第十二話 グレゴリウスの遺志(letter from father)
グレゴリウスからのお手紙です。
これをお前が読んでいるとき、俺はもう死んでいるだろう。
なんて描き始めしか浮かばないが、書き始めたからこのまま進めるぜ?
せっかくだから、昔話をさせてくれ。
俺は幼い頃、どうしようもないクソガキだった……らしい。
だがある日、そんなクソガキっぷりが働いちまったらしく、俺は危うくオークに食い殺されそうになった。
それを助けてくれたのが、俺の先代の剣聖様だ。
俺はその人に憧れ、弟子にしてくれって頼み込んだ。
結局、それは叶わなかったがな。
ただ、その時俺は約束をした。
強くなったら弟子にするってな。
それからは猛特訓だな!
手頃なG級の魔物から、下手すればF級の魔物まで倒した。
そんな生活を続けて3年。
ある日、スケルトンの大群に襲われた。
G級の魔物でも大群、それこそ集落でも作れる規模だ。
100体くらいはいたんじゃないか?
そんな大群相手にできっこないって、足が震えたよ。
そんなときに俺を助けたのは、ちょっと変わったやつだった。
そいつもまた、魔物だったんだよ。
他人にはあまり言ったことのない話だからアレだが、アレは間違いなく単体でA級は超えていた。
爪で風圧が起きて、その風圧で敵はやられていった。
俺もスケルトンほどではないが、あまりの風圧にすっ転んでしまった。
そしたらその魔物___ワータイガーが近づいてきて、言ったんだよ!“大丈夫か?”って!
俺も自分の目が信じられなかった。
でも話してみるとそいつは意外と面白いやつで、その日みたいに魔物に襲われてる村を巡回してるそうだ。
俺はもっと強くなるため、そいつについて行った。
今となって思うのは、第一の師匠みたいな感じだな。
ワータイガーの方も人手が欲しかったのか、俺がついて行っても追い払いはしなかった。
だから俺もワータイガーの稽古がどれだけ厳しくても文句を言わず、常にワータイガーに食い下がった。
その甲斐あって、俺は僅か2年でワータイガーと同等の力を身につけた。
今となっては不思議な、良い思い出だ。
そして俺は先代の弟子になり、3年の修行の末、新しい剣聖になった。
それから俺は傭兵としてひっそり名を売り始めた。
連戦連勝、数々の戦争を渡り歩いた俺に叶う奴は、そういなかった。
___と言いたいところだが、一人だけ引き分けた奴がいた。
俺の生涯の怨敵、“沈黙の暗殺者” ブラッドリーだ。。
数々の要人を暗殺し、逆らうものは皆殺し。
残虐非道の権化と言ったところか。
今の俺を殺せるのは、今となってはアイツだけだろう。
その後、俺は傭兵家業から足を洗い、依頼の関係で出会った冒険者のサラと結婚した。
黒髪の綺麗な美人で、俺なんかにはもったいない人だった。
それから4年後には、サラが息子のレオンハルトを出産し、順風満帆な生活を歩んでいた。
だが8年後、そんな幸せな家庭は崩壊した。
レオが8歳になったある日、レオは裏路地の暗がりで物言わぬ骸になっていた。
翌年には、サラも家の中で殺されていた。
おそらくブラッドリーは、俺かお前を狙う。
だから念のため、家に結界を張っておいた。
ブラッドリーのみを拒む魔法結界だ。
ドラゴンでも破ることはできないが、他の奴には無力だ。
だから、この手紙がお前の手に届いたらすぐに逃げろ。
俺が死ぬのは、よほどの下手をしない限りブラッドリーに殺された時だけだ。
だからおそらくブラッドリーもこの手紙に目を通している可能性が高い。
衛兵のロールキャベツしか言わない奴がいるから、そいつに手引きしてもらえ。
お前を拾ったとき、俺は最初、お前を死んだレオンハルトの生まれ変わりのように思ったんだ。
だからどこかで、お前を息子のように思っていたのかもしれない。
悪い。お前を関係ないことに巻き込んでしまった。
後はお前の好きなように生きろ。
お前の人生は、お前が生きたいように生きろ。
親らしいことは何もできちゃいないが、それが俺の親父としての最期の望みだ。
___グレゴリウス
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