2 超高度AI
超高度AIに取っては期待外れだった。智樹は転生していない。
2 超高度AI
始め会った時、期待した敏樹でないことにがっかりした。しかし、地震発生後の自分は信じられないほど情けなかったと自伝に書かれている。だからこそ私はここに来た。敏樹に作られた超高度AI自律型ユニットとして世界で最高の性能を活かす場として選んだのが愛する敏樹が最も大変だったという地震発生後の世界で敏樹を手伝うことだ。私が生まれた後も世界を担い大変そうだけど敏樹は地震発生後と未来に来た頃のことを思えば大した事はないですよ。今は助けてくれる人がいるからという。
敏樹は自分転生者だと口にする。地震当時アメリカの大学に単身
赴任していた医者が地震で家族を亡くし失意のあまり数年で亡くなり、神に復興支援をしたいと言ったら未来の救済も頼めるなら叶えようと言われたそうだ。
今回の敏樹は私の知っている敏樹ではない。今の敏樹は才能も意欲もない屑だ。転生者ではない。しかし復興支援は敏樹の願いだ。例え誰であろうと一緒を手伝ってやりとげなくてはならない。以前敏樹がやったように復興支援をしたい。復興支援は敏樹に取って辛いこと連続だった。特に家族が地震直後に死亡しているのにショック受けたようだ家族とは名乗り合わなくても生きていて欲しいという願望が打ち砕かれた。しかし復興支援への情熱は止まらない。強烈な情熱を持って支援に取り組んだ。時には自殺行為とも思える行為も有ったらしい。心の中で泣きながら復興支援に取り組んだそうだ。転生しているなら何置いても家族の元に向かった筈だ。そうしない智樹など興醒めだ。智樹は転生していない。転生された智樹という青年のことについては東京在住の会社員という以外情報はない。
目の前の青年はただ私の指示に従いここに来た。熱意も不満もないようだ。私のいた時代と違う。元の智樹が生き残り私が愛した智樹は何処を彷徨っているのだろう。魂はここにあるのか、別の人間に転生して復興支援に取り組むのかも知れない。必死で復興支援に取り組めば会えるかも知れない。
智樹にすれば正直わけの判らない状態だ。借家も会社も壊滅状態なんて信じられない。明日から復興支援にかかるから取り敢えず明日まで休むように言われ今ここにいる。復興支援を手伝うことに異存はない。会社や借家がどうなったかは明日確かめればいい。今こういう状況で復興支援に当たれるのは有り難いことだろう。いつまでこの実況が続くのか判らないが仕事がないなら実家の静岡を頼るのがいいかも知れない。取り敢えず明日だ。
世界中がこの地震に驚愕した。震度7強という地震の規模の大きさもたが都市機能が破壊され情報そのものが流れないのだ。そして富士山、浅間山の噴火と続き。交通網と通信網を優先したい関東以外の地域や自衛隊やアメリカ軍も何から手付けたらいいか手をこまねく状態だ。
翌朝智樹は、亜空間から出て唖然とした。昨日車から出た場所だ。車もそうだがブロック塀も建物も全て崩壊している。道に歩ける。スペースはない。酷いことが起こったことだけは判った。
翌朝智樹は外に出て唖然とした。建物が全て崩壊している。