プロローグ.謎の巨大建築物
20XX年の7月4日、東京都新宿区を中心に謎の影が現れた。
影の正体や現れた原因などは一切不明。
地を這うようにどかからともなく現れた影は三つの区を完全に飲み込み八つの区の一部を浸食した。
人々は昼間なのにもかかわらず地表だけが夜になったような異常な光景に疑問を抱き不安に思ったが、その不安は直ぐに現実に変わった。
影は地面に触れているものを次々と崩壊させ真っ白な砂に変えていった。
コンクリートやアスファルトで出来た地面がどんどんひび割れ砂になってゆく。
地面の次は建物だ。
家、学校、駅、ビル、ショッピングモール、一つの例外もなく影の上にあった建物は砂にされた。
あまりにも衝撃的な光景を前にして、人々の反応は様々だった。
何が起こったかわからずに呆然とする者。
スマホ片手に騒ぐ者。
家族や友人、同僚の安否を確認しようとする者。
パニックになり泣き喚く者。
そして……砂となって崩れ落ちる者。
影に呑まれれば人も砂になるとわかった瞬間、十人十色だった反応は恐怖で染まる。
走って、走って、押しのけて、また走って。
我先にと影の外へ逃げようとするが、ほとんどの者はあまりにも広範囲に広がる影から逃れることは出来ない。
結局、ものの数分で多くの人々が砂となり崩壊した。
全てが崩壊し、東京の大部分は真っ白な砂にのみの更地となったがそれはまだ大災害の序章に過ぎなかった。
人や物の崩壊によって生み出された砂は一か所に集まり、そこからまるで事前に作成された設計図従うかように形を変え巨大建築物、ダンジョンを形成する。
巨大な円柱状の建築物。
複数の区を飲み込んだその面積。
それだけでもおよそ人類の理解を超えた規模だったが高さもまた異常だった。
外部からの計測によると最低でも千メートルを超える高さであり遠目で見ると山とあまり変わらない。
これだけの天変地異が起こったのだ。
影の内側は勿論、ダンジョン構築の際に影の外側にいた人々にも甚大な被害をもたらした。
影の出現からダンジョンの形成までおよそ十五分。
その間の死者と行方不明者は推定百万人以上。
僅か十五分でダンジョンは人類の歴史に消えない悪夢を刻んだ。