背中に手をやると、三十センチ・メートルほどの直径の黒いものを取り出した。

 それが何であるかに気づき、思わず「鱗、ドラゴンの鱗」と、喘ぐように叫ぶ。

 「腕を出せ」とファーヴニルが言う。

 その通りにすると、弾くように投げ出された鱗が、曲線を描いて右手の中指に嵌った。見ると、鱗は深々とした闇をたたえた漆黒の指輪になっていた。と同時に、何かが体の中に入ってくる。

 「これでできるはずだ」

 体を抱えてくれていたアグネスさんにお願いして、下に降ろしてもらう。一人では立てないので、アグネスさんに支えてもらって地面に立つが、赤ん坊なので、座り込む形になる。アグネスさんにどいてもらい、魔法を行使すると、そこに二十一世紀の服を着た自分がいた。ただ、急に日本人の顔になると変かなと思って、レオンハルトが三十四歳になればこうなるという想定でいった。したがって、金髪碧眼である。


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