第二十五話 こんなのどうでしょう?
今日はポキィーーーーッ!!の日。
今回の話はシリアスです(たぶん)
「ハルト、犯罪者を捕まえたらいいとはどういうことだ?」
な、なんか老師がものすごい形相で詰め寄ってくるんですけど!?
「いや、これはある種の提案だよ。」
「提案?」
「あぁ。魔族さん?側からしたら人間を殺さないと自分達が死ぬから人間を殺す、ってことでしょ?」
「うむ。その通りだ。」
「でも俺たち人間側からしたら無関係の人を殺されるのは避けたい。」
「当然だ!」
アルフォンスさんが答える。
「俺の父さんは騎士で、過去に襲来した魔族に殺された!例えお前がその魔族と関係がなくとも、俺はお前たちの存在そのものが許せない……ッ!」
……魔族に対してやけに反応すると思ったら、そういうことだったのか。
だがその憤りに負けて手を出してしまえば、この場は即座に戦場に変わるだろう。
だからこそ、それは避けたい。
これは提案だ。
こちらから手を出してしまったならば、交渉は決裂する。
「アルフォンスさん、抑えて。」
「だが……ッ!」
「ここで手を出せば、余計に死人が増える。」
「……しかしッ!」
「それは、本当に今やるべきこと?」
「…………クソッ!」
よし、なんとかこちらの矛を収めることができた。
あとは魔族の方だが……
「ふむ、それで何を提案しようというのだ?」
「あぁ。俺が言いたいのは単純なことだ。貴方の食事を、貴方に見つけてもらうだけだよ。」
「……?何が言いたい。」
そう、至って単純なことだ。
俺たち人間側は、この国でいえば国民や商人のような非戦闘員が守れればいい。
冒険者に関しては……まぁ自己責任だが、できるなら避けたい。
大事なのは、人間側が必要としない人間。
そう、つまりは___犯罪者だ。
だが、ここで奴隷を含めてしまえば、借金などの理由で奴隷になった者も含まれてしまうため、それは避けたい。
俺の言う犯罪者は、もっと重度の犯罪者、例えば殺人者や盗賊などだ。
そういった奴らは総じて戦闘能力が高いため、騎士団などが動員されるが、それでも被害が出る。
だからこそ、そういう奴らを魔族に狙ってもらえばいい。
殺人に対する刑罰として有名なのは極刑、つまり死刑だ。
どうせ死ぬことになるのだから、魔族からしたら殺しても恨まれない人間というのは実にありがたい存在だ。
人間側からしても、騎士団の被害を気にすることなく犯罪者を処罰できる。
さらにいえば、最強の戦闘能力がタダで手に入る。
一石二鳥というやつだ。
俺はこのことを伝えた。
「なるほど……考えたな、ハルト。盗賊の被害は必ずと言っていいほど付き纏う。それを未然に防げるならば確かにいいかもしれん。」
「うむ、それならば我も異論はない!街を襲撃するたびに迎撃されたのでは、我もたまったものではないからな!」
老師と魔族は、全体的に賛成のようだ。
だが……
「私は反対だ。」
アルフォンスさんは断固として反対の意を示した。
「魔族に騎士の真似事をさせるだと?洒落にならん。そんなことを私は認めない!」
「アルフォンス……。」
「師匠、俺には耐えられません。それに、アイツがそれに従ったとして、他の魔族がそれに従うとは限らないんですよ!?」
「だが、事実としてハルトの提案は魅力的で、魔族の方も好意的に見ている。このままいけば余計な被害を出さずに済むんだぞ?」
「クソッ!あんな奴ら、みんな死んでしまえば良いんだよ!」
……確かにアルフォンスさんの言い分もわかる。
俺は魔族に会うのは今回が初めてだし、今回は極めて特殊な例かもしれない。
だから、実際に魔族に家族を殺された恨みは俺にはわからない。
俺も親父を殺された。
だが親父を殺したのは人間の暗殺者だという。
でも、人間が憎いかと言われたら、それは違う。
誰に殺された、だからこの種族が憎い、といった風に人の恨みは変化しやすい
だけど結局のところ悪いのはその人であって、種族全体は悪いことにならない。
アルフォンスさん、端的に言ってしまえば、それは差別だ。
地球でも俺が生まれる前からあって、そして俺が死んでからも続いているだろう社会的問題。
だがそれを生み出したのは、他でもない俺たち人間の本能だ。
異物を排除しようとする排他的本能。
生物として当然の防衛本能だが、俺たちはこの問題から目を背けてはいけない。
だから、アルフォンスさん……
「そんなことを言ったら、駄目だよ。」
「「「______ッ!?」」」
突然、老師とアルフォンスさん、そして魔族が飛び退いた。
まるで何かから逃げるように。
「……?どうかした?」
「……気のせいか。」
「今のは……なんだったんだ?」
「馬鹿な……今の覇気は、あの方のッ!?」
「あの方?」
魔族の男はしばらく俯いた後、
「……先程の件、了解した。仲間達にも提案すると約束しよう。」
と言った。
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