第十五話 エピローグ
投稿遅くなりました!
「ロールキャベツ好きなの?」
「本当のことを言えば結婚したいくらい好きさ。」
「いやアンタは既婚者だろ!?奥さん悲しむぞ!?」
「この世にあれほど尊い料理は他にない!」
「もうだめだ……このおっさんもう手遅れだ…… 」
マックさん___親父の師匠なので、老師と呼ぶことにする___は、ロールキャベツ限定の変態だった。
で、その老師と一緒に、俺は王都に向かうことになったのであった。
「ではハルト、王都に向かうぞ___と言うとでも思ったか?」
街の乗り合い馬車に乗る直前、老師は俺に言った。
「え?行かないの?」
「いや、行くには行くが。お前いいのか?」
「何の話だ?」
「街の連中に別れの言葉か何かないのか?」
おそらく老師は俺に、街の住人にお別れを言えと言いたいのだろう。
だが俺は___
「いや、何も言わずに行こう。」
「__いいんだな?」
「あぁ。最悪の場合、みんなに迷惑がかかる。」
そうだ。
俺が逃げることが暗殺者に知られれば、街の住人に被害が及ぶ可能性もある。
「老師、急いで出発しよう。」
「……わかった。お前がそれでいいなら、そうしよう。」
そして俺は馬車に乗ろうとして___足を止めた。
「先に乗っていてくれ。」
「どうした、乗らないのか?」
「一つ、寄りたい場所がある。」
そう言って、俺は街の郊外へと向かった。
「あ……行ってしまったか。」
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「着いた……!」
俺は、あの木の下にきていた。
〔マスター、ここって……?〕
「あぁ、俺の全てが変わった場所だ。」
モナを救うと誓って。
スキルが覚醒して。
親父の弟子になって。
全てが始まり、変わった場所。
この場所に、俺はどうしても別れが告げたかった。
この街には、もう二度と来れない可能性がある。
この木の下で瞑想をするのも、これで最後かもしれない。
「今までありがとうな。」
俺は木の幹に手を置いて、そう呟いた。
これまでの日々を懐かしみながら、しみじみと。
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〔______ハ____ト______か___ごろ___さ______
〕
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「___ん?」
木によりかかっていたそのとき。
誰かが、俺に話しかけてきたような気がした。
「アイ、何か言ったか?」
「いえ、なにも言ってませんけど……。」
「そうか……ん?」
気のせいだろうか。
アイの声は、普段は頭の中に直接響くようにして聞こえる。
だが今は、アイの声が後ろから聞こえた気がするのである。
「アイ、なんだか声の聞こえ方がおかしいんだが___ 」
俺は後ろを振り向いて、気づいた。
見知らぬ少女が立っていたことに。
「誰だ、お前は!?」
俺にはまだ未熟と言えるものの、親父仕込みの察知能力がある。
だがこの少女は、それに反応することなく俺の後ろに立っていた。
透き通るような銀の長髪。
おそらく年は15ほどであろう身長に合わせた、白のワンピースをきている。
顔立ちはあどけなく、柔らかい目をしている。
控えめに言って、美少女だ。
だが俺は、この少女を知らない。
街にいたなら男たちは必ず声をかける。もちろん俺もだ。
俺がこんな少女を見逃すはずがない。
この少女は、一体何者なのだろうか。
そんな俺を横目に、少女は首を傾げながらこう言った。
「え?誰って……アイですけれど?」
「は?」
待て。
ちょっと待て。
「お前がアイだって?」
あの残念なポンコツAIのアイだって?
「そうですよ?私がスーパーエリートAIのアイですよ!」
……一つ言わせてほしい。
「顔立ちがもろタイプなんだよぉぉぉぉぉ!!!!」
あぁ、無常___
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10分後。
「で、私に黒歴史になり得る大告白(笑)をしたマスターさん?お気持ちはいかがですか?」
「だまらっしゃい。」
俺はアイに告白し、見事に玉砕したのであった。
くっ……潮風が傷に染みるぜ……!
「ここは内陸ですけどね。」
「だまらっしゃい。」
急にエスパーするんじゃない。ビビるだろ!?
「で?俺の玉砕はともかく、なんで急にそんな格好をしてるんだ?」
「そうですね……さっき新しい技能が増えたんですよ。」
そう言ってアイは、俺の前にウィンドウを表示した。
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個体名:ハルト
種別:人間種/男
HP:1558/1558
MP:869/869
攻撃:593
防御:649
魔攻:434
魔防:425
俊敏:528
スキル:《模倣》
技能《スキル模倣》
《武具模倣》
《経験スキル化》
《超速宮廷料理術》
《ストレージ》
《スキル複製貸与》
《根源模倣》
スキルストック:《体術》
:《アイテムボックス》
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:《天眼》
技能《解析鑑定》
《見切り》
《天剣術》
称号:《凄腕シェフ》
《限界突破》
《天剣士》
《ヒットアンドアウェイ》
《剣聖見習い》
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「《根源模倣》?なんか厳つい名前だな。」
「でもこの技能すごいんですよ!」
アイは身を乗り出しながら、さらにウィンドウを表示した。
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《根源模倣》
相手のスキル、能力、ステータス、容姿など、あらゆるものを模倣する。長時間の継続的な技能の使用が必要なため、戦闘中の使用には向かない。
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「これって……?」
「私はこれを使って、マスターの容姿を模倣、そしてアレンジをくわえたのです!」
なんと、この技能はアレンジが効くらしく、継続的に使用できれば変装などにも利用できるとか。
「ん?ちょっと待てよ?」
ここで俺は、あることに気づいた。
「じゃあ、今のアイの性別ってどっちなんだ?」
アイはニヤッと悪い笑みを浮かべ、こう言った。
「ヒミツです。」
「やめてくれ、そう言うのが一番モヤっとするから!?」
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「はぁ、酷い目にあった。」
「ハルトよ、今の一瞬の間になにがあった?」
「俺は世界の真理を覗いてしまったのさ。」
「ロールキャベツか。」
「それは絶対に違う。」
アイが実体化を解除し、俺たちは再び乗り合い馬車の待合所にいた。
「なにがあったかは知らんが……もう大丈夫だな?」
「あぁ___ある意味深い傷は負ったがな。」
「だから何があったんだ!?」
そんな風に老師と語らいながらも、街との別れの時間は、刻一刻と迫っていた。
「よし、そろそろいくぞ。」
「あぁ、わかった。」
やがて場所は発車した。
街の門を過ぎ、街はどんどん遠ざかっていく。
「なんか、悔しいな。」
親父を殺した相手から尻尾を巻いて逃げているようで。
自分の弱さに腹が立つ。
俺は拳を握りしめた。
「ハルト。泣きたければ泣け。」
「老師?」
街からだいぶ遠のいたころ。
老師が俺に話しかけてきた。
「お前は弱い。だから、弱いうちに泣けるだけ泣いておけ。」
「……さすがは老師、言うことの重みが違うね。」
その夜、俺はひたすら泣いた。
悔しさも、恐怖も、不安も、後悔も、何もかも。
その心の全てを吐き出した。
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街をでてから二週間が経った。
「いよいよだな。」
馬車は、いよいよ王都に到着しようとしていたのだった。
《第一章 完》
第一章がひとまず終わりました!
ただ、作者のリアルの事情と話のストックの関係により、一週間ほど投稿をお休みします!
ストックが溜まり次第投稿するので、最長で一週間ということです!
読者の皆様にはご迷惑をお掛けします。申し訳ありません。
ですが、これから出てくる仲間たち、立ち塞がる強敵。
そして、それによって成長するハルトをどうか応援よろしくお願いします!




