第六話 唐突に継承
優雅な昼下がり、俺は何をしていたかというと___
「ハルト、正座!」
「はい…!」
説教を受けていた。
「お前今日だけで18枚も皿を割ってるじゃねぇか!パリンパリン割りすぎて客から“パリン一つ”って言われた時どうしたらいいかわからなかったぞ、俺は!」
「すんません!」
「しかもお前注文に忠実に皿割ってんじゃねぇよ!客が何人か笑い転げて危うくガラスが刺さるところだったんだが!?……ゼェ…ゼェ…」
「おやっさん、大丈夫か」
「誰のせいだと思ってんだァーーー!!」
徹夜が原因となり、不注意に不注意を重ねた俺は、自分と同じ年齢分の皿を割ってしまった。
いや、パリン一つは仕方ない。あれはダチョウ○楽部のノリだろ!?需要と供給だろ!?
「どうやら、反省が足りないようだな……?」
「あ…… 」
この後、俺は30分ほどきっちり絞られた。
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「___まぁ、説教はこのくらいでいいか…。」
「はい!すんませんっした!」
その後、結局1時間以上絞られた俺は若干グロッキーになりつつステータスを確認していた。
もちろんおやっさんも一緒にだ。
「さて、昨日見たステータスだが、あれは間違いなくヤバい。」
「でしょうね!」
そのステータスがこちら。
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個体名:ハルト
種別:人間種/男
HP:324/324
MP:123/129
攻撃:23
防御:21
魔攻:22
魔防:18
俊敏:23
スキル:《模倣》
技能《スキル模倣》
《武具模倣》
《経験スキル化》
《スキル複製貸与》
スキルストック:《体術》
:
:
:
:
:
:
:《天眼》
技能《解析鑑定》
《見切り》
《天剣術》
称号:《凄腕シェフ》
《限界突破》
《天剣士》
《ヒットアンドアウェイ》
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数値などは平均的にしても、スキルが尋常じゃない。
昨日の夜、アイに聞いたスキル《模倣》の詳細は、
・対象の動作を模倣する。
《スキル模倣》
・半径5メートル以内の対象からランダムで4つの技能を抽出し、一つを模倣する。模倣された技能は、スキルストックに保存され、最大で7個の技能を保存可能。
・対象の同意を得た場合に限り、スキルそのものを模倣する。
《武具模倣》
・MPを消費して、見たことのある武具模倣を複製する。イメージが鮮明なほどMPが消費されるが、生成される武具の性能が上がる。
《経験スキル化》
・自身の経験をMPを消費してスキルにする。この条件は模倣した動作についても適応される。
《スキル複製付与》
・自身のスキルもしくは技能を対象に付与する。ただしスキル《模倣》は除外される。
というものだ。
どうやら《解析鑑定》を得たことで情報解析が進んだらしく、《天眼》が丸ごと模倣できてしまった原因の究明もできたようだ。
「で、だ。ハルト、頼みたいことがある。」
「何ですか?マグロ一本釣り以外なら大体いいですよ?」
「なんだよ、マグロ一本釣りって…… 」
まぁマグロ一本釣り以外なのは、単純に近くに海がないからだ。
川はあるが、そこそこ遠いので、できたら釣りはご勘弁だ。
それにしても、おやっさんから頼み事とは珍しい。
一体どんな頼みなのだろうか。
「ハルト、俺の跡を継ぐ気は無いか?」
「……いや、俺は宿屋を経営する気は無いよ。」
「いやそっちじゃなくて!剣聖の方な!?」
「あぁ、そっち……はぁぁぁぁ!?」
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これはきっと夢だ。
そうだ、夢だ。たぶん。
「現実逃避しているところ悪いが、さっさと話を進めるぞ?」
「やめて、そんな無理やり!」
「いや俺が変態みたいに言うのはやめろ!?」
「まぁ冗談はさておき。」
「……後で話をしようか… 」
解せぬ。
「剣聖を継ぐにあたってまず前提条件となるのが、上級剣術を持っているかどうかだ。俺たちの場合は《天剣術》だな。」
「えっ?じゃあ持っていれば誰でも剣聖になれるの?」
古代日本の私度僧のように、エセ剣聖を名乗ることもできるのか!?
「ばーか、最後まで話を聞け。あと二つ条件がある。一つは現剣聖に認められることだな。まぁこれは一ヶ月の修行を完了したら認めてやる。」
「えーっ!?修行するの!?マジで!?」
「大マジだ。実力が伴わなければ、お前を認めた俺にも責任が伴う。必要なことだ。諦めろ。」
「うへぇ」
だが、これに関しては個人の資質によるだろう。
要は才能と剣聖の指導に適性があればいいわけだ。
「そして、最後の条件だが___ 」
「……(ごくり)。」
「驚異度A以上の魔物の素材を使った武具を、自らの手で作ることだ。」
「……ん?」
簡単じゃね?
「まぁ、これがお前を剣聖に勧める理由なんだがな。」
「どういうこと?」
「考えてみろ、今まで剣なんて作ったことないやつが剣を作るんだぞ?普通は無理だ。」
「あ…そういうことか。」
おまけに驚異度A以上の魔物の素材だ。
加工するだけでも難しいのに、素人がやったならどうなることやら……
「だが、お前には《武具模倣》がある!」
「そうか!それで武具を作れば!」
「あぁ。最後にして最大の難関が瞬殺だ!」
いや、ここまで考えたおっちゃんもすごいな!?
「でも、そう簡単に作れるか?」
「なんだよ、忘れたのか?いい見本があったじゃねーか!」
いい見本?
ひょっとして…
「カリバーンのこと!?」
「おう!バハムートなら驚異度Sなんて軽く超えてやがる。そこまでいかなくても、A以上はいくだろ。」
マジか。
いや、やったことないからわからないけど、《武具模倣》がどこまで機能するかはわからないんだけど……
「いけるかはわからないよ?」
「その時は正攻法だ。」
「正攻法?」
「おう。お前を鍛えて、魔物を狩って武具を作る。」
「……。」
なにがなんでも《武具模倣》で作り上げてやる!!
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アイの異世界常識コーナー
【竜剣 カリバーン】
当時剣聖見習いだったグレゴリウスが、師匠の手を借りて作り上げた逸品。東洋の剣術に近い動きをする《天剣術》に対応させるため、東洋の剣“刀”を模した作りになっている。
刀身にはバハムートの牙が使われており、微かに刀身に宿るバハムートの魔力は剣そのものを包み込み、剣が壊れるのを防いでいる。
13時からSSも投稿します!
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