第十九話 夢なんてないのさ
翌日。
「これで! 登録は! 以上です! ふぅ… ふぅ…! 」
「やっぱり怒ってますよね!? 」
ギルドの営業時間が終わってしまったため、俺たちは再び冒険者ギルドを訪れていた。
「俺は被害者のはずですけど? 」
「はい、回れ右! さっさと帰れ、私のために! 」
この受付嬢___テレサさんはどうやら俺の冒険者登録の手違いを招いたため、罰として徹夜で事務仕事をしていたのだとか……
もしかして受付嬢ってブラックな職種!?
「ブラックどころか、どブラックですよ。この世界で一番働いているのは受付嬢かもしれません。」
「マジかよ!? 」
「ですが、上級冒険者との出会いもありますから、一概にブラックとは言えませんね。」
「玉の輿狙いかよ!? 夢がないな、受付嬢業界! 」
事務作業はハードだけど、上級冒険者と結婚すればリターンが大きいわけか……
頑張れ冒険者! そんなところで酒を飲んでる暇があったら、さっさとランクを上げろ! モテるから!
「マジかよ、受付嬢って玉の輿狙いだったのか……? 」
「お、俺クエスト受けてくる。」
「あっ、ずるいぞ抜け駆けするな! 」
「おいその依頼は俺のだ! 」
アイの独り言を聞いた冒険者たちは、クエストを求めて旅立っていった。
「男とは、単純な生き物なんだね…… 」
「マスターもその一員なんですけどね。」
やめろ、俺は慎重派なんだよ。
……夢のない女性に興味はない!
「マスター、あなた今全ての女性を敵にまわしましたよ? 」
「そ、そろそろ俺もクエストを受けようかなー」
アイのハイライトの消えた目を見て、俺は命の危機を感じた。恐ろしや。
さて、クエストを受けるとはいったものの、実はそこまで急いで受ける必要はない。
なぜなら、ジャックとの対戦の結果、俺がC級冒険者に昇級したからだ。
どうやらA級の中でもトップクラスの実力を誇るジャックと寸分違わない実力を見せたことで、特例でC級に昇格したらしい。
それどころか、B級でもおかしくないと言われたのだが、これに関してはC級で充分だと思う。
「今あるのは、ミノタウロスの狩猟、オークの集落の調査、トロールの討伐…… 」
「今ある依頼の中ではオークが一番実入りが大きそうですね。」
これはテレサさんの受け売りだが、魔物の狩猟/討伐の区別は食用可能かによって異なるのだとか。
狩猟ならば素材を持って来れば報酬アップが見込めるが依頼自体の報酬は低め、討伐ならば報酬は高いが素材には捨て値しかつかない。
もちろん他の依頼もあり、今回受けようと思っている調査依頼もそれにあたる。
魔物の集落ができた場合、スタンピートなどを回避するため討伐隊が結成されるのだが、調査依頼はその集落の規模の観測、伝令が依頼内容だ。
この報告をもとに討伐隊の規模、行動日程が決められるため、虚偽の報告があった場合違約金が発生するが、その分報酬が高くなる。
オークはE級の魔物だが、100体以上のオークがいる集落などはランクが跳ね上がり、オークキングなんかが出てきた日にはC級に飛び級だ。
ハイリスク・ハイリターンな仕事だが、俺なら問題ないだろう。
俺は依頼書を掲示板から剥ぎ取り、テレサさんにもっていった。
「依頼お願いしまーす。」
「だからなんで私のところに持ってくるんですか!? 」
あ、忘れてた。
やばいやばいすみませんだからその恐ろしい守護霊をどうか鎮めてください
「もう私のところに依頼を持ってこないでください! 」
「イ、イエス! マム! 」
まさかオークに遭遇する前に恐ろしい目に遭うとは……
俺は少しビクビクしながら、王都から近辺の森に出向いたのだった。
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「できてます、できてますよデカいのが。」
「できちゃってますねぇ…… 」
デカいのを発見した俺とアイは、近くの茂みから集落の様子を伺っていた。
「アイ、集落の様子はどうだ? 」
「立派に成長してますねぇ。オークは少なくとも80体以上。集落の規模から見て、スタンピート一歩手前といったところでしょうか。」
「ヤバいじゃん。」
「ヤバいですねぇ。」
オークの集落はそれほど広くなく、今にもスタンピートが起きそうな人(?)口密度だった。
今いる80体のオークたちもすし詰め状態で、魔物の恐怖よりすし詰めのコミカルさが上回っていた。
オークキングはいないようだが上位種のオークジェネラルも誕生しており、脅威度は間違いなくD級は超えているだろう。
まさに一刻を争う事態だった。が___
「あ…… 」
「やめろ、手術中に医者に言われたくないセリフを言うんじゃない。」
「いや、そうじゃなくて。あれを見てきださい! 」
「ん……? 」
アイの視線の先にあったもの。それは___
「くっ! 離すのです! そんなことをしても、サクラはあなたたちには屈しないのですよ! 」
狐耳を生やした、忍者らしき格好をしたロリっ娘だった。
「ケモ耳のロリ!? 誰得ですか、誰得!? 」
「ちょ、アイ!? 落ち着け!? 」
「この私のためにあるようなケモっ娘を見逃すなどできませんよ!! 」
それだけ言うと、アイは俺の制止を振り切り、そのロリっ娘の方へ向かっていった。
やっぱりアイツ、ケモ耳ジャンキーなのかロリショタコンなのか……?
だがここで問題なのは___
「アイ、お前は攻撃手段ないだろ!? 」
アイ自身は攻撃手段を持っていないことにある。
そもそもアイは俺のスキル《模倣》の補佐としてアナウンスから派遣されたAIだ。
つまりこの世界の人間の持つスキルをアイは持つことができず、アイ自身が攻撃手段を持つことができないということだ。
「待て待て、お前はここで死ぬ気か!? 」
「ロリショタは見つけたら手厚く保護すべきです! 一日3食日当たり抜群の一軒家で、私の手厚い看護を添えて! 」
「その一軒家は誰が用意するのかな!? そしてそんな血走った目で来られてもあの娘はビビると思うぞ!? 」
こうした茶番から始まり、俺とアイはオークの集落に攻撃をしかけることとなるのだった。
作者はロリショタコンじゃ無いですよ……(汗)
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